第2話異世界アルカデリア
白い光が晴れるとそこは、室内の祭壇の様な場所だった。
足元には魔法陣が広がっていた。今は光っていないな。
周りには教室の中にいたクラスメイトがいて、魔法陣の外には鎧を着た大男や服装からして身分が高そうな人達がいた。他には、ローブを着た人が倒れていたり、数人が涙を流して喜んでいたりしていた。倒れてるの助けてやれよ……。
少し離れた所にいつもの三人がいたので近づいて話してみる。
「おい、ナツ達大丈夫だったか?」
「え? あ、はい大丈夫です……」
「あぁ、大丈夫だ。……って誰だ?」
「は? 何だ? 転移の影響で友達の顔を忘れたか?」
全く何を言ってるんだ? この脳筋は! 冗談にも程があるぞ。
「いや、忘れるも何も俺にはお前みたいな友達いないぞ?」
「わ、私もです」
「私もいないわね。白い髪の人なんて」
「お前ら何を……ん?涼叶、今なんて言った……?」
聞き間違えか? そうだよな?
「なんで私の名前を……。まぁ、いいわ。えっと、私もいないわね? だったかしら」
「いやその後……」
「白い髪?」
聞き間違えじゃなかった……。試しに数本髪を抜いてみる。見事に全て白だった。マジですか。何で変わったんだ? ……あ、もしかしてランダムって言ったからか? 確か皆は元の姿でいいって言ったんだよな……。まあ、髪の色くらいいっか。
だが、髪の毛が変わったくらいで間違えるか?
「もしかして……うーちゃん?」
「は? 何言ってんだ? 桜井、この
白髪じゃないわ。張り倒すぞ。
せめて
「いいえ、あり得るわよ? 転移なんて不可思議な事が起こっているんだもの、外見が変わるなんてこともあるかもしれないわ」
「んー。考えるよりアイツに聞いた方が楽だな」
「そうね、そうしましょうか。ねぇ、ちょっとそこの貴方。もしかして鎌江君なのかしら?」
聞こえてるから。聞こえてたら裏で話してる意味無いから!
「そうだよ! 俺は正真正銘の鎌江 氷兎だよ!」
「やっぱりうーちゃんだったんだ~! 変わったね! 色々と!」
「あぁ、ナツ達はあんまりと言うかほんとに変わってないな」
「お前、鎌江だったのか。何でそうなったんだ?」
「知るか。お前らも変な部屋で外見決めたんじゃないのか?」
「私は気がついたらここにいたよ?」
あれ? 何故だ?
「俺もだ」
あれれれ? コイツもかよ。
「私も右に同じね」
も、もしかして俺だけ? ……あいつ俺のこと騙したのか? 技神とか言う奴ともう一回会いてぇ!
そんな感じに他の連中もお互いの生存確認をしていた。
それが大体終わると同時に大きな声が響いた。
「勇者様方! 私達の元へ来て下さりありがとうございます! 混乱してるかと思いますが、私達についてきて下さいませんか?」
喋っているのは女の子だ。一番先頭にいて、高そうな純白のローブを
そんな事をお構い無しに例のイケメンさんが叫んだ。
「幾つか質問したいことがある! それからでいいか?」
「えっ……。でもあの……はい、構いません。私の知っていることでしたら何でも話しましょう」
少し迷っていたが話すことに決めたようだ。
立ってるのも結構辛そうなんだから手加減してやれよ……。
「では、最初に貴女は誰だ?」
「あっ……これは失礼しました! 私はこの国の第二王女のフェイリスと申します。」
「こ、これは、王族の方でしたか。すみません」
そう言いながらイケメンさんが謝った。おーキョドってる。何か楽しい。
イケメンの不幸は蜜の味だな。
「い、いえ! 私が言わなかったことが悪いので気にしないでください! それで、あなたのお名前は?」
「私の名前はオウヨウ・アオバと言います。二つ目の質問ですが、良いですか?」
なんで苗字と名前逆にした。
確かにラノベやゲームでも逆にすることが多いけど……。
「アオバ様ですね。いいですよ」
「では、ここは何処なのですか?」
「ここはレイアル王国、その王城内にある召喚の
「ここは地球とは違うのですか……?」
「チキュウ? すみませんが分かりません。……勇者様の故郷でしょうか?」
んー。やっぱり異世界だった。
クラスメイト達がザワザワし始めたぞ……。
ナツは心配が半分、理解出来てない半分って感じだな。
翔海はわくわくし過ぎだ。
加納は面倒臭いと顔に書いてあるな。
「すみませんがここまでにして、この後この国の王。……私のお父様にお会いして頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「ま、待ってください! もっと聞きたいことが! 何の為に私を呼んだんだ!!」
なんで、目をキラキラさせてるんだ。「勇者様しか魔王を倒せないんです!」とか言って欲しいのか? ……それと、”私を”じゃなくて”私達を”な。今日のお前ツッコミどころが多すぎだぞ。
「それもお父様から直々に話がありますので、ついてきて下さいますか?」
仕方なく移動することを了解した俺達は、召喚の祭壇を出た。それで今歩いているわけだが……。広すぎるし迷路のような道を延々と歩くのはかなり精神にくる。……皆が飽き始めたとき王女様の足が止まった。どうやらここらしい。
入るとそこには長いテーブルがあり、豪華な食べ物が
だが、その部屋には料理だけではなかった。テーブルの奥の
「ようこそアルカデリアへ。口に合うかどうかはわからないが、ささやかな贈り物として料理を用意させてもらった。こちらにお座りくだされ」
よく見ると椅子が人数ピッタリ置いてあった。勇者はこの人数と決まっているのか? それとも今用意したのだろうか?
