第59話 決死の覚悟

「ヒ、ヒマワリ~!待ってろよ~!すぐにウチが加勢しに行ったるからな~!!」

「・・・エ、エトム!ちょっと落ち着けって!冷静になれ!!」

ヘロヘロになった身体でヒマワリの元へ向かおうとするエトムを引き止める


「闇雲に助けに行っても、死にに行くようなもんだ!今は、みんなが助かる方法を考えないと・・・」


・・・とは、言ったものの


周りは、武器を持った男達に完全に包囲され逃げるどころか助けに行くことすら出来ず!


頼みの異能力者は、魔力切れで、動くのがやっとのエトムに!異能力リサイクルをあと一度しか発動できないヨミ!


そんな俺達がここにいる所為でヒマワリは、雷を落とすことが出来ず!防戦一方になっている!!


・・・足手まといの俺達ができることなんて何もないんじゃないか!?


「・・・策なら・・・もう考えた」

「―――えっ!!」

エトムの発言に驚く


「この潰れた性別を入れ換える果実にヨミが異能力リサイクルを発動させ、元に戻し、それを食うて男化したウチが全員を・・・」

「―――却下だ!!あれを食べても体力や魔力が回復する訳じゃないから、ただただ瀕死の男になるだけだから・・・」

エトムの策を遮るように否定し、実体験を元にエトムを説得する


「私も策を練りましたよ!」

「・・・そうか、良かったな!・・・今は、この周辺に散らばっているモノを集め・・・」

「―――ちょっと!!何で無視してるんですか!?私の策も聞いて下さいよ!!既にこんなに異能力リサイクルを発動できそうなモノを拾い集めたのに!!」

自分の意見を聞いてもらえないヨミが拾ったモノを引野へ投げ付ける


「今、真剣に考えてるんだから、ヨミの悪ふざけには、付き合ってられな・・・―――ん?・・・こ、これは!これなら!!」

散らばったゴミを拾い上げ、引野が声を上げる




「―――オラオラオラオラーーー!!」

「・・・・・・ぐっ!!」

ドッポが繰り出す、強烈な空手の突きや蹴りの応酬を異能力で出現させた雲で防ぎながらヒマワリは、考えていた。


・・・ど、どうしよう

この男、めちゃくちゃ強い!


あたしの最大魔力で雷を落とさないとドッポを倒すことは、出来ないと思う!!


・・・だけど

そしたら、えっちゃん達が巻き添えを食らってしまう


―――もう、どうしたら!?



「―――ヒマワリ~!!ウチらのことは、気にせず雷を落とせーー!」

エトムが大声で叫ぶ

「・・・えっ!?な、なな何言ってんの、えっちゃん!!」

ヒマワリが間の抜けた声を出す


「ヒマワリーー!エトムの言う通りにしろーー!!俺達のことは、気にするな!さっさとその空手野郎をブッ倒せーー!!」

「引野まで何言ってんの!?状況わかってる?」


「―――全くだ!ヒマワリに雷を落とすことは、出来ない!!」

ドッポが断言する

「仲間想いの性格のコイツに、仲間を犠牲にして自分が助かる道を選ぶことは、出来ない!!」


・・・ドッポの言う通り

あたしには、そんなことする勇気や覚悟は、ない!


・・・けど

雷を落とさないと仲間みんなが死ぬ!落としても仲間みんなが死ぬ!


―――あたしは、どうしたら!!



