第132話 お楽しみは最後に

聖騎士団のいつもの定例会議で、団長のギルバルトはある提案をした。

そんな大げさな事ではく、ギルドルーム内に釣り堀を実装させようというものだった。


「馬鹿か貴様はっ!」


予想通り、副団長から反対意見が上がった。


「ベル、事前に説明してたはずだが・・・。」


「貴様の読みは、恐らく当たってるだろう。」


「なら・・・。」


「それと聖騎士団のギルドルーム内に釣り堀を実装するのは別の問題だ。」


「連合の方も実装しようかという話もあってだな。」


「向こうはツレルンと手を組んでるんだろ?仮にうちのギルドに釣り堀を作ったとして誰が釣るんだ?」


「・・・。」


「釣りは、釣りギルドの連中に任せておけばいい。」


「じゃあ、ベル。釣り仙人でも口説き落としてくれば、実装してもいいのか?」


「却下だっ!美観を損ねる。」


「・・・。」


結局の所、どうあっても実装は許可しないらしい。


「そもそも、キングヘラクレスだけでも、渋々なのに、これ以上余計な物を実装されてたまるかっ!」


【あれは、お前が貰って来たんだろう。】


とギルバルトは、言いたがったが、火に油を注ぐだけなので、辞めておいた。



各釣りギルドでは、速攻で、釣り堀を実装し、多くの釣り師たちが、釣りにチャレンジした。

釣り堀の大きさは、ギルドルームの大きさに比例してるようで、バラサンの釣り堀は、相当でかかった。



「ということで、パルコさん、是非、うちのギルドルームにも。」


タイマーはパルコに頼み込んだ。


「バラサンで釣らして貰えばいいんじゃないの?」


「あそこの男性陣からは、あんまりよく思われてないんで・・・。」


最大ギルド「バラサン」実に7割強のギルメンが男性だった。


「まあ、どうせ私は隅にしか使ってないんで、いいですけどね。日中だけなんでしょ?」


「うーん、夜も釣るかも?」


「制限かかるんじゃ?」


「ないらしいんだよ。ギルドルーム内は。」


「へー・・・。一つだけ言っときますが。」


「ん?」


「ギルドルームで死なないでくださいね。」


「いや、さすがにそこまでは・・・。」


「どうかしら・・・。」


「・・・。」


鋼の翼でも釣り堀が実装された。



各釣り師が、頑丈な物干し竿と金の練り玉で、躍起になってる頃、

タイマーは、ブラッククリスタルロッドと普通の餌で、釣り堀を満喫した。

釣り堀には、流れや、波といった物が無く、物凄い釣りやすい環境だった。

しかも、常に5層が存在すると言う素敵空間だった。

ただ、層と層の間というものは、存在してないようで、タイマーをもってしてもシマアジを釣る事は不可能だった。


タイマーは一週間、釣りに釣りまくり全種99匹を達成し、称号「釣りキチ」をゲットした。

そして、運営のチーフからの直電を受けた。


「時野さん、いい加減にしてくださいよ。」


「はい?」


「釣り制限つけますよ?」


「そ、それだけは・・・。」


波多運輸サービスのバイトが無い日は、朝も早くからONして、2時間釣る。

15分休憩して、また2時間、それを寝るまで繰り返していた。

昼飯や、夜飯は、15分で簡単に済ませていた。

その楽しい一週間も、チーフからの直電で終わりを告げた。

ギルドルーム内の釣りは、一日4時間と決められてしまった。

もし、破れば、即、制限を付けると。


「ひ、ひどすぎる・・・。」


普通に、考えて一日4時間は、それなりの時間がある。

そもそも、ギルドルーム以外であれば、今まで通り釣れるわけで、普通に働いてる人間であれば、消化できないような時間になる。


タイマーの次の目標は、全種最長記録だった。

頑丈な物干し竿の釣りは、その後のお楽しみにとっておいた。

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