第3話

「悪いな・・・」

隣りを歩く新原さんに謝る。

「いいよいいよー。」

笑いながら新原さんはパンが入った袋をカサカサと揺らす。

俺は大量の昼飯をパシられた結果、全て持ちきれず、通りかかった新原さんに助けてもらったのだ。メモには絶対に食べきれないほどのパンや飲み物が書かれていた。絶対わざとだ。俺を苦労させようとしてるんだ。しかし結果オーライ。新原さんが手伝ってくれることになった。俺が教室に戻るなり、

「おい,お前なに新原さんに荷物持たせてんだよ!」

非難の応酬。いや、お前らの昼飯だから。ニヤニヤした男子たちに袋を渡す新原さんの手首が制服の間から見えた。

・・・?なんだ?あの傷?

白い腕には切ったような傷跡が2本。

「新原さん…それ…」

どうしたんだ、と聞く前に新原さんは袋を配り終えて教室から出て行ってしまった。どこか見覚えのあるその傷は、俺の心を不安にさせた。

午後の授業には全く集中できず、放課後に突入してしまった。

「おまえ授業中新原さんのことめっちゃ見てたじゃん。」

クラスの男子が言ってくる。

「んなことねーよ。お前らも見すぎだろ。」

俺たちの会話を笑いながら教室から出ていく彼女が、もの凄く寂しそうに感じられた。

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