第82話 空中戦

「―――ハト隕石メテオ!!」


「「「―――ぎゃあああーーー!!!」」」

巨大な球体と化したハトの群れが風族嬢達、目掛けて急降下する


「・・・マ、ママ、マジナ!・・・一体、何なんだよ!あれは!?」

ノマール先生が空を指差し、マジナ先生を問い質す


「オイオイオイ・・!ノマール!!慌てるな!タネ明かしなら、あとで、ちゃんとしてやるから・・・」


「そんな呑気なこと言ってる場合!?アレ見ろ!このままじゃ、風族嬢どころか、ここにいる僕達も押し潰されてしまうだろ!!」


・・・ダ、ダメだ!

範囲が広過ぎて、今から走っても逃げられない!!


「見た目に騙されるな!派手なだけで大した手品じゃない!!」

カサのその一言で風族嬢達が冷静さを取り戻す


「・・・―――直ぐに破る!!」

カサが異能力を発動させると大気中の雨水がカサの手の平に集まり凝縮し、そのまま鋭くて長い鋭利な矛へと変化させ、高く跳び上がる


「フッ・・・フフフ・・・そんなちんけなモノで俺の最高傑作の手品を破るのは、不可能だ!!」

カサの無謀な挑戦を嘲笑う


「―――ハァァァーー!!」

雨水の矛でハト隕石メテオを突き刺す


「そ、そんな・・・バカな・・・マジナの手品だぞ!?」

ハト隕石メテオにヒビが入り、音を立て崩れ始める


・・・ま、まさか

マジナの手品が・・・



―――壊される!!



「砕けろぉぉーー!!」



―――パァァーーン!!


「やったー!流石っ!カサ様!!雨の日は、無敵だーー!!」

ビゾンとネチューの喜びの声が響き渡る


「見た目のインパクトの割に大したこと・・・―――なっ!?」

カサが驚きの声を上げる


「・・・どうした?顔色が悪いぞ!カサ!!」


「・・・な、何故・・・そこに!?」

破壊したハト隕石メテオの中からコドナ先生が姿を現す


「・・・コ、コドナ先生ーー!!いつの間にそんな所に!?」


「―――ミスディレクション!全員みんなの視線が上へ集中した隙にコドナ先生ティーチャーを移動させる!!手品の基本だ!!」


・・・マジナ!

あの一瞬の内にやってのけたのか・・・


―――あとで絶対タネ明かししてもらおう!!


「お前!雨水を操る異能力者だろ?今ので雨も止んだし、アレを壊すのに雨水も使い果たしたろ?」

コドナ先生が不敵な笑みを浮かべる


「・・・・・・!!」


「この高さから落ちたら無事じゃ済まねーな?じゃあな!楽しかったぜ!!」

コドナ先生が全身に掛けた幼児化の異能力を一部解除させ、右腕を元の太くて大きな逞しい腕へと戻し、全力で殴り付ける


「―――ぐはっ!!」

思い切り殴られたカサが地面に叩き付けられる


「・・・まず一人!!」


・・・やっぱり

この2人がいたら最強だ!


「俺の手品をバカにした罰だ!!」

「・・・・・・ん?なんだこりゃ!?」

地面にめり込んだカサの異変に気付く


「・・・・・・?」

覗き込むとカサの身体がびっしょりと濡れ始め、カサの姿が男の姿へと変化していく


「―――しまった!コドナ先生ティーチャー!!これは、罠です!!」

マジナ先生が咄嗟にノマール先生を突き飛ばす


「―――雨ドーム!!」

マジナ先生とコドナ先生の2人が雨水で出来たドーム状の球体に包み込まれる


「―――コドナ先生!マジナ!!」


・・・一体、どういうことだ?

雨水を操る異能力者は、倒した筈なのに!?


