第7話
放課後。俺は空き教室に新原さんを呼び出した。放課後に呼び出しとか今から告ります感半端ねぇな。もちろんそんなことするつもりないけど。教室には2組の机と椅子が向かい合わせに置いてある。俺は窓側の椅子に座って待っていた。
指名した時間の3~4分前に新原さんは教室に来た。
「そこ、座って。」
彼女は俺が正面の席をすすめると、不審そうに座った。
「急に呼び出して悪いな。ちょっと、左手首を見せてくれないか。」
新原さんは怪訝そうな顔をした。そりゃそうだ。誰だってちょっと左手首みせて、なんて言われたら不審がるに決まっている。
「え、なんで?」
「傷。あるだろう。君の左手首。」
緊張して片言になりながら俺は聞いた。
「ないけど。傷なんて。」
もちろん彼女は否定した。しかし左手首を見せようとはしない。まぁ、これも想定の範囲内だ。
「あるだろ。俺の母さんさ、カウンセラーなんだ。」
「知ってるよ。本も出してるでしょう。有名よね。それがどうかしたの?」
彼女の顔は曇ったままだ。
「この間、母さんのところにきた子は、自分で自分を傷つけてしまっていたらしい。君と同じだね。」
目が、新原さんの目が大きく開かれた。
「どうして、知ってるの?」
「偶然だよ。制服の間から見えちゃったんだ。」
新原さんは開き直ったのか、ふざけたように言った。
「糸神くんのえっち。」
「は?べ、別に見ようとして見たんじゃねーし。ぐ~ぜん見えちゃっただけだし。」
「あはは。わざとらしいな~。
じゃあ、明日もこの時間にここにきてね。」
そういうと彼女は足早に教室をあとにした。
え、明日?新原さんは明日、俺になにか話すつもりなんだろうか。
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