第11話 寮生活

次の日の朝

引野は、布団を頭まで被り、一人丸くなっている


ドンドン!ドンドン!

ドンドン!!ドンドン!!

「引野くん!朝だよ!起きてる!?」


・・・すごいうるさい!


異世界へ転送して来てから本当に色んな目にあったのでゆっくり休んでいたかったのに・・・この鳴り止まない、ドアを叩く音で目が覚めてしまった。


現在、俺を含め、この学園の生徒は、みんな寮生活をしている。

この学園には、A~Cの3クラスまで有り、そのクラスには、そのクラスの寮が設けられ、そこで各クラスの生徒たちが寝泊まりしている。

俺がいる。このBクラスの部屋は、机や家具などは、何もなくベットが一つだけありそこに布団が一枚引いてあるだけの8畳ぐらいの広さである。

テレビやネット、漫画にゲーム何一つないのは、寂しいが・・・野宿するよりかは、断然ましか!?


ドンドン!ドンドン!

ドンドン!!ドンドン!!

「引野くん!引野くん!!」


・・・俺とアラトモは、同じBクラスで一緒の寮なので・・・こうして起こしに来てくれているのだが・・・


―――しつこいな~!!


さっきからドアをノックする音が鳴り止まない!正しく千本ノックである!


・・・全く!

今日から俺は、学園へは、行かないと決め! 異世界ひきこもりライフを送ろうとしているのに・・・


ドンドン!ドンドン!

「引野くん!起きてる!!一緒に学校へ行こうよ!!」


・・・・・・ったく! しょうがないな~


―――仮病奥の手を使うか!!


昨日、食堂でマッソに目をつけられた挙げ句、アラトモに変な期待感を抱かれてしまっては・・・

休む以外の選択肢は、ないでしょ!面倒ごとに巻き込まれるのは、ご免なので・・・俺の最終奥義!仮病を使うしかない!

今まで俺に仮病を使わせて学校を休ませなかった。母親は、一人もいない!

・・・まー何人もいたら嫌なんだけど


「・・・仕方ない・・・やるか」

気だるく布団から出て寝巻きを崩し始める。


この仮病歴10年!仮病3段!仮病させたら百戦錬磨!!・・・ひきこもりのひっきー こと引野優の実力をこの異世界の住人にとくと味あわせてやる!!


―――仮病の心得 その1

第一声は、相手に聞き取らせては、ならない!!



聞き取られて、『なんだ?元気じゃん!』となってしまう可能性が高いので・・・

絶対に台詞を聞き取らせては、ならない!!

相手に『ん?どうした?大丈夫?』と言わせたら、もうほぼ勝ち戦なのだ!!


ドンドン!ドンドン!

ドンドン!!ドンドン!!

「引野く~ん!大丈夫!?」


・・・さて、実践に入るか!

いつもより少し腰を曲げ、ゆっくりとドアを開ける

「おはよう!引野くん」

「んぅん・・・んんう~」

咳払いをしながら聞き取れないぐらいの低い声で話す


「・・・へ~・・・身体が怠いの!?」

――――聞き取れんのかよ!!

センリツか!?お前は!!

・・・いや、男子校だからそれは、違うか!?


相変わらずこの世界の人間の身体能力の高さには、驚かされる!

だが、仮病に関しては、幾つもの修羅場をくぐり抜けて来た俺がこんなことで諦める訳には、いかない!


―――仮病の心得その2

自分で病名を言っては、ならない!!


これは、絶対に病名や症状は、相手に言わせないといけない!

そしてその病名に乗っかるのがコツ!!

相手が風邪と言えば風邪!吐き気は、ある?と聞かれればあると答え、何を聞かれても、相手に100%合わせれば良いのだから!!


「・・・な、なんか・・・身体が・・・熱くて」

今度は、さっきよりも聞き取りやすく、気だるさそうに伝える

「・・・え?・・・引野くん・・・それって!?」

―――よし!それ言え!

早く言え!直ぐ様それに乗っかってやる!!


「―――覚醒し始めてる?」

「うん!そうかもしれない」

―――しまったー!!


「やっぱりね!!見てすぐわかったよ!顔色も良かったし」

「あ・・・いや・・・ち、ちがっ」

「それじゃあ、行こうか!」

「・・・・・・う、うん」

後悔を抱きながら学生服へ着替え始める。


・・・くそ!やってしまった!!

ドンドンドンドンドンドン

まさか、俺の仮病に黒星を付ける人間が異世界にいるなんて・・・

ドンドンドンドンドンドン

思っても・・・

ドンドンドンドン

いなかっ・・・

ドンドンドンドンドンドン



「―――っるせなー!!今、着替えてるだ―――っ!?」


・・・気が付けばベットの上?

・・・・・・あれ?

・・・ま、まさか!?・・・今のは、・・・ゆ、夢?


ドンドンドンドンドンドン

部屋をノックする音が聞こえる


・・・正夢!?

―――初めて見た!!

つまり、これは・・・コンテニューということか!?

受けて立つ!仮病界の横綱の最終奥義を出す時が来た!


―――仮病の心得その3

優しい人には、正直に伝える!!


この技は、今までのケースとは、違い!相手のことを熟知していなければ使えない!条件付き仮病だ!!

これは、アラトモのような優しい人にのみ使用可能の仮病である!

こういう人には、正直にしんどいから学園へ行けないと伝えれば万事OK!!


ドンドンドンドンドンドン


さて、リターンマッチだ!

汚名返上、名誉挽回、夢と同じように腰を少し曲げ、ゆっくりとドアを開ける


「も~う!遅い!目覚めのキスをしないと起きないのかと思ったわ!」

「オカマじゃねーーーか!!」

そこには、アラトモの姿は、なく!紫色の口紅と同じ髪色をした。ロングヘアーのオカマが立っていた

「オカマじゃないわ!マカオよ!マ・カ・オ」


・・・悪夢じゃねーーーか!!

これも夢なのかと頬をつねるが痛いので、どうやらこれが現実らしい


「朝から元気ね!早く出ないと遅刻するわよ!」

夢では、アラトモが起こしにやって来たが、現実では、マカオが起こしにやって来た


・・・気持ち悪い

寝起きにオカマのウインクなんか見せられて気分は、最悪である。


「・・・あら?あなた顔色が良くないわね?」

「さっきから吐き気が酷いから・・・今日、休んでもいい?」

「そんな時は、吐き気止めのディープキス」


「ぎゃあぁぁあ~!!行ってきまーす!!」

迫り来るマカオの唇を回避し、颯爽と部屋を出る


異世界ひきこもりライフは、初日で終了する!!

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