第136話 デュエル大会予選

「勝負ありましたね。」


無制限デュエル大会の申し込み最終日の朝、グランマとクレインは、いつものように朝練をこなしていた。

グランマの3戦全勝で幕を閉じた。

以前の圧勝とは、違って、いい線は行くのだが、肝心かなめの小手落としがグランマが授けた技である上に、実の孫という大ハンデがある。

通常であれば、小手落としから分岐する技は、大きく分けて3つ。

面、胴、突きである。

33%の確率を相手は、読まないといけないわけだが、生まれてからずっと見てきた孫であるから、次の技が手に取るようにわかる。

そう言った意味では、クレインは、大きなハンデを背負ってる訳だが。


「ぐぬぬぬ・・・。やはり私も出場します。」


「クレイン、武士に二言は?」


「あ、ありません・・・。」


こうして、クレインは、今回の無制限デュエル大会の出場を諦めた。



その夜、鋼の翼のギルドルームでは、パルコとミラの二人が、世間話に華を咲かせていた。

お互いリアルでも知り合いになった為、話が弾む弾む。

あの店は安いだとか、あそこがお洒落だとか、女性の会話は、尽きる事がない。

そんな二人の元へ、クレインは顔を出した。


「こんばんわ。」


「いらっしゃい。」


パルコがにっこりと言う。

いつもクレインは、パルコとミラの間に座らされる。

両方から撫で撫でされるのは、慣れっこになっていた。


「実は、パルコさんにお願いがあるんですが?」


「ん?R6の武器を見る?」


「いえ、デュエル大会の事なんですが・・・。」


「今回は、クレインちゃんを応援するわよ?」


「私は、出ない事になりました。」


「そうなの?残念ね。」


「なので、鋼の翼の観客席に入れて欲しいなあと。」


「いいわよ。うちのギルドから、見に行くの私とタイマーさんだけだし。ミラちゃんは、時間的に無理よね?」


「うん。」


「特別席って10名らしいから、大丈夫よ。」


「ありがとうございます。」


「でも、出場しないのに見に行くって事は、カラット君の敵情視察かしら?」


「それもありますが、おばあ様が出るもので・・・。」


「へ?クレインちゃんのおばあ様っていうと、グランマさんだっけ?確か、聖騎士団に入団したとか?」


「はい。」


「無制限デュエル大会に出るの?」


「本人はやる気満々です。」


「始めてそんなに経ってないわよね?」


「ですね。」


「無制限は参加者も多いから、予選突破できるかしら?」


「間違いなく出来ると思います。」


「どれ位強いの?」


「私より強いです。」


「えっ・・・。」


「凄いっ・・・。」


ミラも驚いた。



デュエル大会の本選は土曜日に行われる。

予選は、前の週に行われたりするのだが、無制限は出場者が多いため、平日の夜もとり行われる。

大会を申し込む時に、都合の悪い日が2日ほど指定できるようになっている。

グランマは、チェックせずに提出した。

その為、火曜日組に回された。



予選とはいえ、観客席には、そこそこの人が入っていた。

殆どが身内が多いが、装備を見に来てる人たちも多い。


グランマの初戦の相手は、ネタ装備の人間だった。

「何あれ?」


「槍?」


観客の目は、ネタ装備よりもグランマの武器の方へ釘付けになった。



「お、己、変わった武器使いやがってっ!俺の装備がスルーされてるじゃねえか。」


対戦相手は、怒り、開始と同時に突進するが、一閃された。



結局、その後もグランマは苦も無く、簡単に予選を突破した。

火曜日の予選を観戦した人間の間で、グランマがダークホース的な存在となっていた。


「あの薙刀のおばさん、いい所まで行くんじゃね?」


「そこは、お姉さんと言っとけ!」


「男で年配のキャラ使うの多いけど、女は、見かけないよな?」


「確かにな。」


「中身は、意外と若いかもよ?」


「ありえるな。」


中身はキャラより歳いっているのだが、まあ知らぬが仏ということだろう。

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