「ヒマワリーー!!ウチらと約束したやろ?」


・・・・・・約束


「買い物中、約束しましたよね?学園へ帰ったら水着に着替えて、水浴びをするって!!」


「・・・したよ・・・したけどさ・・・あたしが雷を落としたら・・・もう・・・水浴び・・・できないじゃん・・・!!」

震えた声で答える


「その通りだ!!―――見てみろ!アイツらの情けない姿を!!今際いまわきわに叫びながら何かを振って頼み込んでるぜ!!」


「・・・・・・っ!!」

仲間達のその姿にヒマワリは、元気を取り戻し、魔力を高め始める


「・・・な、なんて・・・魔力量だ!!」

ヒマワリのあまりにも強大な魔力量に驚き、攻撃を中断し、少し距離を取る



「「「ド、ドド、ドッポ様ーーー!!上空に巨大な雲がーーー!!」」」


「―――狼狽えるなーーー!!!お前らーー!!陽動だ!!お前らの陣形を崩す作戦だ!!絶対に持ち場から離れるな!!」

ヒマワリの最大魔力で出現させた巨大な雲に引野達を取り囲む男達は、慌てふためくがドッポの一言に冷静さを取り戻す


「残念だったな!狙いは、悪くなかったが相手が悪か・・・―――な、なに!?」

その巨大な雲が雷鳴と轟音を轟かせながら雷雲へと変化していく

「・・・ハ、ハッタリだ!その規模の雷雲から雷を落とせば、確実に仲間は、感電死する!・・・―――お前に人をあやめて十字架を背負う覚悟があるのかぁぁーーー!!」


「確かに・・・あたしに仲間を犠牲にする覚悟は、ない!!―――だけど約束したから!水浴びをするって!!学園へ帰ってで水浴びをするって約束したから!!」


「・・・ゴ、ゴムプール?―――はっ!!し、しまった!!」

ヒマワリ達の策を完全に理解する


「今や!ヨミ!!」

「―――はいっ!!」

ヨミが握り締めていたゴムの切れ端に異能力リサイクルを発動させ、元のゴムプールの形へと再生させる


「よっしゃぁぁーー!!みんな、この安全地帯ゴムプールへ飛び乗れーー!!」

異能力リサイクルを発動させ、動けなくなったヨミをエトムと引野が抱えながらゴムプールの中へと雪崩れ込む



「―――クソ!お前ら直ぐにゴムプールを破裂させ・・・」

「―――ドッポ!まさか、雷より速く動くつもり?」

ドッポが見上げた頭上には、目も眩む程の稲光を放ち雷鳴を轟かせた雷雲が!


「・・・これがヒマワリの最大魔力か!」

「くらえーー!ドッポーー!!最大魔力フルパワーだぁぁーー!!」

滝のような勢いで真っ直ぐ、一直線にドッポ目掛けて雷を落とす


「舐めるなよーー!男が女に負けるかーーー!!」

ヒマワリの雷に臆することなく雷へ正拳突きを放つが・・・

拳から腕へ腕から身体へと電撃が流れていき、濡れた地面へと拡がっていく


「「「―――ぎゃぁぁぁーーー!!!」」」

ゴムプールの中にいた。引野達を除く男達全員が感電する


「・・・な、なんて威力だ!ゴムプールの中へ入ってなかったらと思うとゾッとするな!」

ヒマワリの最大の雷が落ちた岩石地帯は、真っ黒に染まり、男達全員が黒焦げになり気を失い倒れている


これなら特技持とくぎもちのドッポも・・・


「・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・う、うそでしょ!?あたしの最大魔力を食らったのに!!」


「「「―――ドッポ!!?」」」

・・・そ、そんなバカな!?

あの巨大な雷を受けて立っていられるだと・・・!!


拳1つで雷に耐えたドッポの身体は、全身焼け焦げるも、仁王立ちで身構えている!!


「・・・ヒマワリ」

「―――びくっ!!?」

魔力を使い果たした、今のヒマワリには、反撃どころか立ち上がることすら出来ない


「礼を言う・・・肩コリが・・・治った・・・ぜ!」

そう言い終えると立ったまま気を失い気絶する


「・・・な、なんだ?・・・か、勝ったのか?俺達・・・」


「「「―――やったぁぁぁーーー!!!勝ったんだーーー!!!」」」


大勢の男達及び、特技持とくぎもち相手への勝利に大喜びする!

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