第72話 こけら落とし公演

「ね~誰なの?ね~誰なの?あの女性ひと達!?」

「お、落ち着け!ヒマワリ!!」

ステージに立ち、観客からの歓声を浴びる風族嬢を指差し、困惑するヒマワリ


・・・ま、間違いない!

アイツらは、風族嬢だ!!


・・・でも

一体、なぜ・・・


トキド・ケーさんを抹殺しに来た筈の風族嬢が堂々と人前に現れ、観客を沸かせているんだ!?


「「「・・・・・・―――っ!!!」」」

ステージ中央で自分の心の思うがままに妖艶なダンスを披露する風族嬢の自由さ、気高さに心を奪われたヒマワリ達は、風族嬢達に釘付けになる


「・・・す、すごい・・・!!」

「あの動き!あの足の運ばせ方・・・中々の実力者やな!!」

風族嬢達を考察するエトムに単純に関心するヒマワリ


「ま、前座にしては、及第点といったところですね!」

「・・・宴会芸が何を偉そうに!!」

「―――鼻血、垂らしてる人が何を言う!!」

ヨミと引野が言い争っている内に踊りが終わり、客席から拍手と歓声が贈られる


「今日は、風族嬢わたしらの野望の為に家畜の方から集まってくれて、手間が省けたよ!」

風族嬢達のセンターに立つ、スタイル抜群の身体に黒のボンテージ姿の女性が口を開くと会場中が騒然とする


・・・や、野望

一体、何の話だ!


アイツが風族嬢のリーダーなのか!?


「退け退け退けーー!!邪魔だ!!!下がってろ!!・・・―――オイ!この中にトキド・ケーがいるんだろ?出て来い!トキド・ケー!!」

舞台袖からグラサンを掛けた男が出て来て、横柄な態度で怒鳴り散らす


「早く出て来い!こっちには、風族嬢コイツらがいるんだ!会場にいる人間がどうなっても知らねーぞ!!」


「・・・んな、グラサン!校門でギャル舐めんなって言うたよな?」

下着が見えそうなぐらい短いスカートを履いたギャル口調の風族嬢がグラサン男へと詰め寄って行く


「・・・ん・・・あぁ?・・・うるせーな!!!ちょっとだま・・・!!」

ネチューが片手でグラサン男の口元を押さえ付ける


「―――針1000本飲ますって・・・!!」

ネチューの手の平から大量の針が飛び出し、そのままグラサン男は、滅多刺しにされる


「「「―――っ!!?」」」

凄惨な光景を目の当たりにした観客達は、悲鳴を上げて、その場から逃げようと動き出す


「―――動くな!!その場から一歩でも動いた奴は、即殺す!!」

風族嬢達が一斉に魔力を放出し、カサの殺気ある一言で観客達を黙らせ、その場から動けなくさせる


・・・な、なんてことだ!

とんでもない事が起こってしまった!!


「・・・・・・えっちゃん」

「大丈夫や!ウチが付いてる!!」

「・・・い、今は、まだこの場から動かず!もう少し様子を見よう・・・!!」


・・・な、なんなんだ!?

あのギャルの異能力は!?


手の平から針が飛び出したぞ!?

自由自在に針を出せる異能力者か?


風族嬢っていうのは、そんな攻撃的な異能力者が集まった集団なのか・・・


―――想像以上に危険だ!!


「オイ!風族嬢クソ共!!俺の親友ダチは、どうした?」

怒り心頭な面持ちでステージへと上がるドッポ


「腐れチンポ野郎のくせにギャルを舐めるだけじゃなく!カサ様に対して何て口の聞き方を・・・」

「―――ネチュー!下がれ!!」

カサの命令に従うネチュー


「ダチ?・・・あの校門にいた男なら風族嬢わたしらの奴隷にした!エソラ!!」


「―――うん!」

華奢で小柄なエソラとかいう女の子が手を2回叩く


「―――イノクマ!ハコネ!!」

顔に精気が無くなったイノクマとハコネが四つん這いになりながらエソラの合図で馬のように歩いて来る


「お似合いでしょ?あんたも奴隷にしてあげる!!」

胸元から謎の容器を取り出し、中の液体を頭から被る


「黙れ!殺すぞ!!―――正拳突き!!」

ブチギレしたドッポの右の拳がカサの左頬に直撃する


「・・・・・・それ全力?」



「「「―――な、なにぃぃーーー!!?」」」

ドッポの本気の正拳突きを受けて平然とする姿に驚くヒマワリ達


「これならどうだ?・・・―――正拳五連撃っ!!」

目にも止まらぬ、早さで繰り出した正拳突きが5ヶ所同時に直撃する


「・・・話にならない。お前は、奴隷じゃなく処分でいいや!」


・・・そ、そんな

あのドッポを小物扱いだと!?


俺達は、ドッポの強さを痛いほど理解している!

ドッポの突きや蹴りは、とてつもない威力だ!!


それを受けて、あんな涼しい顔なんか出来るものじゃない!!


何か異能力を発動させたんだ!!


「退けーー!!ドッポ!!」

マッソもステージに上り、風族嬢目掛けて、拳を振り上げる


「トキド・ケー様に近付く風族嬢害虫は、駆除してくれる!!」


「・・・やってみろよ!ゴリラ!!」

再び胸元から容器を取り出し、頭から中の液体を被る


「―――フンッ!!」

マッソの渾身の右ストレートがカサの脇腹に直撃する


「・・・なんだ・・・お前も男の中では、強いって聞いてたけど・・・この程度か・・・」

溜め息混じりに落胆の声を漏らす


「「「―――ウ、ウソでしょ?」」」

マッソの筋力を持ってしても風族嬢を倒すどころかその場から動かすことすら出来ない現実に驚愕する


「これならトキド・ケーってのも大したことなさそうだな・・・それじゃ・・・―――消えてっ!!」


「「―――ぐはっ!!」」

カサのデコピンを食らったマッソとドッポは、ステージ上から吹っ飛んで落ちてしまう


・・・一体

どういうことだ・・・


あんな華奢な細腕から繰り出した女の子のデコピン一発で吹っ飛び、ダメージを受けるなんて・・・


―――恐るべし風族嬢異能力者!!

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