第14話 繰り返す日々

「あぁああーーー!あぁああーーー!!もうーーー!」


引野は、ベッドの上で布団に包まり、口を枕で塞ぎ大声で叫んでいた。


「あぁーーー!!もう、どうしよう!!どうしよう!どうしたらいいんだ!?」


Aクラス、マッソからの対抗戦の申し出を二つ返事で受けてから数日

毎日のように異能力ラッキースケベが勝手に発動して、男の身体に飛び付いたり、異世界流のイジメを味わう日々を過ごしていた。



ある日の食堂


「腹へった~!いただきまーす!!」


「―――引野くん!!」


「・・・な、なに!? ど、どうしたんだよ!?突然!」

いつもの様にレーカを食べようとしたら、目の前の席に座っていた。アラトモに大声で止められる


「レーカを良く見てよ!」

俺のレーカを指差し、引き攣った表情を浮かべている。


・・・ん?

・・・なんだ・・・これ?


何時も通りのレーカを注文した筈なのに、良く見ると海鮮たっぷりのシーフードカレー ―――じゃなくてシーフードレーカになっている。


・・・食堂のおじさんのサービスか!?


でも、受け取った時は、普通のレーカだったような?


「虫が入ってる!!」


「―――これ、虫!?魚介類じゃなくて!?」

見た目は、元いた世界のエビやカニ、ウニにそっくりで、嗅いだことのある美味しそうな香りもするんだが・・・


「入ってるのは、エビやカニ、ウニという虫だよ!」


―――全部 知ってる食材なんだけど!!


「虫が入ってない部分だけ食べて、新しいのと変えて貰った方が良いよ!」

親身になって助言してくれるが・・・これ、本当に食べられないのかな?


スプーンで、ひとすくいし、じっくり吟味する。


・・・・・・涎が出る!


「・・・食べれないことは、ないと思うけど・・・それを食べているのは、ジャングルの奥地に住む、少数民族だけだよ!」


―――あっ!?これ、食べれるやつだ!!


「―――ひ、引野くん!?・・・う、嘘だよね!?」

躊躇わず一口で口に入れた俺に驚いている。


・・・う、美味い!

やっぱりカニだ!!元いた世界と同じカニの味がする!!


「・・・・・・黙々とカニを食べるなんて!?真っ向からイジメに立ち向かっているんだね」


―――いや、日本人は、カニを食べるとこうなるから


・・・・・・おかわりできないかな?




「・・・・・・ん?」

食堂でシーフードレーカを完食し、教室へ戻ると、俺の席に一輪の花が置かれている。


・・・うわ~!異世界なのに、ずいぶん古典的なイジメを!?

元いた世界でもこの手の嫌がらせをする奴は、いないのに・・・


「あれ?引野くんの机の上にの花が置かれている!?」


「うん、そうなんだよ!わざわざ、こんなイタズラする奴がいるな・・・ ―――今、なんて!?」


なんか、イントネーションが違ったような

―――聞くの花?菊の花じゃなくて!?


「聞くの花だよ!この地域に咲いている植物の一種で・・・名前の由来通り、この花に音や声など音声を聞かせることによって、花がそれを記憶し、その音声を好きなときに聞くことができる花だよ!」


「おぉおおーーー!!すごい!!」


ICレコーダーみたいじゃないか!?


「な、なら・・・早速、聞いてみようぜ!」


「―――正気!? 引野くん!!これに、もしかしたら酷いことを吹き込まれているかもしれないんだよ!?」

興奮した面持ちで話すが俺のことを心配し止めてくれる。

――――が、どうしても!この異世界の産物への好奇心の方が上回り、早く試してみたくて仕方がない!


「平気、平気!どうすれば、聞けるの?」


「この花の種子の所を押せば、聞くことは、できるけど・・・ってなんで押しちゃうの!?」

使い方を聞くや否や、聞くの花の種子を押してしまう



「お前の~かあちゃん!で・べ・そ!! お前の~かあちゃん!で・べ・そ!! お前の~かあちゃん!で・べ・そ!!」


聞こえてきたのは、小学校低学年レベルの悪口だったが、植物から肉声が聞こえるという異世界ファンタジー色、強めの出来事に感動し、心を奪われ、立ち尽くしてしまう


すごい!本当に吹き込まれた音声を聞くことができるんだ!?


「―――全くっ!!誰がこんな酷いことを!?」

アラトモが聞くの花を引き抜き、握り潰すと 音声は、聞こえなくなり ただの菊の花に戻った。


「引野くん!親御さんのことだけど・・・気にしちゃダメだよ!」


「・・・あ、うん」


実際、出べそだから気にならないけどね



「ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ・・・」


対抗戦まで・・・あと2日!!

無情にも時だけが過ぎて云った。


今は、布団に包まり、項垂れている場合じゃない!!


けど、一体どうしたら!?


毎日、対抗戦を逃れる為に学園を休もうと仮病を使おうとするが・・・


毎朝、アラトモが迎えに来て失敗に終わっている!


このままだと、本当に対抗戦に出場しなければならない!俺は、対抗戦での勝ち負けなんか、どうでも良いんだよ!Aクラスへの編入なんて興味ないし!俺は、痛い思いさえしなければ、それで良いんだよ!!


だからなにがなんでも、そんな目に合わない為にも安全で安心な、優しい種目を選ばないといけないのに・・・


―――何も思い浮かばない!!

あと2日しかないのに!?


もしも、対抗戦の種目を格闘技なんて選択してしまうと、勝敗は、火を見るより明らかだ!!


―――瞬殺されるだろう!!


そうならない為にも対抗戦の種目は、なるべく危険の少ない、安心で安全な平和的なスポーツを選ばないといけない!


・・・・・・そんなのって存在するのか?


俺がマッソ相手に酷い目に合わず勝てることといえば・・・テレビゲームや古今東西萌え声優対決ぐらいだが、この世界には、そんなものは、一つも存在しない!


俺が血豆ができるまでやり込んだゲームテクニックや寝る間も惜しんで観まくったアニメの知識は、この世界にとって無意味で無価値で無力に等しい



・・・・・・あっ!?

それは、前の世界でもそうかっ!!



まー ちょっと考えただけで良い案が思い付いたり、打開策が閃いたりする、そんな都合の良いラノベ主人公みたいな展開は、起きないか!?



・・・こうなったら、最後の手段!!

対抗戦前夜のうちに逃亡するしかない!対抗戦当日に失踪した事が皆に知れ渡り、2、3日したら、ひょっこり現れれば良いだろう!


俺がいた国では、逃げるが勝ちって言葉があるのだから


―――そうと決まれば、誰もいない 皆が寝静まった頃に荷物をまとめ、誰にも気付かれないうちに準備をしようとしたが・・・



「どうしたの?引野くん、一人項垂れて・・・」


「・・・いや・・・別に・・・」

―――もう部屋すでにいる!!



「対抗戦まで あと2日!!夜更かしして身体を壊したら大変!対抗戦には、万全の状態で望んで欲しい!」

アラトモが俺のことを心配し泊まり込みでお世話しにやって来てくれたが・・・



―――すげーーー!!迷惑っ!!



これでとうとう逃げ道は、なくなり追い込まれてしまった!


「それじゃあ、電気消すよ」


・・・もう、こうなったら対抗戦のことは、明日の俺に任せて・・・


「うん、おやすみ!」


――― あえて、寝よう!!





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