第9話◆残された勇者達〜その二〜◇

 今日は試験日なので私達は魔法学園に来ていた。

 校門から入ってすぐの受付でカードを渡すと、受付の人がビックリして校舎の方に凄い勢いで走っていってしまった。しばらく待っていると、一人のおばさんが歩いてきた。


「勇者諸君よくきたさね」


 髪が黒に近い赤で耳が尖ってるおばさんだ。見た目は五十歳くらいに見える。


「えっと……。誰でしょうか?」


 どこにいても青葉くんは変わらないなぁ……。いつも一番に話しかけてるし……。


「なんだい? あの白髪馬鹿しらがばかに聞いてなかったのかい?」

「し、白髪?」

「あの白髪のおっさんだよ。レイアルさね」

ようくん~。国王様のことよ〜」

「あぁ、そうか。蓮花れんかありがとな」

「いいのいいの〜。うち、様くんのためなら何でもしてあげるし~!」

「ほんと仲いいなお前ら」

「やっぱ付き合ってんじゃねぇの~!?」

瑠哉りゅうや、前にも言ったけどまだ付き合って無いよ?」

「”まだ”って事はあたしもチャンスあるってことだよね〜!」

「まぁ、そういう事になる…かな?」


 あー。今まで大事な話などでは出てこなかった三人組……。青葉親衛隊が騒がしくなり始めた。ずっと静かにしていればいいのに。

 三人とはまゆずみ 蓮花、東雲しののめ 冬吾とうご玖城くじょう 瑠哉りゅうやで黛さんと玖城くんはいわゆるギャルなので少し苦手なんだよなぁ……。今は付き合ってるとかどうでもいいでしょ……!


「あんたらほんとに勇者かい?レベル上げてるかい?」

「まだ実戦は少ししかしてないんですが、皆レベル十以上はあると思いますよ」

「低過ぎだよ。勇者なら少なくとも後衛で二百。前衛はその倍くらい行ってもらわないと困るさね」

『二百!?』


 え!? 二百!?一体どこまで上がるの!? 前衛は倍って……。四百?


「えっと……。スフィリアさん? レベルってどこまで上がるのかしら?」

「そんなん知らんさね。それより名乗ってないのによくわかったね?」

「えぇ、このタイミングに出てくるなら紅の賢者かと思ったの」

「一応自己紹介しとこうか。私がアンタらの試験監督のスフィリア・F《ファイス》・ガーネットだよ。よろしく頼むさね」


 この人が四賢人の一人なのか〜。耳尖ってるということはエルフなのかな? 見た目と歳が違うって聞くけど、どうなんだろ?


「「学園長〜!何話し込んでるんですか〜!!」」


 色々話をしていると長身で焦げ茶色の髪の男の人と私と同じくらいの背で金髪の女の人が一緒に叫びながら走ってきた。なんと言うか物凄く早い。走るというよりも跳ねてる?


「アンタらどうしたんだい? そんなに急いで」

「どうしたじゃないですよ!」

「私達ずっと第一闘技場で待ってたんですよ?」

「あ、今日はそういえば試験だったねぇ。じゃ行くさね」

「「忘れてたんですかっ!?」」


 さっき試験監督って言ってたのに話してる間に忘れたって事……?


「まぁまぁ、長生きすると細かい事は気にならなくなるさね」

「「細かくないですからね!?」」


 この二人凄いなぁ……。突っ込むタイミングが一緒だ……。


「あの二人凄いわね。タイミングバッチリ」

「あ、涼ちゃんもやっぱりそう思う?」

「あの足の早さおかしいだろ! どうなってんだ?」

「やっぱり辻都くんはそこなんだね……」

「あんな速さで走れたらって思うとワクワクしないかっ!?」


 凄い目がキラキラしてるし……。辻都くん……。移動し始めたあの二人について行かないと、置いてかれちゃうよ?


