異世界ってこんなに多忙でしたっけ?
色音れい
第1話◆日常から非日常へ◇
俺の名前は
俺の通っている高校は、どこの県にもあるような公立で、偏差値は少し高い程度だ。生徒会長が超絶美少女だったり宇宙人がいる様な学校では無い。
まぁ、何が言いたいのかと言うと、毎日が普通すぎてつまらないのだ。だからと言って虐められたい訳でもないし世界が滅亡するようなことも起きて欲しくない。何と言うか……。ちょっとした非日常的な出来事が起きて欲しいだけだ。
勉学の成績はやる気にもなれず、中の中程度で悪くは無く普通だ。
友達は性格的に多い方ではないが、いない訳でもない……普通だ。
今日の朝も学校に行くのがだるかった。学生ならよくある感情で変わった事ではない。
さっきから何故、普通かを確認しているかと言うと、普段からいるはずの教室ではなく白い空間にいるからだ。
夢ではない。ゲームやアニメのように非日常的な事が現実に起きたのだ。
何でこうなったか。それは一時間程戻るーー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝。俺はスマホの目覚しで起き、朝ごはんを食べ、制服に着替え、そしてある人を待つ事が日課だ。
着替え終わると同時にインターホンが鳴った。
「お、来たか」
開ける時に日が顔に当たるので気にしながら玄関の扉を開ける。
インターホンの前に髪を気にしながら立つ女子がいる。その子に軽く挨拶をする。
「ナツ、おはよ」
「うん! おはよう! うーちゃん」
この子は隣に住んでいる幼馴染みの
こうして毎日迎えに来る。特別な用事がない限りはいつも一緒だ。俺は別に別々でもいいと思うのだが、勝手に行ってしまうと何日か機嫌が悪いのだ。
別に嫌な訳では無い。むしろ嬉しいまである。だってこんな美少女と歩けるし嬉しくないわけがない!
嬉しくない男子なんて同性愛者か熟女が好きとかだろう。
因みにだが、『うーちゃん』と言うあだ名だが、俺の名前の兎からきているらしい。初めて聞いた時「微妙なセンスだな」と思ったのは内緒だ。
「……ちゃ……! ……うーちゃん!」
「……おっと、ビックリした」
「もう! 何考えてたの?」
「いや? ボーッとしてただけだよ……って近い近い」
「あ、ごめんね? それでさっきのことなんだけど……」
などと色々話しながら俺達は学校に着いた。
ナツとはクラスが同じだから行くのも帰るのも一緒だ。因みに言うと中学も全部同じだった。
うん、凄いな俺達。なんかの糸で結ばれてるよ。……結ばれていたら付き合ってるか。
人の間を通り抜けながら、三階にある俺達の教室に入る。
「よう! 鎌江!」
「お二人さんおはよ。そして、早く結婚しなさい」
最初の煩いのが、体育全てにおいて最高の成績を出すサイボーグこと
そして、二人目の女子は成績が常に学年五位に入っている天才の
「全く朝から元気だな。……おはよ」
「す、涼ちゃん! ……そろそろそれ止めない? 恥ずかしいよぅ……」
「あら、彼氏さんは慣れたみたいよ?」
「知り合ってから何回もやられれば慣れると思うんだけど……。ナツまだ慣れないのか? それと涼叶よ。何度もいうが彼氏じゃない」
「何で慣れれるのか分かんないよ!?」
「その通りだな」
話の途中で入ってきたコイツは、金持ちで、成績優秀で、さらにイケメンという完璧超人の
「あ、青葉くんおはよ〜」
当の本人は気付いていないようで、普通に挨拶する。
「ああ、おはよう桜井さん」
「で、青葉。何がその通りなんだ?」
全く。……脳筋は話が繋がらないようだ。
ほぼ毎日同じような事を言われているのに、こいつの頭は一日でリセットされるのだろうか。
「何が? 君達は成績優秀だろう? その凡人。……いや、それ以下の奴とは釣り合わ ない。だから、桜井さんとお付き合いをするなど夢のまた夢なのだよ」
「そうかしら? 夢は叶うのよ?」
今日は珍しく涼叶が反撃しているので、便乗することにする。
「そうだそうだー」
「ふんっ……精々頑張りたまえ凡人」
そう言いながら去っていった。……嫌なやつだな!
クラスには少しずつ人が入ってきており十五人が集まっていた。
今日も集まってきたな……。とクラスを眺めていると、急に扉や窓の開いている所が大きな音と同時に閉まった。
「何だ?」
「誰か閉めたか?」
最初は静かだった。その静けさは、外に行こうとしたクラスメイトの一言で壊れた。
「お、おい皆! 教室の扉が開かないぞ!」
そこからクラスはパニックになり、数人が無理やり開けようとしているがビクともしていない。
「こっちも! 窓が開かない!」
「な、何でだよ!」
「おい、皆慌てるな!」
おや? イケメンさんが何か言っているな。
「皆、開けるんじゃない割ればいい!」
お前はマリー何さんだよ。こいつほんとに成績いいのか?
「そ、そうか!ありがとう青葉!」
……いや、お前も試し始めるなよ!
クラスがそんな感じでパニックになっている中で俺達は割れないことは、翔海が真っ先に試して知っていた。
それだけでなく、足元が光っている事にも既に気がついていた。
「ね、ねぇ……。うーちゃんこれ何が起きてるの?」
「分かんないな……だけど」
「だけど……なんだ? 鎌江?」
「いや、有り得ないんだが、ラノベとかの物語みたいに異世界召喚されるんじゃないか? 魔法陣みたいなのあるし……」
「私も氷兎と同じ意見だわ」
「おっと……。皆気を付けろ。もうそろそろ何か来るぞ……!」
光がクラスを照らした瞬間、俺達十五人の存在が世界から消えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……でこの白い空間に来たんだよな。
この白い空間には机が十五個あり、その上に一つ一つパソコンがある。だが、電源が入るのは一つだけだった。
その一つのパソコンの電源を入れて、しばらくすると文字が映し出される。
【異世界へ行きますか? はいorYes】
「両方行くのが決まってんじゃねえか!」
そう、ツッコミを入れた途端文字が化け始めた。お?いいえが出るか?
【異世界へ行きますか?はいorはい】
「増えずに一択かよ!」
【面倒臭いですね。辻都様は笑いながら即決でしたよ? 設定勝手に決めますよ?】
「あのバカ……。何でいつもすぐに決めて……って何で会話できるんだ?」
【私は
「なるほど……キャラ設定みたいなものって言う認識でいいのか?」
きたぞ。超イケメンに設定すれば異世界でケモ耳娘にモテまくりじゃないか!
これぞ異世界転移の醍醐味だ。転生で外見が変わるわけじゃないのが
【はい、なので後一分で決めて!】
「速いな! 選ぶ時間ないだろ! 仕方ない、じゃあ”ランダム”で……」
俺の夢よ……さようなら……。
【はーい決定。じゃあ最後にギフトを送るね】
「ギフト?」
【そう、ギフト。つまり固有能力だね。ある者は魔法をある者は能力を得るんだよ〉
「俺はどんなのなんだ?」
【それはお楽しみだよ〜】
「おい、おしえてくーー」
【いってらっしゃーい!】
「きけぇぇぇぇ!」
そしてまた俺は白い光に包まれた。
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