第133話 ギルドルームで実釣

釣り堀実装から、2週間後、ヨンペイは最初の川へ向かった。

今は、シマアジ以外が釣り堀で釣れるため、海や川で釣りをする人間は、殆ど居ない。

ましてや、最初の川など。


「師匠、なんで川で釣ってるんですか?」


ヨンペイは、ただ一人、川で糸を垂らしてるタイマーに声を掛けた。


「まあ、色々あって・・・。」


この日も、ギルドルームでの釣り4時間は終了していた。


「ギルドルームでは、釣ってるんですよね?」


「釣ってるよ?」


「それにしては、最長記録ばかり更新されてますが、もしかしてまだ、頑丈な物干し竿を使ってないとか?」


「使ってないけど。」


「やっぱり・・・。」


「あれで何か釣れた?」


タイマーには、自分が人より先に釣ってやろうという欲は皆無だった。


「何も釣れませんよ。今、頑丈な物干し竿を使ってる人間は、少なくなりました。」


「え?なんで?」


「2週間、あれで釣りして、誰1人として当たりすらないんですよ。自分も本当なら投げ出したいくらいですが・・・。」


「あらら・・・。」


「ということで、師匠も頑丈な物干し竿で釣ってもらえませんか?」


「うーん・・・。実は問題があってね。」


「問題?」


「最初の一週間、ずっとギルドルームに籠ってたら、運営からメールがあってね。」


本当は直電だったが、当たり障りが無いようにメールということにした。


「メールですか?」


「今後、一日4時間以上ギルドルームで釣りをしたら、制限をかけるってね。」


「4時間もあれば十分ですよね?」


普通の社会人なら誰もがそう思う。


「俺のせいで制限ついたら、他の人に迷惑かかるだろ?」


「今までも、師匠のせいで制限ついてますが、誰も迷惑こうむってないですよ?」


タイマーの釣りする時間が異常すぎるだけだった。


「・・・。」


「それに2時間経ったら、強制落ちくらいますし、うっかり4時間過ぎる事は、ないと思いますが?」


「そ、そうですね・・・。」


「ということで、師匠、明日からでもお願いできますか?」


最長記録全制覇は、まだ道半ばだった。

そもそも最長記録だけ狙うのなら、もう少し早く進んだのだが、タイマーは、最長記録を更新しても、また同じ魚種を狙った。

自分が、納得するサイズが釣れるまで、ひたすら同じ魚を・・・。


「わ、わかった。明日から頑張るよ。」


タイマーは、渋々了承した。


【最長記録は、川で頑張るか・・・。】


次の日、タイマーは頑丈な物干し竿と金の練り玉を購入しギルドルームに座した。


「さて、どういった物なのかな。」


まずは第一投。

おおざっぱに層を探ろうと試みたが。


「なんだ、これ・・・。」


黄金の練り玉は、あれよあれよと底についてしまった。

どうやら底で釣る物らしい。

仕方なく、タイマーは、テンションを張ったまま、当たりを待った。

竿の感触からして、とても竿あたりが取れるような品物では、なかった。

さすが物干し竿という名前だけある。


そして、


2時間後、強制落ちをくらった。

15分の間、洗濯したり、掃除したり時間を潰す。


再び、ギルドルームへ!

テンションを張らない事には、当たりが取れそうにないので、再び、テンションを張って待った。


待つこと2時間、再び強制落ち。


「うーん・・・。」


最初の一週間で、普通の釣りをしてた事をタイマーは後悔した。


「時間が足りなさすぎる。」


通常、釣り人には大きくわけて2種類のタイプがある。

釣れない場所でも、じっと待つ人と見切りをつけて場所チェンジする人。

どっちがいいというわけでもない。

特に青物系と呼ばれる回遊魚は、魚の方もあちこちに移動しているので、どっちのタイプでも釣れる時は釣れる。

タイマーは、どちらかというと前者のタイプで、待つことは苦ではない。

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