「どうでもいいけど脳筋置いてくわよ〜?」

「あ! 待ってくれって!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あれから校舎の中に入り、二十分近く歩いているのだが、闘技場と言う施設に着く様子が全くない。それらしい場所は幾つかあったのだが全てスルーし、歩き続けている。


「ねぇ……。涼ちゃんここ広すぎない? これ私達の学校幾つ分?」

「そうね……。私達の学校と比べ物にならないわよ。そう言えば他の学校もあるのよ? ここの街って」

「こんなに大きい所があるのに?」

「えぇ、剣術だけの騎士育成学校があるわよ。確か剣術に関してはここよりはそっちの方が良いらしいわ」


 涼ちゃんの話に剣術という単語が出た瞬間に辻都くんの顔がこっちに向いた気がする。

 辻都くんを入れるとややこしくなりそうだから無視しておこうかな。

 それに勝手に入ってくるだろうし。


「他の街もあるの?」

「もちろん、他の街にも学校はあるけど一番はここよ。因みに二番は帝国の方らしいわ」

「いつか帝国の方にもいくのかな?」

「そりゃ魔物が出れば行くんじゃないか?」


 ほら、思った通り入って来た。


「あっちには冒険者ギルド本部があって冒険者が多いから、それはないんじゃないかしら?」

「なるほどなぁ。お、やっと着いたみたいだぞ」


 話していたうちに着いたようだ。意外と近くまで来てたのかな。

 周りを見ると闘技場に行くための渡り廊下を歩いているみたいだった。ここの建築技術は高いのかな?

 頑丈そうな扉から闘技場の中に入ると、その広さに勇者全員が驚いた。


「わ〜! 広い! テレビでよく見る野球場くらい広いんじゃない!?」

「もっと広いわよ……。観客席まであるわよ。ここは何に使うのかしら……」

「さぁ!勇者の皆様!やっと試験が始められます。うちの学園長が失礼しました!」


 茶髪の男の人が何やら喋り出した。説明かな?


「私は何もしてないさね」

「何もしてないから怒ってるんですよ!」

「ルーカス、その”おばさん”は置いといて自己紹介と説明を済ませましょう?」

「確かに、この”おばさん”をかまってても、しかたないね」

「いつもいつもおばさんとはなんさね!賢者だよっ!?」

「賢者に戻りたかったら、仕事してください!」

「や、やりたくないんだから仕方ないさね!」

「「あんた学園長辞めちまえ!!」」


 ……コント? いつもこんな感じなの…?


「アハハハハっ! コイツらおもしれぇな!」

「ぷっ……。これは……。ふふっ」

「確かに面白いけどいつ終るんだろう……」


 三人の言い合いが終わるのは十分後だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「「ほんとすみません」」

「いえいえ……。いいですよ。それよりも自己紹介と説明をお願いできますか? 私の名前はオウヨウ・アオバです。これからよろしくお願いします」

「あ、はい。私はレイアル王国第一王女リメル・レイアルです。気軽にリメルと呼んでください。以後よろしくお願いしますね。それとこっちが……」

「私は第一王子のルーカス・レイアルです! 女性の方々この試験の後にお茶でもどうですか? キラッ」


 この人達レイアル王国の王子様とお姫様だったんだ。リメルさん綺麗だなぁ……。

ルーカスさんの方は……。なんだろう。女たらしの匂いがする。……気のせいかな?


「あのプレイボーイ殴っていいかしら? 何かイラつくわ」

「涼ちゃん私も我慢したから我慢しよう?」

「では、自己紹介も済んだのでこの”たらし”と”おばさん”は置いといて私が説明しますね」

「なぜ、私もそんな扱いに……」


 ここの人としての序列じょれつが少しわかった気がする。それにコントもここまで来るとクラスの大半が苦笑いだ。


「この学園の闘技場は昔に戦闘好きな勇者が作ったとされている技術を、模倣して作られたフィールドとなっています。普段は行事のランク戦やポイント争奪戦に使用しています。ここ以外にも他に四つほどあります。この二百メートル正方形のフィールドに乗っている間は自分の魔力で自身の体を自動で覆います。この状態を”完装”と言います。ここまではいいですね?」


 自分の魔力って事は多ければ多いだけ有利ってことかな?

