第4章 文化祭

第61話 野宿

「・・・ま、待って!ちょっと聞き取れなかったから、もう一回、言って?」


「―――ここで野宿します!!」

ドッポ達との死闘を終え、トキド・ケーと別れて街へと帰る道中、ヒマワリがハッキリと宣言する


「・・・な、何言ってんだよ!仮にも女体化した俺も含め、女の子4人で野宿だなんて危険過ぎる!そんなのみんな反対に決まってるだろ?」


「―――ウチも野宿に賛成や!ここなら見晴らしも良いから他校生や動物とかに襲われる心配もないから安心やしな!」

何故かエトムも野宿するつもりでいる


「お前ら、それ本気で言ってんのか?さっきドッポ達と激しい死闘を繰り広げたんだぞ!こんな場所ところで野宿なんかせず、街に戻って宿で一泊しようぜ!!」

みんな疲れてるんだ!

宿に泊まる贅沢をしても罰は、当たらない筈だ!!


「でも街には、ドッポ達の学園があるから、そこで他の生徒達に見つかるリスクは、負いたくないでしょ?」


・・・た、確かに

今の俺達の体力で再び戦闘になれば、今度は、助からないかもしれない!

ここは、ヒマワリ達の言う通り、ここで野宿して一夜を過ごすのが賢明な判断か・・・


「・・・よしっ!今日は、辛い夜になると思うが・・・―――みんなで力を合わせて朝を迎えようぜーー!!」


「「「―――おおぉぉぉーーー!!!」」」


人生初の野宿だ!

今日は、とても不便で長い夜になると思うから覚悟をしておこう!!



~数分後~


「引野ちゃん、ちょっと来て!寝床を用意したよ!!」

「早いな!一体どんな感じに・・・―――えっえぇぇぇーー!!?」

そこには、ヒマワリの異能力で出現させた雲を家の形へと変化させた。見事な2階建ての一軒家が出来上がっていた!


「2階にバルコニーを造りたかったんだけど・・・今のあたしの魔力じゃ、これが精一杯!ごめんね!!」

「いや謝ることなんか何もねーよ!充分過ぎるから!!」


「本当に!?良かったー!その分、1階にお風呂とトイレ、リビングにキッチン、そして2階に、人数分の部屋を造ったから!!」


「―――どんだけバルコニーに魔力を使う気だったんだよ!!」


「トイレもお風呂も雨雲を使ってちゃんと水洗式になってるから使いたくなったら、もう使っても大丈夫だから!あと雷雲の電気を使って加熱させたお湯も出せるようにしてるよ!」


「将来、建てて住みたいぐらいの優良物件だな!!」

オール雲化のエコな家!!


「今夜は、寝苦しい夜になりそうだけど我慢しようね!」

「余裕で1ヶ月は、滞在できるわっ!!」


流石、ヒマワリ!

応用が効き、頼りになる異能力だな!!



「みなさん!飲み水を確保しましたよ!!」

ヨミがヒマワリの異能力で造った雲のバケツの中、一杯に綺麗な水を汲んで来る


「・・・ヨ、ヨミ!?どうしたんだよ!その水?」

この辺りに、こんな新鮮な水が涌き出る所があったのか!?


「偶然、この近くに干涸びた湖の跡地を見つけまして、そこに私の異能力リサイクルを発動させて、干涸びた湖の跡地を元の湖へと再生させました!これで飲み水に困る心配は、ありません!!」


「よっちゃん、ありがとう!すごく助かっ・・・」


―――クギャァァァーーー!!


「・・・な、なんだ?・・・今の鳴き声は!?」

ヒマワリと一緒に辺りを見回す



―――クギャァァァーーー!!クギャァァァーーー!!!


「・・・マ、マズイですね!二人共、早く家の中へ入りましょう!!」

どんどん近付いてくる謎の鳴き声にヨミが一人慌て始める


「・・・一体どうしたんだよ!ヨミ?」

「―――説明は、後です!ヒマワリ、この雲の家の強度は?」

「・・・爆撃ぐらいの衝撃なら防げるよ!」


「なるほど・・・それは、心許ないですね・・・!!」

「いや充分過ぎるだろ!何が起きているのか説明し・・・」



―――クギャァァァーーー!!!


「・・・な、なんだ!あれは!?何か飛んで来るぞ!!」

前方の空から巨大な鳥が俺達に向かって威嚇しながら飛行して来る


「・・・あ、あれって!教科書で読んだことある!太古の時代に生きていた!伝説の怪鳥!!ホウオウバード!!」


「な、なにぃぃぃーー!!じゃあ、その生き残りが俺達を狙って飛んで来たのか!?とりあえず家の中へ隠れよう!」

3人は、急いで雲の家の中へと避難する


「まだ、外には、えっちゃんがいるのに!・・・けど、どうして、この時代にホウオウバードが・・・!!」

エトムのことを心配しながらも出現したホウオウバードを不思議に思う


「・・・実は・・・先程、白くて綺麗な塊が地面に埋まってまして、少し気になって異能力リサイクルを発動させてみたら・・・それがホウオウバードの骨の化石だったようで・・・!!」

「得体の知れない骨に異能力リサイクル発動させてんじゃねーよ!!一体どうすんだよ?あんな巨大な鳥!!みんな喰われてしまうだろうがーー!!」


ヨミの異能力は、リサイクル

壊れたモノや死んだモノを再生させ元の状態へと戻す異能力者


異能力の力は、凄まじいが使い手の頭が悪いので問題ばかり引き起こす


「―――グギャァァァーーー!!」

ホウオウバードが鋭いくちばしを大きく開き、この雲の家ごと丸飲みにしようとする


「―――あぁぁぁーーー!!・・・も、もうダメだーーー!!食べられるーーー!!」



「―――ピギャァァァーーー!!」

突如、変な鳴き声を上げたホウオウバードが地面へと倒れ込む


「へへっへ!やったで、ウチがデカイ鳥を仕留めたでーー!!」

「―――えっちゃん!!」

Cクラスで一番身体能力の高いエトムが異能力で身体をネコ化させ、鋭くなった爪でホウオウバードの胴体を切り裂き、見事に仕留める


「これで今日のメシは、困ることは、ないな~!」

倒したのが太古の時代に生きた伝説の怪鳥とは、知らずに屈託のない笑みを浮かべる



・・・あれ?

このメンバーなら街に戻っても問題なかったんじゃ!?


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