第75話 晴れ間

「オイ!これは、一体どういうことだ!?納得のいく説明をしろ!!」


「・・・・・・」

風族嬢の去った会場でマッソの怒号が響き渡る


「ほら、マッソも言うてんで!ヒマワリ!!何で風族嬢の誘いを断らんかったんや!?・・・・・・―――ってか!異能力解除して話し聞けや!!」


「・・・・・・」

ヒマワリは、異能力で出現させた雲を身体に纏わせて、全身を包み込み、文字通りの雲隠れ状態になり、エトムの話しを完全に無視している


「エトム!これは、貴様にも言っているんだ!!何だ!その耳と尻尾は!?」


「―――ちょっ!ドコ触ろうとしてんねん!!このエロゴリラがっ!!」

尻尾を掴もうとした手を振り払い、マッソの顔を鋭い爪で引っ掻く


「誰がエロゴリラだ!!そんな攻撃もん効くか!ネコ女が!!」

異能力ネコ化を発動しているエトムの引っ掻きをもろともせず話し続ける


「ずっと男に化けて、俺達を騙してたのか!!」


「―――ヒマワリーー!!風族嬢、断るやろーー!!ウチも一緒に言うたるから、早よ異能力解除しーや!!」

怒るマッソを無視して、ヒマワリの雲へと呼び掛け続ける


「風族嬢予備軍めっ!無視するんじゃない!!」

マッソに背を向け、叫び続けるエトムを殴り付ける


「―――当たるかエロゴリラ!今、取り込み中や!!後にしろ!!」


「・・・調子に・・・乗るなよーー!!貴様ーー!!」

感情のまま、襲い掛かるマッソを軽快に躱しながらヒマワリへの説得を続けるエトム


「・・・・・・」


・・・だが

その声は、ヒマワリの心には、届かない!



「―――ヨミ!お前って奴はーー!!」

引野の叫び声が響き渡る


「こんな大勢の人の前でなんてことしてくれてんだ!ケガ人が出たらどうすんだ!?―――危うく吹き飛ばされるところだったんだぞ!!」


「・・・引野!あまりホウオウバードを責めないであげて下さい!!悪気があってやったんじゃないんですから・・・!!」

ヨミが引野を宥めようとする


「―――お前に言ってんだよ!!」

何で俺を宥めようとしてんだ!コイツは!!


「もう風族嬢は、去ったんだ!早くそのホウオウバードを何とかしてくれよ?喰われたりしたら堪ったもんじゃない!!」


ホウオウバードは、大きな翼に鋭いくちばしを持つ巨大な怪鳥!

その存在は、恐怖でしかない!!


「・・・なっ!こ、この男!ホウちゃんに助けて貰った恩を忘れて、何てことを!?」


何がホウちゃんだ!

勝手に名前を付けるな!!


「ホウちゃんは、美食家ですから、うんこ味の引野なんか食べたりしませんよ!!」


―――誰がうんこ味だ!!


「ホウちゃんは、私に懐いています!なので責任を持って飼います!!」

ホウオウバードの足へと抱き着く


「オイ!どこが美食家なんだ!?よだれを垂らしながらヨミ味のうんこを美味しそうに見てるぞ!!」


「―――誰がヨミ味のうんこですか!!それを言うならうんこ味のヨミ・・・―――いや、それも違う!!」


「ほら、ホウオウバードの腹の音がスゲー鳴って、辺りを見渡しているぞ!このままじゃ、ここら一帯の生物全て捕食されて生態系が崩れてしまうぞ!!」


「ホウちゃんを害獣扱いしないで下さい!きっとトイレの場所を探しているだけで・・・―――立派な益獣に育ててみせますから~!!」

無責任な飼い主の頼みを拒み続ける引野



「―――どいつもこいつも、くだらねぇー!ことで騒いでんじゃねーよ!!」

ドッポが大声を上げ、引野達を黙らせる


「その雲!!やはりお前らが校外にいた女だったか!全ての元凶であるお前らを殺・・・―――かはっ!!」

怒りを爆発させたドッポが空手の構えを取った。―――その瞬間、地面へと倒れ込む


「―――少し黙って!!」

異能力を発動させ時を止めたトキド・ケーがドッポを気絶させる


「「「―――っ!!!」」」

怒った表情のトキド・ケーに緊張の空気が走る


「今、何を最優先にしないといけないか・・・わかる?」

トキド・ケーが怒り口調で話す


・・・ふ、普段

感情を一切、面に出さないのに・・・


「・・・す、すみません!トキド・ケー様、取り乱してしまいました!!」

「せ、せやけど・・・ヒマワリが・・・」

「―――ホウちゃんの家作り!」

ヨミ以外は、反省の色を示す


「まず異能力の攻撃を受けた観客達をどうにかしないと・・・」


た、確かに・・・

この被害に遭った人達を先に助けないと!!


・・・けど

一体どうやって・・・


この学園ナンバー1の実力者であり、異能力者のトキド・ケーですら歯が立たなかった風族嬢カサ相手にどう立ち向かえばいいのか・・・


「乗り越えられない壁に直面し、挫折を味わった若人達よ!青春してるな!!教師として心から嬉しい!!」

「・・・オイ!意味なく鳩を出すな!!目障りだ!!インチキ野郎!!」

燕尾服のポケットから無数の鳩を出しながら歩く、Aクラスの教師!マジナと上下ジャージ姿の見た目が完全に子供のCクラスの教師!コドナが現れる


「一度言ったよな?こんな楽しいイベントに俺を誘わないなんて・・・―――覚悟できてんだろうな!テメーら!!」

ブチギレしたコドナ先生が大声を上げる


・・・こ、これが

俺達の担任教師か・・・


―――風族嬢ぐらい怖いんだけど!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る