第137話 猫耳殺し

無制限デュエル大会の本選出場者は32名。

そのうち4名がシード選手として、予選が免除されている。

前大会のベスト4に入れば、シード権を獲得できるようになっている。

カラットもマルスも共にシード選手の為、予選には出場していない。


「あら、今日は、ローラさんは?」


鋼の翼の特別席に、タイマーは一人で現れた。


「後で来ると思いますよ。制限大会の時、悪い事したと思ってるんでしょ。多分・・・。」


「まあ、猫耳殺しとか言われちゃあね。」


パルコは、変な通り名に同情した。


「しかし、珍しいメンバーですよね?」


特別席には、端からパルコ、クレインが並んで座り、2席空けて、ヨサクとゲンが座ってた。


「クレインちゃんは出なかったんだね。」


「ええ、おばあ様に言われて・・・。」


「そう言えば、グランマさんは?」


「大会に出てますよ。」


「えっ・・・。」


「今日は、仕方なくおばあ様の応援です。」


「そうなんだ・・・。ゲンさん達は?」


「俺は一応カラットの応援かな。コイツは違うみたいだが。」


そう言って、ゲンは、ヨサクを指さした。


「な、俺だって、カラットの応援に決まってるだろ。」


ヨサクには、何やら別の目的があるようだ。


「なるほど、じゃあ俺は、ヨサクさんの隣に座ればいいですかね?」


「い、いやあ、せっかくだし、クレインさんの隣に座ればいいんじゃないか?」


「・・・。」


「・・・。」


理由は明白だった。

タイマーは、仕方なくクレインの隣に座った。


それから、暫くして、いつも通りの姿をしたローラが会場に入ってきた。

前回の制限大会の時ではないにしても、ざわめきが起こる。

ローラは、特に気にした風もなく、特別席に向かった。


「今回もお世話になります。」


ローラは、パルコに挨拶した。

パルコは軽く会釈で返した。


「あら、クレインさんは出ないの?」


「はい、今回は応援です。」


「ロ、ローラさん。ご、ご無沙汰してます。こ、こちらへどうぞ。」


ガチガチになった、ヨサクが、慣れないエスコトーをした。


「ありがとう、ヨサクさん。」


ローラは、にっこりと微笑んだ。

これだけでも、ヨサクは大会を見に来た甲斐があったと満足した。


ローラは着席すると、パルコに話しかけた。


「前から思ってたんですが、パルコさんはデュエル大会には出ないんですか?」


「私は、見てる方がいいかなあ。」


「パルコさんに戦闘って似合いませんよね?」


タイマーが言った。


「「「・・・。」」」


ローラ、ヨサク、ゲンが絶句した。


「パルコさんの武器があったら、おばあ様にも勝てるかもです!」


クレインが言った。


「デュエル大会って、武器や防具よりプレイヤースキルでしょ?私はスキル多用するから、向いてないと思うんだけど。」


双剣は、コンポスキルが多く、デュエル大会でも出場者は少ない方だった。


「私はいい線行くと思いますけどね。」


ローラが言った。


「あれ?ローラさんって私の戦闘見た事あるの?」


「前は、野良にも顔出されてましたよね?」


「そうね。」


「クレインちゃん、グランマさんはレベルいくつになった?」


タイマーがクレインに聞いた。


「38ですね。武器はR3の武器を使ってます。」


「なるほど。」


グランマは、R6の薙刀を装備したいと思ってはいたが、レベル50には、届かなかった。


「へえ、無制限大会なら、一番レベル低いかもね。まあレベルじゃないんだけど。」


パルコが言った。

しかも、パルコは、クレインよりグランマの方が強いと聞いていたので、大会が面白くなりそうと思っていた。

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