俺達はそれぞれ好きな様に座った。するとメイドさん達が出て来てジュースの様な物を注いでくれた。
ジュースもいいが、メイドだ! 生メイド! つい目がいってしまう。だが、ふと何かを感じナツの方を見ると何故か黒いオーラが出ていた。うん、これから気を付けよう。なるべくね?
翔海もメイドに目がいっていたが涼叶に頭を叩かれていた。ざまぁだな。
肝心の食事だが数人が手を付けて何も無かったようなので一口食べてみると美味かった。サイゼ○ヤの比じゃなかった。……あたりまえか。
そんな感じで料理に
「さて、勇者様方。自己紹介が遅れましたな。私がこの国の王で
「自己紹介ありがとうごさいます。私が勇者代表で質問してもよろしいでしょうか?」
おい、いつ決めた。まあ、別にやりたい訳じゃないのでイケメンに任せるか。
こいつみたいにコミュ力高い人がいると楽でいいな。因みにコイツが何でコミュ力が高いかと言うと、親が両方政治関係のお偉いさんらしい。それで人と会う機会も多いってことだ。まぁ、俺から言わせれば面倒くさそうな事この上ないな。
青葉が何を質問しようとしているのかはわかる。さて、それに王様はなんて返すんだ? やっぱり王道で魔王か?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから青葉だけでなく、他の連中も質問しながら食事会は続いた。その中でどうでもいい話は除き、俺なりに三つに話をまとめる。
まず、一つ目。呼ばれた理由は、魔王ではなく、大量の魔物の巨大化と凶暴化。そして、体の一部を武器化させる物の討伐らしい。
何故武器化するのかと言うと、この世界には色々な加護というものがあり、その加護の一つに闘神の加護と言うものがある。これを魔物が持った結果だという。その加護をもつ魔物は、全て強いらしい。
その加護は魔物だけではなく人も持つ言うのだから驚きだ。
実際見せられた。女の人が出てきたと思ったら、女の人の足元に魔法陣みたいなのが浮かんで一振りの剣になったのだ。この様な人達を《スミス》と言うらしい。女だけでなく男の《スミス》もいるらしい。
《スミス》の話は置いておいて、端的にいえば、武器化した魔物を退治してほしいってことだな。
これに対し、イケメンさんを含むリア充組が何かギャーギャー言っていた。世界が変わっても煩いままなんだな。
二つ目は今は俺達は元の世界で戻れないらしい。過去にも勇者が来たことがあるが、この世界で最後を迎えるか
これには全員が「どうしてくれるんだ!」と反論していた。その反論に対し王は、「全員の身分は保証し、この城で面倒を見る」という事らしい。ふざけんなよ全く! ……俺は少しワクワクしてるのが本音だ。
三つ目は俺達の力についてだ。
これには皆が少しワクワクしているように見える。一人一人に小さな指輪と針が配られた。
「それは、ステータスリングというもので自分の血液を一滴垂らすとその者専用となる指輪だ。それを使って自分のステータスを見るのだ」
どうするんだ? まぁ、こう言うのは念じれば大体発動するのがテンプレだよな。
「あなた。発動の仕方をお教えしないといけないでしょう? 初めまして皆様。王妃のミレドアと申しますわ。皆様。ステータスと念じたり、口に出せば目の前に出るはずですわ」
美人な人キタァー! 肩より下少し長い髪に目が少し吊っている。ひと目でわかるこの人は絶対Sだ。思っただけで踏まれたいとか思ってないぞ?
そんなこんなで軽い流れで見ることが出来たステータスに俺は絶句した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カマエ ヒョウト 人族
・職業……勇者見習い Lv.1
・スキル
全耐性Lv.MAX 鑑定Lv.3
ステータス偽装Lv.-
・魔法
光Lv.3、闇Lv.-、虚無Lv.-
・固有魔法
絶対転移
・呪い
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
何だよ……これ……。
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