第12話 懐かしいの
「・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・な、なんとか・・・撒いたか!?」
マカオからのセクハラ、パワハラ攻撃から貞操を死守する為、学園の昇降口まで走り抜いた。
・・・危うくファーストキスをオカマに奪われるところだった!?
もし そんなことになれば異世界での自殺も視野に入れなくては、いけなくなるぞ!
「・・・それにしてもこんな早い時間に学校へ着いたのは、人生で初めてだな!?」
いつも遅刻ギリギリでチャイムと同時に教室へ入ってたからな・・・
まー ほとんど不登校だったけど
こんな早い時間に登校してる生徒なんているのかな?
「・・・あれ?アラトモ!」
「えっ?―――引野くん!?・・・は、早いね~」
・・・あ~癒される~!
アラトモのオロオロしながら見せるその笑顔!さっきまで、オカマにキス顔で迫られていたから、女の子のような顔立ちのアラトモの微笑みに、俺の埃まみれだった心のフィルターが洗い流されていく!
その笑顔一つでこのむさ苦しい学園生活も元気に頑張れるってもんだ!
上履きに履き替える為、下駄箱へと手を伸ばす
―――ドババババーーー!!
「――――うおっ!?な、なんだ?―――なんだ!?」
自分の下駄箱を開けたはずなのに見に覚えのない物体が大量に溢れ出てきた!!
「・・・綺麗・・・光ってる」
・・・なんで、俺の下駄箱に宝石のように綺麗で高価な塊が入れられているんだ!?
お礼か何かか?思い当たる節は、全くないのだが・・・
「―――はっ!?も、もしや・・・これって・・・異世界に於けるラブレターみたいな物なのか!?」
いや、おちつけ・・・落ち着くんだ!引野優!忘れたのか・・・
―――ここは、男子校だぞ!
「・・・・・・引野くん」
アラトモが不安そうな声で恐る恐る話しかけてくる
「ゴミ入れられてるね」
「これゴミ!?」
この光り輝く光沢の塊が異世界で出るゴミ!?
手に取って確認するが汚れや臭いは、一切ない!これを一つ部屋の隅なんかに置いてたら、ちょっとしたインテリアになりそうなのに・・・
―――ゴミだなんて!?
これが元いた世界のゴミなら大気汚染や不法投棄などの問題には、ならないのに・・・
「・・・一体・・・誰がこんな酷いことを・・・引野くん・・・あんまり気にしない方が良いよ」
俺のことを気遣いハンカチを出してくれる
「・・・あ、うん」
あとで一個持って帰ろっと!
・・・いや、待てよ
あれが何のゴミかを聞いて、自分で出した方が衛生面的にもそっちの方が良いのか・・・
―――なんて、考えてるうちに教室の前まで来てしまった。
まーこのことは、授業中にでも、ゆっくりと考えるとするか・・・
「―――引野くん!!」
「――――な、なに!?突然デカイ声なんか出して!!」
アラトモの叫び声に驚き、教室の引き戸から離れる
「上を見てよ!・・・上を!!」
「・・・・・・っ!? ――――ギ、ギロチン!?」
アラトモが指を差した引き戸の間には、鋭く尖った刃物が黒板消しを置くイタズラの容量で設置されている。
「な、なな・・・なんてことしてくれてんだぁー!」
「・・・全く・・・こんな所にギロチンを挟むなんて・・・」
驚愕している俺の隣でアラトモが呆れ果てている
言ってやれ!アラトモ!!
こんなのは、イタズラや冗談なんかじゃない!特殊部隊の傭兵が仕掛けるブービートラップだと!!
「―――小学生じゃないんだから」
「どんな幼少時代だ!!」
完全にイタズラの域は、越えているぞ!
―――ガギーーーン!!
アラトモが勢いよく引き戸を開け、ギロチンが床へと突き刺さる
・・・こんなの
どこで買ったんだろ?
床に刺さったギロチンを跨ぎ、教室へ入り、席に着こうとするが・・・
「・・・あれ?机がない」
イスは、あるのに!?
「「「・・・クスクス・・・クスクス・・・クスクス」」」
あちこちからクラスメートの堪えきれず漏れ出した、笑い声が耳へと入ってくる
「―――引野くん、あれ!」
「・・・あ、あった」
教室の窓から見える。だだっ広い校庭の真ん中に、ぽつんっと机が置いてある。
わざわざ、あそこまで運んだのか!?ご苦労な奴だな
「・・・あ~ 取りに行くの面倒くさいな~」
「・・・それじゃあ、行こうか!」
「―――えっ!? いや、いいよ!いいよ!!・・・悪いし!」
いじめられっ子に手を貸してアラトモまでこんな目にあったら可哀想だし
「・・・?何言っての!?僕たち友達でしょ?友達の為に動くのは、苦には、ならないよ!」
・・・アラトモ
目頭が熱くなり、感謝の気持ちでいっぱいになる
「ア、アラトモ!本当にありが―――っ!?」
―――むにゅ!!
「―――ご、ごめん!!」
「・・・もう・・・本当におっちょこちょいなんだから」
俺の突拍子もない行動にも笑顔で許してくれる
・・・マジ、神対応
「・・・あった、あった!あそこだ!!」
アラトモが一緒に付いて来てくれたお陰で机を放置された校庭まで迷わずたどり着いた。これなら急いで持ち運べば遅刻しなくても済むかも
「引野くん、ちょっとこれ!?」
「・・・ん?どうした?・・・なんだ、これ!?」
机の表面に、殴り書きのような文字で落書きされている!
何て書いてあるかは、字が汚くて読めないが・・・
どうせ、俺の悪口だろう
「魔法陣が描かれてるね」
「―――これ魔法陣!?これが魔法陣なの!?落書きじゃなくて!」
確かマンガやアニメとかで見る魔法陣って大体IQの高い知的なキャラじゃないと解読できないのが相場だもんな!
THE異世界の産物にテンションが上がり、まじまじと魔法陣が描かれた机を眺める
「引野くん、まずは、この机に掛かっている魔法陣を解除しないと運べないから・・・まだ、触らな―――って引野くん!?」
「・・・あっごめん!!もう触ちゃった!」
だってしょーがないじゃん!!こんな好奇心そそる物なんてそうそうないんだから
触れた途端、机に刻まれている文字が輝き出し、その光が机全体を包んでいく
「ひ、引野くん!!伏せて!!」
―――ヒュウゥゥゥーーー ・・・ドンっ!!
頭を守り、身を屈め、危険に備えていたが、強く輝くその光りは、机から離れ、天高く打ち上がり、男の娘と描かれた火花が打ち上がる
「・・・き、綺麗・・・えっ!花火!?」
なにこれ!?サプライズ?ちょっと嬉しいんだけど
「・・・引野くん・・・ちょっと言いにくいんだけど・・・」
・・・・・・?
「これ100%イジメだね!」
「そうなの!?」
俺こういうの嫌いじゃないんだけど
・・・異世界のイジメ
よくわからん
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