「残念!そいつは、先日、奴隷にした男だ!雨水で変化させてやった!」

「少しの間でもカサ様になれて幸せだったでしょう・・・!!」

突如発生した霧の中から風族嬢のカサとエソラが姿を現す


「カサ様ー!エソラー!!作戦成功ですねーー!!」


・・・や、やられた!

正面から来た風族嬢達は、陽動だったのか!?


「こんな薄い水の幕を張った程度で調子に乗るなよ・・・!!」

「コドナ先生ティーチャー!お願いします!!」


「―――オラァァァーー!!」

コドナ先生が躊躇なく雨ドームを思い切りブン殴る


「・・・・・・っ!?」

殴った衝撃は、雨水に吸収され、びくともしない!


「無駄だ!そこは、脱出不可能の牢獄だ!!中からは、絶対に壊せない!!」


・・・そ、そんな

コドナ先生の力を持ってしても無理だなんて!?


「ビゾン!ネチュー!!その男を始末しろ!!」


「「―――了解っ!!」」

2人が魔力を放出させて戦闘体勢へ入る



・・・え


「ビゾン!どっちが先に倒せるか勝負しよ!!」

「いいよ!いいよよよ!!」

ネチューに頭を付けてもらいビゾンと2人でノマール先生へと躙り寄る


「・・・ちょ、ちょっと・・・ちょっと待って・・・!!」


―――ヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・!!


―――どうしようどうしようどうしようどうしよう・・・!!


「ノマール!その2人の風族嬢は、無視して!この異能力者のカサを瞬殺しろ!!なら俺らも殺り合える!!」


「倒せないなら、少し気を緩めさせれば、ここから脱出できます!!」


・・・いや

なんて無茶な要求を!?


「君は、俺と同じ特技持とくぎもちなんだから大丈夫!自信持って!!」


・・・同じ特技持ち?

マジナみたいなチート能力と一緒にするなよ!


「「―――早めに頼むぞ!!」」


「そ、そんな・・・殺生・・・―――なっ!?」

「上手く、躱したな!!」

ノマール先生の頭上をネチューの異能力針ネズミ化の針が突き抜ける


「この量なら―――どうだっ!!」

ネチューが腕から大量の針を出し、ノマール目掛けて伸ばしていく


「―――っ!!」


・・・あ、危ね~!

あの異能力者の針を出す量!長さに制限は、ないのか!?


「あ~もう~・・・うっざい!!ギャルの本気!見せてやる!!」

両手を地面に突っ込み、異能力を発動させる


「・・・う、うおっ!?―――うおぉぉぉーー!!」

地中からネチューの針が大量に突き上がってくる


「・・・い、痛っ!!擦った!!」

アレを全て躱すのは、無理か!?


・・・今の技には、気を付けないと!!


それよりも注意しないといけないのは・・・


「噛んで、裂いて、殺すぞーーー!!」


―――不死身女ビゾンである!!


異能力ゾンビ化を生かした特攻でネチューの針を気にも止めず、刺さりながら襲い掛かって来る


「・・・クソ!」

・・・防戦一方だ!

せめて道具・・・刃物さえあれば・・・


―――特技が使えるのに!!


「「―――殺してやるーー!!」」


「・・・・・・っ!!」

ネチューとビゾンの追撃を辛うじて回避し続ける


・・・参ったな!


「―――串刺しになれーー!!」

風族嬢ネチューの針も躱せない!


「噛んで!裂いて!殺すすす!!」

不死身女ビゾンの肉弾戦も防ぎきれない!!


・・・あれ?


―――大ピンチじゃん!!



・・・もう、身体が重い!目がかすむ!!


オマケに空から幻聴まで聞こえる・・・!!



「―――ぁぁぁーーー!!」


・・・ダメだ!

完全に幻覚まで見え始めた!!



「―――ぎゃあああーーー!!ヒマワリのバカ!全然、地上まで雲、続いてねーじゃねーかー!!」


「―――転送生引野くん!?」


・・・な、なんで空から!?


天から引野が落ちて来た。

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