 ランク戦とか分からない事もあるけど今は必要なさそうだしとりあえずは大丈夫かな。


「この完装をしてる間、大体の物理や魔法などの攻撃はほとんど効かなくなります。ですが、攻撃を受けると体力の代わりに魔力が減ります。なので何回も攻撃に当たり続けると、完装が解けて普通の状態に戻ってしまいます。そうなると戦死扱いになり、負けとなります。これはランク戦のルールですが今回の試験に使用するつもりです」

「ということは試験は好き勝手に相手に攻撃していいということですか?」


 ここで青葉くんが急に喋り出した。少し余裕に満ちた表情をしているから勝つのを確信しているんだなぁ……。


「えぇ構いません。固有能力あり、スキルもあり、魔眼も使えるならありです。私達は戦いの中で皆さんの動きを見て学校でのランクを決めますので頑張ってくださいね。戦闘職の皆さんはルーカスかおばさんの所に集まってください」


 でも、私は攻撃とか得意じゃないし、他にも攻撃をメインにしていない人が何人かいるんだけどどうしたらいいんだろう? 戦うのはリメルさん見たいだけど、採点基準がよくわからない。

 こんな時に青葉くん聞いてくれないから困るんだよね。自分で聞くしかないか。


「あのリメルさん。私回復メインなんですけど、どうしたらいいですか?」

「戦闘がメインでは無い人は私と戦ってもらいます。戦闘職ではないからと言っていると困る時があると思うので、他の戦う手段も持った方がいいと思いますよ? 他に質問などはありますか?」

「大丈夫です。ありがとうございます」


 やっぱり採点基準は教えてくれないよね……。


「では、それぞれ集まって始めましょう」

「やっと出番だよ。さぁ! 久しぶりに遊ぶさね!」


 スフィリアさんがやる気なのはいいけど周りには誰も集まってはおらず、全てルーカスさんの方に集まっていた。


「何でだいっ! ルーカス! 少しこっちに来させな!」

「と言っているんだけど、行きたい人はいないみたいですね。皆は私のあまりの美しさに近付いて来てしまったようです! ……あっ! 離れないで!」


 ルーカスさんが聞こうとした途端、首をいっせいに横に振ったのは綺麗だったな。後半のが聞こえた瞬間に結構皆が本気でひいてた……。

 それは置いといてしょうがないよね。だれも賢者と戦う気なんて……ね?


「じゃあ私が賢者様と戦いますよ」


 いた、いたよ。青葉くん凄いなぁ……。何で行けるんだろうか。


「じゃあ俺も!」


 辻都くんは……。まぁ、涼ちゃん曰く脳筋だからいつも通りかな。


「なんだい? 二人だけかい? じゃあ、まとめてかかってくるさね!」

「いいんですか?」

「あたしゃ負けはしないよ」

「おっしゃー! やるぜー!」


 そう言い合うとフィールドの奥の方に三人で行ってしまった。

 その後すぐにルーカスさんのグループも移動していた。


「じゃあ、私達も始めましょうか。戦闘は一人ずつで私がランク判定を終えるまでにしましょう。続けたい場合は言っていただければ続けますね」



 そして、試験は順調に進んで皆の試験は終了し、端に集まっていた。試験だが勇者組は一人も勝てずに負けていた。

 私はリメルさんに速さで圧倒されて魔法が一発も当たらず負けてしまった。だけどリメルさんとは結構仲が良くなっていて、やることが終わってからは色々話を聞いてもらっていた。

