第139話 デュエル大会準決勝
準決勝を前にマルスに、チーフから個人トークが入ってきた。
今回もチーフは、MCを務めているが、今まで同様、ディーラーのような服と黒ズボンで身を固め、黒子役に徹していた。
制限大会の猫耳は、あれっきり・・・。
「部長、次の準決勝の相手は、前に話したモニターの人です。」
「70超えたお婆さんだっけ?」
「そうです。お手柔らかにお願いします。」
「手加減するのは失礼なんじゃないか?」
「部長の存在が失礼かと。」
「・・・。」
運営スタッフ一同、第3事業部長が公式の大会に出るのは、快く思ってなかった。
プライベートで参加してるから文句は言えないが、βのゲームマスターと同じ名前で、公式の大会に出てれば、誰もがメーカーの人間だと気づくし、運営の回し者と思われるのが非常に迷惑だった。
マルスとしては、殊更に手加減するつもりもなく。
第3シードとの戦いを見ても、手加減して勝てる相手ではないと思ってた。
準決勝、グランマ対マルス。
最初に攻撃したのはグランマ。
薙刀で突いた。
魔法剣士であるマルスは、小型の盾を左手に持っており、それで防いだ。
防いだと同時に呪文を唱える。
盾で顔を隠してる為、呪文を唱えてるのは、グランマにはわからない。
剣に炎を纏わす呪文で、詠唱時間も短い。
炎を纏った剣を見て、グランマは相手が魔法剣士であることがわかった。
「面白いですね。」
グランマは、微笑み、更なる攻撃をしかける。
マルスは、武道をやってるわけではない、単なるゲーマーだが、それでも、グランマの攻撃を上手く盾で裁いていた。
そして、裁きながらも間合いを詰めていく。
「上手いわね。」
観客席のパルコが呟いた。
「間合いを詰めても、おばあ様には、通じませんよ?」
マルスは、間合いを詰めると剣を振るった。
グランマは、薙刀の柄の部分で攻撃を裁いた。
すると、マルスは、グランマの腹部めがけて、前蹴りを放った。
「なっ・・・。」
戦っていれば、不意の前蹴りに気が付かないかもしれないが、観客席にいれば容易にわかる。
クレインは、続けざまに「汚い」と言いたかったが、言葉にはださなかった。
しかし、グランマは、難なくバックステップで蹴りをかわした。
【あれを避ける相手に、手加減しろってか?運営も滅茶苦茶いう。】
もちろん、はなから手加減するつもりもないが。
「なるほど。剣士じゃなくて剣闘士ってところかしら。」
グランマは不敵に笑った。
「クレインちゃんのお祖母さん、ますます生き生きしてきたわね。」
パルコがクレインに言った。
「・・・。」
クレインは、呆れて何も言えなかった。
一進一退の攻防が続き、お互い決め手らしいものがない。
観客は、大いに盛り上がった。
「これじゃあ埒があかない。」
意を決したマルスは、グランマの顔めがけ突きを放った。
軽く薙刀で裁くグランマ。
そこへ間髪いれずに、蹴りを入れる。
さっきと同じようにパックステップで避けるグランマ。
マルスは、短い呪文を唱えた。
バックステップで避けたグランマの足元に土で出来た二本の手が出現し、両足を掴んだ。
土魔法「ハンドタイム」
相手を5秒間拘束する魔法。
「しまった。」
マルスは、一気に間合いを詰め、突きの波状攻撃を放つ。
「お、おばあ様っ!」
観客席のクレインが立ち上がった。
薙刀で、突きを裁くも、全部は裁ききれず、ダメージを負うグランマ。
ダメージによる動きの制限を受けてしまい、更なる攻撃を受けてグランマは、敗北した。
「とても勉強になりました。」
試合後、握手しながらグランマは、マルスに言った。
顔は笑っていたが、その笑いは物凄く怖かった。
「グランマさん、怒ってるのかな?」
観客席のタイマーが隣のクレインに聞いた。
「次は殺しますって顔が言ってますね。」
クレインが答えた。
「てことは、次も出る気なんだ。」
タイマーが言った。
「第4シードが貰えるでしょ?出るんじゃない?」
ローラが言った。
そして、いつもと変わり映えしない決勝戦が始まる。
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