第10話 Aクラス

「貴様ーーー!!トキド様に何をするーーー!!」


突如、現れた。その男は、雄叫びを上げ、俺たちのいるテーブルへと歩み寄って来る

食堂にいる他の生徒達は、この男の存在に恐れをなして、まるでモーゼの十戒のように綺麗な通り道ができる


「貴様ーーー!!なんだその態度は!?それでも謝っているつもりかーー!!謝っているのなら、もっと誠意を見せろ!!誠意を!!」


「・・・・・・」

驚きのあまり言葉が出ない

怒鳴り散らして現れた。あの男の迫力に恐れ恐怖したからでは、なく!

―――その姿が!!

今、俺の頭に描いていた。仮想トキド・ケー ゴリラバージョンそのものだったからだ!!


・・・え?嘘!?

俺、知らない間に頭の中に描いたモノを具現化できる異能力者になったのか!?っと錯覚してしまうぐらいに寸分違わないゴリラである!


「貴様・・・見ない顔だな」

どんどん、どんどん距離を詰め寄って来る

「Bクラスの人間がAクラスの生徒に話し掛けるとは、笑止千万!!ましてやトキド様に手を出すとは、万死に値する!!」

「ま、まま、待ってください!!」

俺を庇うようにアラトモが前に出る

「す、すいません!!あの・・・これは、あの噂の・・・でして・・・まだ右も左もわからない状態でして・・・」

血の気の引いた顔で一生懸命に俺のことをフォローしようとしてくれる


・・・アラトモのあの表情

余程、恐ろしい奴なのか?


「―――なに!?」

凄まじく強い目力で睨み付けてくる

「貴様か~ 噂の転送生というのは・・・随分、貧弱な身体だな~」

引野の身体を上から下へと見定める。

「だからと言って特別扱いは、できん!!罰として校て―――」

「マッソ!!」

トキド・ケーが静かに口を開く

「・・・別に・・・ケガもない・・・今日は、転送初日ということで・・・おとがめなし」

「はっ!!」


マッソとかいうゴリラは、トキド・ケーの言葉に絶対服従のようだ

トキド・ケーへ頭を下げていたマッソがアラトモへと視線を移す

「貴様の指導不足の所為でこのような事態に!?歯を喰いしばれ!!」

「―――くっ!?」

眼を瞑り、ガクガクと身体を揺らし震え上がっている

「いくぞ!!」

「―――ひっ!!」

「ちょっと待った!待った!!」

二人の間に止めに入る

「アラトモは、関係ないだろ?殴るんだったら俺を殴ってくれ」

「引野くん!?」

「ちっ!・・・・・・一度ならず二度までも・・・無礼を働くつもりかーーー!!貴様は、トキド様の施しでおとがめなしを受けたのを忘れたのか!?」

殴りたくても殴れないので煮え切らない表情を浮かべ、舌打ちをする。


やはりこのマッソとかいうゴリラは、律儀にトキド・ケーの言葉を忠実に従っている!

それほどまでに信頼し尊敬しているのか!?


「・・・・・・なら今日のところは、腕立て伏せで勘弁してやる」

「はい!!―――あれ?引野くん!?」

「付き合うよ!元はと言えば俺のせいだし!」


腕立て伏せなんて久しぶりだけど・・・

まー20~30回ぐらいならできるだろうな・・・

・・・多分


「よーし!!・・・腕立て2日間!始めーーー!!」

「できるかーーー!!腕ちぎれるは!!」

「貴様ーーー!!女みたいに弱音を吐くなーーー!!やる前から諦めてどうする!?――――男だろう!?男ならできるできないでは、なく やるか!やらないか!だろ!!」


「―――ならやらない!!」

即答で応える

「ぐうぅ~ ・・・き、きさまぁあぁぁーーー!!」

怒りで顔がみるみる赤くなっていく


「マッソ!・・・行くよ!」

トキド・ケーの顔に感情は、無く 淡々と話す

「・・・で、ですが!」

「―――行かないの?」

「い、いえ・・・行きます!!」


あの偉そうなマッソが怯え冷や汗を流している。

さすがだなトキド・ケー


「命拾いしたな転送生!・・・貴様の残りの学園生活のテーマは、Aクラスに逆らわない!にしておけ!!」

高笑いを上げながらトキド・ケーと共に去って行く


「・・・た、た助かった~!!」

緊張の糸が切れ、床へ座り込んでしまう

「全く偉そうな奴だったな・・・立てるか?アラトモ!」

「・・・・・・ありがとう!」

手を差し伸べ、起き上がり、元気を取り戻し話し始める

「―――けど偉そうにしてられるのも今日までだ!!学園内ヒエラルキーも明日から崩れ落ちるぞ!!」


「・・・・・・なんで?」

「なんでって、そんなの転送生の引野くんがBクラスに来たからに決まってるじゃん!」


・・・えっ!!


「いやいやいやいや・・・何言ってんだよ!?俺の授業での成績や体育での運動神経の無さ―――あれをみれば俺の実力は、わかっただろ!?」

現段階でBクラスのみんなにもついていけない俺がそれより実力の高いAクラスの生徒に・・・ましてやマッソやトキド・ケーを相手にヒエラルキーを崩すのは、不可能だ!!


「まー確かに!引野くんの知力、体力、判断力どれを取ってもポンコツおっちょこちょい野郎だけど・・・」


・・・ぐっ!?

た、確かにそうだけど

アラトモも顔に似合わず毒舌だな


「―――でも、引野くんには、異能力がある!!」


・・・・・・へ?


「隠さなくてもいいよ!その事は、学園にいる人ならみんな知っていることだから・・・転送される前に異能力を授けて貰えたんでしょ!?」


・・・言ってたな



『「どんな異能力にする?火を自由自在に操れる異能力だってできるし、肉体強化の異能力にして自分の体を極限まで硬化することだってできるし、透明化することだってできるし―――なんだったら重力を操りコントロールできる異能力だってできる」』ってマカオの野郎がそんなこと言ってたな



「まだ異能力を発動させたとこを一度も見てないけど・・・まだ上手くコントロールできてないの?それとも発動させるのに何か条件が必要な異能力なの?」


・・・ごめん!アラトモ!

めっちゃくちゃ発動してる!!


「まー・・・な、なんて言うか・・・その・・・あの・・・楽しみは、最後に取っておきたいじゃん」


―――言えない!!

マカオから貰った異能力がこの世界で最も無意味な異能力ラッキースケベだとは、口が避けても言えない!!


「・・・それもそうだね!どんな異能力か見てみたいけど・・・今は、我慢するよ」

「うん、楽しみに・・・しといて・・・」


・・・アラトモ

お前が俺の異能力ラッキースケベの最初の犠牲者だけどな


「明日が楽しみだな!」


「「はっははは・・・」」


よーし、明日から学校休もうっと!!

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