第87話 下準備

風族嬢のエソラが放ったゾンビ化した獣の群れをノマール先生の特技で撃退した俺達は、無事に学園へ辿り着き、エトム達と合流することが出来た


「ヒマワリー!ウチは、信じてたで!絶対、帰って来るって!!」

「えっちゃん、ごめんね!―――ただいま!!」

心配していたエトムがヒマワリの生還に歓喜し、ハグする。


「鍋奉行様~!この度は、本当にありがとうございました!!」

「・・・うむ!苦しゅうない、面を上げ~!!」

ヨミがノマール先生へ深々と頭を下げ、お礼を言う


この2人は、いつまで時代劇そのノリを続けてんだ!?


「よーし!お前ら、一度落ち着いて俺の話を聞いてくれ!!」


「貴様~!騒がしいぞ!!静まれ・・・」

「先生は、いつまでやってんだよ!!」

ノマール先生の頭を引っ叩く


「「「―――っ!!!」」」

引野の行動にヒマワリ達が驚きの表情を見せる


「・・・ひ、引野!・・・な、なな、何やってんのよ!?」

ヒマワリが血相を変えて、引野へ詰め寄る


「・・・え?な、何だよ・・・!ヒマワリ、そんな大袈裟な・・・」

もうゾンビ軍団の追っ手もいなくなったのにいつまでも奉行様キャラを続けているから・・・


―――戻るタイミングを見失ったんじゃないのか!?


「大袈裟じゃないよ!ノマール先生の特技!料理の恐ろしさを忘れたの?」


「無礼者~!調理してくれるわ~!!」


「―――ぎゃぁぁぁーーー!!」

激怒したノマール先生が鍋の蓋を開けるとゾンビ軍団を撃退した時と同様に凄まじい引力で鍋の中へと吸い込まれていく


「引野、危ない!―――雲壁!!」

ヒマワリが異能力を発動し、引野とノマール先生の間に雲を出現させ、大きな壁を造り上げる


・・・ヒ、ヒマワリ!

助かった!これがあれば・・・


「―――あ、あれ!ウソでしょ!?」

ヒマワリが出現させた雲が一瞬にして鍋の中へと吸い込まれる


「・・・そ、そんな!ヒマワリの異能力が!?」


・・・な、なんて

恐ろしい特技なんだ!?


このまま吸い込まれて、ノマール先生に料理されてしまうのか・・・


「うわぁぁぁーーー!!そんなの嫌だぁぁぁーーー!!・・・―――ぐへっ!!」

突然、吸い込む力がなくなり地面へと倒れる


・・・痛てて

何だ?一体、何が起こった!?


「・・・あ、あれ?ここは、どこ?ゾンビ化した獣は!?」

今の状況が掴めず、ノマール先生が慌てふためいている


「・・・これで、もう大丈夫」


「「―――トキド・ケーさん!!」」

トキド・ケーが異能力を発動させて、時間を止め、止まった時の中でノマール先生の料理道具一式を離れた場所へ移動させ、特技を中断させる


「ノマール先生の間合いから鍋を離せば、鍋奉行様には、なれないから・・・」

「流石、トキド・ケーさん!頼りになる!!」


トキド・ケーさんがいてくれて助かった!!


「もしかして・・・僕、また、に特技を・・・」


・・・今、なんて?


「調理道具を離したから、もう大丈夫ですよ!先生のお陰で助かりました!ありがとうございました!!」

「そうですか・・・みんなが無事で何よりです!」

ヒマワリがお礼を言い、感謝の気持ちを伝えるとノマール先生は、安堵の表情を浮かべる


ノマール先生のあの様子からして、特技中の記憶がないのか?


そんな別の人格が出るほどの特技じゃねーだろ!

料理だぞ!料理!!


「・・・では、直ぐにヒマワリさんを連れて、みんなで逃げましょう!」

ノマール先生がヒマワリを連れて避難誘導を始める


・・・逃げる?

逃げるたって・・・


―――どこまで?


風族嬢の狙いは、ヒマワリだ!

ヒマワリの異能力が欲しくて死に物狂いで奪いに来るだろう!!


雨水を操る異能力者のカサと雲を操る異能力者のヒマワリが手を組めば、鬼に金棒だ!


それだけは、何がなんでも阻止しないと・・・


「ノマール先生!今、コドナ先生とマジナ先生が風族嬢の相手をしているから、その心配は、いらないんじゃないですか?」

「いえ、一対一の勝負なら負けませんが・・・数的不利ですから・・・」

ヒマワリの疑問にノマール先生が答える


・・・そうか

あの場面で俺達を逃がしたのは、勝てない可能性やヒマワリを守れないリスクがあったからだ!


先生2人の強さは、本物だが・・・


―――風族嬢は、それ以上の実力を持っているのか!?


「そんなん、ウチらが力を合わせたら風族嬢なんかには、負けへんって!」

「それは、風族嬢の実力を目の当たりにしてないから・・・」


「私も・・・リベンジする・・・!!」

「トキド・ケーさんまで!」

無謀にも風族嬢へ挑もうとするエトム達にノマール先生が呆れ返る


「引野くんからも言ってやって下さい!逃げるのが得策だと・・・!!」


・・・確かに

このまま闘っても俺達には、風族嬢を倒す手立ては、ない!


何かとっておきの異能力者とかがいれば話は、別だが、そんな都合の良い・・・


―――いや、ある!!


「ノマール先生の特技があれば風族嬢を倒せるんじゃないか!?」


「「「―――っ!!!」」」


「―――いやいやいやいや・・・!!ちょっと待って下さいよ!僕の特技を見てたんでしょ?上手く制御できないんですよ!!生徒キミ達を危険に晒せません!!」


「・・・でも、トキド・ケーさんがいれば、さっきみたいに助けて貰えるし、何より次から先生の前で無礼な事をしなければ巻き込まれる心配もないでしょ?」


「・・・・・・」

ノマール先生が深く考え込んでいる


・・・大丈夫


・・・大丈夫だ!


風族嬢達は、間違いなく!鍋奉行様ノマール先生の前で無礼を働く、そうすれば、ノマール先生の特技で、さっきの俺みたいに鍋の中へと吸い込んでしまえば・・・


―――絶対に勝てる!!


「・・・ん~・・・・少し気が進みませんが・・・」

生徒が危険に巻き込まれる事に気が進まないのかノマール先生は、渋々だが承諾する


・・・よしっ!

これならヒマワリも守り、みんなを救うことが出来るぞ!!

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