第83話 脱出劇

「―――ぎゃあああーーー!!ヒマワリのバカ!全然地上まで雲、続いてねーじゃねーかー!!」


・・・もう、ダメだ!

このままじゃ、助からない!!


「―――うわぁぁぁーーー!!」

引野が上空から地上に向かって、真っ逆さまに転落していく



「―――お前らが奴隷になるのも、時間の問題だな・・・」


「随分、余裕だな!カサ!!」

雨ドームの中からコドナ先生が話し掛ける


「この状況で逆転は、不可能だ!ネチューとビゾンに圧倒されているあの眼鏡ノマール先生は、助けには、来れない!お前ら2人は、そこから出られない!そして雨水を霧状にして、ここら一帯を漂わせている。援軍が来ても直ぐに感知し対処できる!!」


「・・・なるほど!圧倒的有利な状況でも油断せずに備える!生徒達に教えてやりたいぐらいの良い見本だね!」

マジナ先生が風族嬢の姿勢に感心する


「八方塞がりだ!風族嬢わたしらの勝ち・・・―――だっ!?」


「―――いっててて!!あれっ!・・・い、生きてる!?」


―――そうか!

この人が下敷きになったから俺は、助かったのか・・・


「大丈夫ですか・・・―――むにゅ!!」


・・・や、柔らかい!

なんだ、この弾力は!?


「―――むにゅ!むにゅ!むにゅ!むにゅ・・・!!」

最高の感触に無意識で揉みし抱いてしまう


「・・・宣戦布告!そう捉えていいんだな?」


「ふ、風族嬢!?どうして、ここに・・・!!」

馬乗りになり、両手で掴んでいた胸から手を離す


「遺言は、それで良いんだな・・・!!」


・・・や、やばい!殺される!!


「カサ様ーー!!中の2人が!!」

ネチューが雨ドームを指差し、大声を上げる


雨ドームは、一切壊れずに正常に発動しているのに、閉じ込められているコドナ先生とマジナ先生の姿は、どこにもなく!風呂敷が一枚だけ残されている。


「関係ない!まずは、コイツを始末する!!」

殺気の籠った鋭い手刀が引野の首、目掛けて繰り出される


「ぎゃあああーーー!!・・・あっ!?―――あぁぁーー??」

身体が突然縮み出し、カサの手刀が空を切る


「・・・全く!世話が焼ける!!」

「―――コドナ先生!!」

コドナ先生が首元を掴み、異能力を発動させ、身体を子供の姿に戻し、カサの手刀を回避させる


・・・た、助かった!!


「残念だったな!俺を拘束させるチャンスは、もう来ないぜ!!」


「面白い・・・!!―――フンッ!!」

カサが雨ドームを解除させ、その雨水を手元に集め、雨水を全身に纏わせて戦闘体勢へと入り、コドナ先生と殴り合いを始める


・・・す、すごい!

あのコドナ先生と互角にり合えるなんて・・・


「・・・・・・ん?」


・・・な、なんだ?

身体が勝手に・・・


「―――うぉぉぉーー!!」


「―――って!何、抱き着いて来てんだ!テメーは!!」

「ち、違うんだよ!俺の意志と関係なく・・・」



―――ズッドーーン!!


「・・・え!?」

引野が立っていた付近の水溜まりから雨水の槍が飛び出す


「死角からの攻撃を良く躱したな」


・・・あ、危ねぇ~!

異能力ラッキースケベが発動してくれたお陰で串刺しにならずに回避できた!!


・・・カサの奴

コドナ先生と闘いながら俺に異能力で攻撃してくるなんて・・・


―――おっぱい触ったこと本気で怒ってんじゃん!!


「闘いの邪魔だ!何時まで抱き着いてんだ!!ボケ、離れてろーー!!」

「―――痛ぇぇーー!!」

コドナ先生に殴り飛ばされる



「カサ様の命令は、絶対ぃぃぃ!!」

「ギャルの意地で殺す!!」

ビゾンとネチューがノマール先生へ攻撃を続ける


―――バッサササーーー!!


