第7話 後悔
「聞いてない 聞いてない 聞いてない 聞いてない・・・」
異世界へ転送しての初めての学園生活
引野は、席に座りながら念仏を唱えるかのように独り言を呟いている
―――マカオの野郎!!
異世界の学校が男子校だなんて聞いてないぞ!
男子校だと知っていればラッキースケベなんていう異能力は、貰わなかったのに・・・
男子校なら触れた物を爆弾に変える異能力にして平穏な学園生活を過ごしたかったのに
マカオの言う
チヤホヤされる
モテモテになれる
―――というオカマ基準の言葉を真に受け、信じてしまったからあんな目に・・・
運動場での体育の授業
Bクラスの生徒全員が制服から半袖半ズボンの体操服のような、ジャージに着替えて、運動場へ集合し、整列している
「では、今日は、徒競走のタイムを計ります。各自準備運動を行って下さい!」
「「「「はい!!」」」」
クラス全員がノマール先生の指示に従い各々肩や足首を回したり、アキレス腱を伸ばしたり、ストレッチをして準備運動を行い始める
・・・体育か~
やりたくないな~
一番嫌いな教科だよ!
なんで来たくもなかった学校で体育を受けなきゃいけないんだ
・・・だけど、まー、ケガは、したくないから、軽く準備運動だけは、ちゃんとやっとくか!
「1・2・3・4! 1・2・3・4!!」
屈伸運動、アキレス腱を伸ばし、最後に肘のストレッチを始める
「1・2・3・4!1・2・さ―――っ!?」
―――むにゅ!!
や、柔らか!!
「・・・引野くん・・・肘を伸ばす時は、周りに人がいないかちゃんと確認しないと!」
伸ばしていた右腕が、ちょうど隣で屈伸をしていたアラトモの胸に当たってしまった
「・・・わ、悪い」
直ぐ様、手を退ける
アラトモの気にしなくても大丈夫だよっと笑う、その笑顔は、少し幼いせいか女の子と見間違えるほどの顔立ちだが・・・
歴とした男性なのである
そんな優しいアラトモと同じクラスになれたのは、嬉しいのだが・・・
―――クソが!!
マカオからの入学祝に貰った異能力!ラッキースケベのせいで
勝手に
お互いこんな目に!
「引野くん!引野くんって走るの得意なの?」
「苦手っ!!俺、運動は、嫌いだし、絶対アラトモやクラスのみんなの方が速いと思うよ」
「・・・そうかな?僕、このクラスで走るのは、遅い方だから・・・もしかしたら一緒ぐらいかもね」
「・・・へへ・・・そうかな」
―――絶対ない!
断言できる!!
俺は、運動どころか光合成すらしようとしない男だぞ!そんな人間が走るのが速いわけがない!
アラトモの方が速いに決まっている
「去年よりタイムが伸びてたらいいけど・・・引野くんは、元いた世界で100mを走る速さを測ったことは、あるの?」
「あるけど・・・タイムは、覚えてないな」
どこの世界でも、走ることに自信がある奴は、自分の記録をちゃんと覚えてるな
走るの遅い奴ってすぐに記録を忘れるよな
「そうなんだ・・・ボクは、この間、測ったら9秒58だったよ」
「・・・・・・50m?」
「100mだよ」
「めちゃくちゃ速いじゃねーか!俺のいた世界で一番足の速い人と同じタイムだぞ!!」
「・・・そ、そうなの?・・・ずいぶん、遅いね!―――ほら、見てみなよ」
アラトモの指さす方を見てみるとクラスのみんなが100mを走っている
「ケンブリッジ8秒3・・・アスカ8秒55・・・タイソン9秒69・・・ジャスティン9秒74」
「・・・な・・・え・・・は、速すぎない!?」
まさか、異世界の人間とこれ程までに身体能力に差があるなんて!?
みんなとは、体格差は、対してないのに・・・
―――これ程まで違うものなのか!?
「そう?Bクラスの平均は、8秒後半くらいかな」
ダメだ!速すぎる!!
ドーピングしても歯が立たない!
元いた世界の100mの平均タイムは、14秒台ぐらいなのに・・・
「ボクらより上のクラス、Aクラスの生徒は、もっと速いよ!Aクラスの平均タイムは、6秒台」
「・・・・・・は?」
「そして、その中でも一番速いのがトキド・ケー!トキド・ケーの4秒44が歴代最速!!」
「・・・じ、次元が違い過ぎる!!」
・・・あっ!?
次元は、違うんだった!?
100m4秒44・・・一体どんな超人なんだよ!
「次は、引野くんとアラトモくんの番です」
「「はい!」」
ノマール先生の呼び掛けに二人して応え、スタート地点へ駆け寄る。
「引野くん!・・・負けないから」
「・・・え?あっ!?うん」
安心して絶対勝てないから
「では、位置について・・・よーい・・・ ―――ドンっ!!」
―――うおっと!?
「―――っ!?」
スタートの合図で何故か足が縺れ、躓いた拍子にアラトモの半ズボンへ手をかけて真下にずり下げてしまい
―――パンツ丸見え状態に
「「「「はーはっはははっはは!!」」」」
その
「ご、ごめん!!」
「もう、引野くんは、おっちょこちょいなんだから」
微笑みながら半ズボンを履き直す
「ほ、本当・・・ごめんな!」
アラトモは、優しいな~
クラス全員の前でズボンをずり下げられイチゴパンツがこんにちは状態になり、みんなに笑われても、俺を怒らないどころか嫌な顔一つしない
・・…アラトモ
・・・聖人過ぎる!
・・・・・・それにしても
お前のせいでアラトモが酷い目にあったじゃないか!!
全く!!ラッキースケベには、オン、オフは、ないのか!?
・・・そうだ!?―――魔力だ!!
俺も魔力を手に入れ、
もしかしたら100m走も魔力の力で速くなったかも!?
「では、もう一度、測り直しますよ」
・・・ノマール先生
目の前で騒ぎが起きているのに・・・
相変わらず!冷静沈着だな!
何もなかったかのように普通に仕切り直している
「では、位置について・・・よーい・・・―――ドンっ!!」
アラトモ9秒21
引野18秒89
「ハァハァ・・・ハァハァ・・・や、やっぱり・・・ハァハァ・・・最下位か」
異世界へ来て、魔力を得てもやっぱり足は、速くならないか!?
「引野くん!そんな気を落とさないで・・・」
疲れて、地面へ座り込んでいる。俺の肩に手を添え、微笑みかけながら元気付けにくる
「引野くん!1位と最下位の差なんて対したことないんだよ・・・
ゴールすることとしないことの差に比べれば」
「・・・・・・アラトモ」
そのセリフ、短距離走では、言わなくない!?
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