 辻都くん達とスフィリアさんの戦いはランクが決まった途端に一撃で吹き飛ばされていて、皆はここまで差があるのかと、かなりびっくりしていた。

 全員が集まり、一人一人ランクを教えられたけど、皆は自分が勇者なのに信じられないと言うような顔をしていて少し空気が沈んでいた。

 私達のランクは……。Aランク四人、Bランク十人となっていて勇者としてはかなり低い位置だった。

 Aランクは、私、涼ちゃん、辻都くん、青葉くんだった。

 そして、スフィリアさんはため息混じりに『これなら私が魔物を殲滅せんめつした方がいいさね』と言っていて更に、青葉くんと辻都くんはどんよりとした空気になっていた。

 何か言ってあげなければと感じた私は涼ちゃんを連れて、少し後ろで下を向いている辻都くんに話しかけた。


「まぁ、辻都くん……。強くなるために来たんだしね? それにシレムさんもいるし頑張ろ?」

「そうね、王国の人達にベタ褒めされてたからって強いとは限らないじゃない。悔しいのなら特訓あるのみね」

「……」


 ん? 聞こえなかったのかな? どうしたんだろ?


「……辻都くん?」

「脳筋?聞いてるのかしら?」

「朝……素振……回、それにマラ……に腕……百回……」


 これは……。何か言ってる? もしかして……。


「涼ちゃん……」

「えぇ……。コイツ……」


 涼ちゃんは手をグッと握り、辻都くんのお腹にめり込ませながら言った。


「全く落ち込んで無いわ!」

「ぐふっ! な、なにすんだよ!」

「私達の心配を返しなさいっ!」

「はぁ!? 意味わかんねぇよ! 俺は特訓メニュー考えてただけなんだぜ!?」

「うるさいっ! さぁ、もう一発殴らせなさい!」

「桜井! こいつを止めてくれ!」


 私は笑いながら言った。


「涼ちゃんーー」

「おぉ!ありが……」

「やっちゃって!」

「何でだァ!」


 辻都くんと涼ちゃんの戦闘けんかが収まり、ランク試験も終わったので私達は闘技場から一番近い教室に来ていて、制服についての説明を聞いていた。


「これが私が考えたこの学園の制服さね!」


 ドヤ顔で取り出したのは、外国の軍服と学校のブレザーをしたような感じの洋服。

 男子の色は白いシャツに黒の上着、マント、ズボン。上着とマントには青模様が入っている。女子は白いブラウスに黒の上着とマント。スカートは赤っぽい色でマントなどの模様はピンクだ。こんな服がもし日本にあったら、コスプレっぽいけど人気になりそうだ。

 少しスカートが短い気もするけど……。


「それで、学年だけど、五年まであってそれぞれ色が決まってるさね。その色を見分けるポイントがあるさね。男は武器に付けるリボン、女は胸元に付けるリボンさね。アンタら一年は青だよ。ルーカスは四年でSランク序列第十位、色は黄色さね。リメルは三年でAランク序列第三位、色は赤。他は自分で調べな。今日はこの制服と学年の色と同じ学生ポイントカードを貰って終了さね。じゃあ解散。あ、入学式は明日だから忘れるんじゃないよ」


 また大事なことわすれてたし……。しっかりしようよ!?

 解散した後、リメルさんが近くにいたので少し話をすることにした。


「リメルさんAランク三位なんですか!?」

「あれ? 言ってませんでした?」

「初耳です!」

「もう少しでSなのだけど、一席と二席が結構強くて……。それにSランクの人も引きずり下ろさないといけないの」

「頑張ってください!」

「ふふっ、ありがとう。今年の新しい子が強くないといいのだけど……」


 話していると涼ちゃんと辻都くんが近づいてきて話に入ってきた。


「あら、仲がいいのね?」

「うん、試験の後に色々聞いてもらってね。それから仲良くなったんだ〜」

「貴女はスズカさんですね。よろしくお願いします」

「色々聞いたのよね? ナツの事よろしく頼むわね。結構疲れてると思うから」

「えぇ、話を聞いていてわかりますよ。大変でしたね……」

「鎌江は生きてるぞ。あんなひねくれたヤツは中々死なない」

「えぇ、私もそう信じていますね」

「あら、脳筋はもう、その少ない脳みそで考えなくていいのかしら?」

「あぁ? 今までの鍛練より三倍増しだコラ。それと、脳筋じゃねぇ」


 また始まった……。うーちゃんはよくこの喧嘩を起こさずに、今まで相手してたなぁ。とりあえず止めないと!


