第57話 乱入者

「密林内部へ潜入した隠密部隊が異能力者汚れた血を追い詰めている!それから逃れようと密林から出てきたら容赦せず、串刺しにしろ!!わかったなーーー!!」

怒鳴りながら命令するグラサン男に従い、密林を取り囲む男達は、槍を構えて何時でも攻撃できるように身構え始める


「「「―――キャァァァーーー!!!」」」

密林の奥から女の子の悲鳴が響き渡る


異能力者汚れた血が出て来るぞ!一匹たりとも逃すんじゃねーぞ!!」

草木を掻き分けながら、近付いて来る足音に槍を持つ、男達の手に力が入る



「えっちゃん、大変!ナイフを持った男達が密林へと入って行って、槍を持った男達は、逃げられないように待ち伏せしてて、もう絶体絶命ーー!!」

ヒマワリが上空からエトムに状況を伝える

「ま、まずいな!?このままやと引野とヨミが・・・」


「―――オラァァァーー!!俺がやってやったぞ~!!俺が異能力者汚れた血を討ち取ったぞーー!!」



「「―――えっ!!?」」

男の雄叫びにエトムとヒマワリに動揺が走る


「そのままそいつを滅多刺しにしろーー!!」

その命令に従う男の雄叫びと女の断末魔の悲鳴が岩石地帯に響き渡る


「う、嘘でしょ!?・・・引野ちゃん!よっちゃん!!」

ヒマワリが不安げな声を漏らす

「気をしっかり持て!ヒマワリ!!まだ、ヨミが!ヨミが生きてれば、なんとかな・・・」


「―――俺もだ!俺も討ち取ったぞーー!!」

「良くやった!お手柄だ!!お前らー!!」

続けざまに上がる戦果にグラサン男が褒め讃える


「―――引野ちゃーーん!よっちゃーーん!!」

「・・・クソっ!!ウチらがいながら・・・!!何てことや!・・・待ってろよ!必ずウチらが仇を取ったるからな!!」

大粒の涙を流し地面へと降りるヒマワリに寄り添いながら復讐に燃えるエトム


「―――討ち取ったぞぉーー!!」

「こっちもだ!こっちも討ち取ったぞ!!」

「よっしゃーー!俺は、2人同時に討ち取ったぞーー!!」



「「・・・・・・!!」」

何故か未だに女を討ち取ったという戦果にエトムとヒマワリが顔を見合わせ笑みを溢す


「―――お前ら!さっきから何を言っている!!密林ここには、2人しか異能力者汚れた血は、いない筈だ!!なのに討ち取ったのは、何人だ!!」


「「「―――6人です!!!」」」

男達が一斉に答える


「・・・な、何をバカなことを・・・女は、2人しかいな・・・」


「―――討ち取ったぞぉーー!!」

「俺もだ!やった!やったぞーー!!」

次から次へと女を討ち取ったという声が上がり続ける



「・・・え、えっちゃん!こ、これって!?」

「間違いない!ヨミと引野の仕業やな」

2人して歓喜の声を上げる


「―――ほ、報告します!どういう訳か密林から何十人もの女が次々と飛び出して来て・・・密林から女が脱出して行きます!!」


「ぐぅぅぅーーー!!一体、何がどうなっているんだぁぁぁーーー!!」

状況が掴めず戸惑い混乱する男達



「―――キャァァァーーー!!な、なによ!?これーー!!」

「け、汚れた~!汚れてしまったわ~!!」

「悪夢よーー!!なんなの!この密林はーーー!!」

奇声を上げながら謎の女の子達が次から次へと密林から飛び出して来る


「「―――エトムーー!ヒマワリーー!!」」

この女の子騒ぎに紛れながら引野とヨミがみんなと合流する


「ねぇ~ この騒ぎは、一体なんなの?あの女の子達は、誰?密林の中で何があったの?」

状況が全く読み込めないヒマワリが引野達へ質問攻めする


「あぁ~ 実は・・・」



脱出する数分前の密林内部


「・・・これを見て下さい!」

引野が踏み潰したモノにヨミが異能力リサイクルを発動し再生させる


「・・・こ、これは!?お、俺が街で食べた!」

「―――そう!性別を入れ換える不思議な果実です!私が再生させた枯れ木や枯れ葉が、この果実を実らせる樹木だったのです!」


「・・・それが何の役に立つんだ?」


「この果実を先程、再生させた銃の銃口に詰め込み発砲すると・・・―――バンッ!バンッ!!」

拘束した男に向かって発砲する。

「・・・えっえぇぇーーー!!お、女の子になった!!?」


「この果実の果汁を浴びた生物は、性別が入れ換ってしまうのです!これで襲って来る男達を女の子へ変えていって、混乱に乗じて脱出しましょう!!」



「・・・・・・という訳で!元男女の子達に紛れて無事、逃れることが出来たんだよ!!」

エトム達に事情を説明する


「―――なるほどな!・・・これで闘うのに集中できる!」

ニコッと微笑んだ直後、残像が残る程の速さで男達の目の前まで移動し、両手の爪で次々と切り裂いていく


「「「―――ぐぅわぁぁーー!」」」


「「「―――ぎゃぁぁぁーー!!」」」


「・・・・・・これまで・・・か・・・!」

戦況を見据えたグラサン男の本音が漏れる

「て、撤退す・・・」

「―――オイっ!!」

オールバックの髪型に上下真っ黒な服を纏った男が現れ、冷たく話し掛ける


「・・・ア、アニキ!何故ここに!!」

グラサン男の額から大量の汗を流し、怯えた表情を見せる


は、どうした?」

「・・・あ、あの・・・いや・・・そ、その・・・―――ふぐっ!!」

グラサン男の首を鷲掴みにして、片手一本で宙吊りにする


「ぐ、ぐるじい~!・・・ア、アニギ・・・許じ・・・で・・・ぐれ・・・!!」

「約束も守れない奴は・・・―――用済みだ!!」

掴んでいた首を思いっきり握り締め、グラサン男の意識を失わせ気絶させる


「・・・お前ら!」

岩石地帯にいる男達全員が静まり返りオールバックの男の言葉に耳を傾ける

「今から俺が勝利へと導く!」



「「「―――うおぉぉぉーー!!!」」」


その一言に男達の闘志が再び燃え上がる

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