第86話 クッキング

A・Bクラスのある校舎前


「トキド・ケー!!どうでしたー?こっちには、いなかったです!!」


「・・・・・・こっちも」

エトム達は、コドナ先生に吹き飛ばされた引野の捜索を始めるが見つけられずにいた。


「・・・全く!引野の奴!一体どこで何をしているんでしょうね」


「・・・いや、それは、こっちのセリフやわ!ヨミこそ何してるん?」

両手に大きな鍋と料理道具一式を持ちながら話すヨミにツッコミを入れる


「何って見てわかりませんか?ホウちゃんの卵を孵化させる準備ですよ!!母親代わりである私が立派に育てて上げないと・・・!!」

そう話しながら鍋に水を張り、沸騰させ、卵を温めようとしている


「・・・いや・・・ヨミ、ウチもあんま詳しくないけど・・・その飼育方法やり方ちゃうと思うで・・・―――ねぇートキド・ケー!!」

正直にそれは、料理だと忠告できないエトムがトキド・ケーに投げ掛ける


「・・・ケー!」


「・・・・・・はい?」

聞き取れず、もう一度聞き返す


「ケー!・・・別に付けしないでケーで良いよ!知人や友人と接するみたいに・・・」


「・・・えっ!?いや、でも・・・」

あまりに突然の発言にエトムが困惑する


「・・・・・・嫌なの?」


「そ、そんなこと・・・全然ないですよ!―――な~ヨミ!!」


「はい!急な環境の変化でも不安になったんでしょ?ママ友同士助け合いましょう!!」


「いや、普通の友達でええやん!変なカテゴリーにを巻き込むな!!」


「・・・フフフ・・・ありがとう!・・・エトム、ヨミ!!」


「「「―――アハハハーーー!!!」」」

顔を見合わして一同、大笑いする


「それより、ケーもウチらと同じ異能力者女の子やったんや!全然、気付かへんかった!!もっと早く言うてくれたら良かったのに・・・」

仲良くなった3人は、引野の捜索を中断し、女子トークで盛り上がる


「別に・・・言わなくても・・・魔力を感知すれば異能力者女の子かどうかわか・・・―――何か来る!!」

トキド・ケーが校門の方をじっと見る


「強大な魔力が・・・近付いて・・・」

トキド・ケーが戦闘体勢へと入る


「まさか・・・風族嬢ですか?」

「―――違う!ヒマワリや!!こんなデカイ魔力を持ってんのは、ヒマワリだけや!!」


校門の外から聞こえる騒ぎ声が次第に大きくなっていく


「―――ぎゃあああーーー!!このゾンビ軍団!ずっと付いて来るーー!!」

「見えました!ヒマワリさん、あと少しです!頑張って下さい!!」

ヒマワリ達が雲に乗って猛スピードで飛行する。少し後方からゾンビ化した獣達がヒマワリを追い掛けてやって来る


・・・や、やった!

無事に学園まで辿り着いたぞ!!


「―――あっ!えっちゃーーん!!よっちゃーーん!!トキド・ケーさーーん!!」

校庭にいるエトム達の姿を目にしたヒマワリが手を振りながら大声を上げる


「ヒ、ヒマワリ!!・・・それになんや?あの後ろにおる化け物は!?」


「説明は、あと!みんな、校舎に入って!あのゾンビ軍団から逃げないと・・・」

学園へ辿り着いたヒマワリが声を上げる


「・・・ヒマワリ!何をそんな焦っているんですか?あの動物達は、じゃれたがっているだけですよ!!」

またヨミの奴がおかしなことを口走る


「ならお手して来いよ!頭撫でてみろよ!!抱き締めに行って来いよ!!」

この状況を校庭に迷い込んできた野良犬レベルの事態にしか思っていないヨミの背中をぐいぐいっと押していく


「・・・・・・良いでしょう!では、一緒に来て下さい。手本を見せますから・・・!!」

「・・・や、やめろ!俺を巻き込むなーー!!」

引野とヨミがいつものように揉み合いを始める


「もう~!遊んでないで早く校内へ!!」

ヒマワリが2人を注意する


「―――その必要は、ありません!もう僕は、特技を使えます!!」


「・・・え?」


・・・ど、道具は!?