「・・・ハ、ハト!?」

突然、ハトの大群がノマール先生と風族嬢の間を横切る


「さぁ!奇跡の大脱出を遂げた俺達に鳴り止まない拍手を!!」

「―――マジナ!!」

ハトの大群の中からマジナ先生が姿を現す


「・・・た、助かった・・・あれ!?」

「―――あぁぁぁーー!!」

ノマール先生の所まで引野が飛ばされて来る


「引野くん、キミは、空を飛ぶ異能力者なんだね!」

「―――違います!」

ノマール先生の発言を直ぐ様、否定する


誰も好き好んで空から落ちたり、吹き飛ばされたりしてるんじゃないんだよ!!


「そ、そうなのか・・・」

「ノマール先生は、特技持とくぎもちなんでしょ?早く風族嬢を・・・」

「―――違います!」

ノマール先生も直ぐ様、否定する


・・・あれ?

も、もしかして・・・


ノマール先生も俺と同じ戦闘に不向きな・・・


「「・・・・・・」」

お互いに目を見合わせる


「・・・・・・逃げる?」

「逃げましょう!」

即座に意見が一致した2人は、この場から走り去ろうとする


コドナ先生とマジナ先生の2人が要れば大丈夫だろ!


逃げるが勝ちって言うしね!!


「どこへ行く気だ?」

華奢で小柄な風族嬢エソラが行く手を阻む


「カサ様に無礼を働いた者を生かしておく訳がないでしょ?―――出て来い!!」

エソラが叫ぶと辺りの茂みから大量の肉食獣がヨダレを垂らしながら近付いて来る


「・・・な、なんだ!この野獣は!?」

「・・・おかしい・・・人喰いウルフは、この地域には、生息してない筈だが!?」

ノマール先生が冷静に怖い情報をぶっこんでくる


「そうさ!私の異能力ちからで連れて来た!!」


エソラの異能力は、フィクション!

対象者に自分の都合通りの記憶を植え付けることが出来る異能力者!!


「この異能力ちからがあればトラウマを植え付けることも全世界を操ることだって出来る!!」


「・・・そうか・・・アイツが僕の生徒達を!!」

ノマール先生が怒りを露にする


「お喋りは、ここまで!今から食事の時間だ!良く噛んで食べなーー!!」


「「「―――ガウガウガーウーーー!!!」」」

エソラの指示に従い、引野達へ襲い掛かる


「うわぁぁぁーーー!!こっち来たーー!!ノマール先生、お願いします!!」

「僕に何をお願いする気ですか?」

お互いがお互いを盾にしようと揉めてる間に人喰いウルフに囲まれ、一斉に飛び掛かって来る


「「食・べ・ら・れ・るーー!!」」


・・・し、死ぬのか!?

こんな日に!こんな天気の悪い日に・・・


―――あれ?

あの雲は・・・


「「「―――ギャウウウーーー!!!」」」

人喰いウルフの頭上に雷雲が出現し、雷が落ちる


「―――ヒマワリ!」

「ご、ごめんね!地上まで続いてると思ったんだけど・・・途中で途切れてたね!!」

ヒマワリが異能力で出現させた雲に乗りながら助けにやって来る


「―――ヒマワリ!会いたかったぞ!!さー返事を聞かせてもらおうか?」

カサがヒマワリへ呼び掛ける


「・・・・・・あたしは、この学園が好き!友達が大好き!!―――だから風族嬢には、なれない!ごめんなさい!!」

カサに向かって深々と頭を下げる


「・・・そうか・・・わかった」


・・・あれ

案外あっさりしてるんだな!


「この手は、使いたくなかったが・・・―――エソラ!異能力フィクションだ!!異能力を発動させろ!!」

「―――了解!!」

エソラが魔力を放出し戦闘体勢に入る


「引野ー!ノマール!!ヒマワリを連れて逃げろーー!!」

コドナ先生が大声で叫ぶ

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