「はい、ストップ。二人共やめようね?」

「……そうね。リメルさんに恥ずかしい所を見せては行けないものね」

「一時休戦だな」


 そう言えばこの学園のことあまり知らない……。となると情報を集めないと行けないわけで……。


「……リメルさんこの後時間あります?」

「そうですね……。授業も無いですし、二時間位は暇ですよ?」

「この学園のこと聞いてもいいですか?」

「それじゃあ、そろそろお昼ですから学園内でここからすぐ近くにある喫茶店で、お茶をしながら話しましょう?」

「喫茶店もあるんですか……。涼ちゃん達も来る?」

「行くわ。色々聞きたいことあるし」

「俺は師匠の所に行ってくるぜ」

「そっか、行ってらっしゃい」


 そこからは辻都くんと別れて、喫茶店に行き三人で色々なことを話し合った。その後は特に何も起こらず、宿に戻った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして入学式当日ーー

 在校生全員が入ることの出来る第一闘技場で行われた。

 入学者であろう人達が全員並ぶと魔法で拡張された声が聞こえた。


「さて! 今年も新入生が入る季節がやってきましたぁぁ! と言うことは今年もSクラスの第一席と第二席の模擬試合が開かれますッ!野郎ども嬉しいか~!!??」

『おぉーー!!』

「私も今年のこの試合を実況できるのは嬉しいぞー!! 実況は私! ルエルですッ! そして、解説はSクラスの理論魔法の先生であるフリード先生に務めていただきます!」

「どうもフリードです。新入生の二百八十名の皆さんおめでとうございます。今から始まるSクラスの試合を見て、あなた達もここに立てるよう頑張ってください!」

「ありがたいお言葉ありがとうございます! そして、なんと言っても無視出来ないのは異世界からきたと言う勇者達! 他の皆さんも負けないよう頑張ってくださいね~?! それでは会長と副会長はフィールドに上がって『完装』して下さい!」


 わー!? 私達の事は別に言わなくていいのに! 紹介があった途端全員の視線がこちらに向いたのが良くわかった。青葉くん以外は少しそわそわしている。なんで青葉くんは微動だにしないんだろう……。

 司会のルエルさんに呼ばれたSクラスの二人が入場してすぐにフィールドに上がって『完装』をした。

 一人は槍を持っていて、ライトグリーンの髪のおさげで眼鏡をかけている女子。もう一人は終始笑っていて優しそうに見える普通の茶髪の男子で武器は、腰からロングソードを二つ下げている。二刀流だろうか?


「さぁ! 今年の試合はこの学園の最強の座を三年間守り続けていて、生徒会長の四年生、エルメス・フランハートと! 冒険者ではAランク入り確実というほどの槍の使い手で風紀委員長の三年生、シルヴィア・シロイマーです!」

「二人共とても成績優秀です。一体どんな戦いを見せてくれるのか楽しみですね」

「簡単な紹介が終わった所で試合開始の時間が来ました!それでは二人共武器を構えて……。試合開始!!」


 ブザーがなった途端始まったのだが、目を魔力で強化しても戦ってる姿がほとんど見えず、たまにつば迫り合いをしている時しか私は見えなかった。

 それでもシルヴィアさんの方が消耗しているのがわかり、エルメスさんがどれだけ強いかわかった。少しして予想通りにエルメスさんが勝って模擬戦は終わった。

無傷での勝利、戦っている間も笑顔は崩れずに保っていた。一席と二席の差はこんなに開いているものなの……?

 次は学園長の話だけど日本ではありえないくらい短かった。面倒くさがりというか適当というか……。

 その後も歌が流れたり、踊りがあったり、屋台が並んだりとお祭りかというほど盛大に夜まで入学式は行われた。

 楽しそうな学園生活。お姫様だけど友達も出来た。後は……。


「うーちゃんが戻ってくるだけだよ……」



 ーーまだ盛り上がっている闘技場の中、空を見上げ輝く星と青い月を眺めながら少女はそう呟いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る