こんな所で 一体どんな特技を・・・



「「「―――ヴヴヴヴーーー!!!」」」

ゾンビ化した人喰いウルフとハトの群れが一斉にノマール先生に向かって襲い掛かる


「―――ノマール先生ーー!!」


「控え~!控えろ~!!全員、が高いぞ!!」


・・・ん?


「このわしを誰と心得る!泣く子も黙る!御奉行様おぶぎょうさまだ~!!」


・・・な、なんだ?

突然、口調や一人称が変わったぞ!


・・・どうしたんだ?

ノマール先生は!?


「こ~の~桜吹雪きが~目に~入~らぬ~か~!!」

ノマール先生が時代劇のような啖呵たんかを切りながら、上着を片腕だけ捲り、背中に彫られた桜吹雪の入れ墨を見せる


「「「―――はっははーーー!!!鍋奉行様なべぶぎょうさまーーー!!!」」」

ヒマワリ達が膝を付き、ノマール先生へ頭を深々と下げる


「―――教育者が一番、やっちゃいけないことやってるーーー!!」

引野が大声を上げる


唯一まともだと思っていた先生が・・・

―――一番ぶっ飛んでいた!!


「無礼者は、全て料理してくれるわ~!!」

ノマール先生がヨミの持って来た調理道具を手に取り、鍋を持ち構える


「「「―――ヴヴヴヴーーー!!!」」」


・・・す、凄い!

なんだ!この吸引力は!?


さっきまで何度、攻撃しても効果がなかったゾンビ軍団が次々と鍋の中へと吸い込まれていく!!


「・・・で、出た!ノマール先生の特技!料理の力だ!!」


・・・料理?


「ここは、鍋奉行様ノマール先生の間合いだ!もう少し離れた方がええな・・・」


・・・鍋奉行様?


「賛成です!あの特技の前では、私の異能力リサイクルを持ってしてもどうしようもできないですから・・・」

ヒマワリ達がノマール先生の特技を恐れ、距離を取り始める


・・・な、何をそんなにビビってるんだ?

料理が特技だなんて家庭的で平和そのものじゃないか・・・


「ヒマワリ、何をそんな・・・―――って!あ、あれ?あれれぇぇーーー!!」

引野もゾンビ軍団と同じように鍋の中へと吸い込まれていく


「・・・ひ、引野!もう~!何であの時、!?」

ヒマワリが吸い込まれそうな引野の手を掴み助けてくれる


「・・・あ、頭を下げる?どういうことだよ!?」


「ノマール先生の特技の性質や!鍋奉行様の前で無礼を働いた者は、調理される!常識やろ?」


―――常識じゃねぇーよ!

鍋奉行って、そもそもそういう意味じゃないだろ!!


「簡単に説明すると・・・ここは、もう厨房ですから・・・」

ヨミがノマール先生の特技の解説を始める


ノマール先生の特技は、料理!


ノマール先生が調理道具を持てば、そこがどこであろうと間合いが全て厨房へと変わり、鍋奉行様であるノマール先生よりが高い生物は、全て食材となり、調理される!!


「・・・この世で最も珍しい特技ですよね!」


一番ベタな特技だわ!

何で重宝されてんだよ!!


「食材認定された引野は、ノマール先生の厨房間合いから離れた方が良いよ!!」

ヒマワリの指示に従い、ノマール先生から距離を取る


「―――こ~れで~終~いだ~!!」

ゾンビ軍団を全て鍋の中へ閉じ込め蓋を閉める


鍋のサイズに対して入った量が合ってないが・・・


―――どういう原理なんだ!?


この異世界せかいの特技は、物理の法則を無視した力ばかりだな!!

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