第131話 全種99匹達成

ギルド「連合」の協力の元、ついにヨンペイは98匹のシマアジを釣る事が出来た。

どうにも義理堅いヨンペイは、夜にタイマーと合流した。


「わざわざいいのに。」


タイマーが言う。


「いや、せっかくですし、最後の一匹は川で、しかも師匠と釣りたいと。」


周りには、連合の人間は居ない。

事前に釣る時間は教えてあるし、何かしらの事があるのなら、アナウンスが流れるはずで、アナウンスはゲームにさえONしてれば全員が聞くことができる。

連合は、各攻略組ギルドに情報を流しており、この日、攻略ギルドの主だった人間は、自分のギルドルームで待機していた。

聖騎士団のギルバルト、野武士のシンゲン、黒き戦士たちのガルフと皆、静かにその時を待っていた。


「じゃあ、今日は俺は釣らずに隣で見てるよ。」


「せっかくですし、釣ってくださいよ?」


「いや・・・、日中釣ってるし、夜まで釣ると時間が・・・。」


さすがタイマー、釣り過ぎである。


「わかりました、時間は掛かりますが頑張ります。」


現状のヨンペイの腕では、1時間に1匹といった感じだった。

タイマーは、極力、ヨンペイが層の違いがわかりやすいようにアドバイスした。

しかし、最後にものを言うのは、感覚である。

こればっかりは、慣れるしかない。

そして30分が経過した時、ついにヨンペイは2層と3層の境目を捉えた。

ボタンを押してラインを流し込む。


ガツンっ!


シマアジの強い当たりを捉えた。

最後の1匹とあって、ヨンペイは慎重にやり取りした。


「師匠、デカくないですか、これ?」


やり取りしながら、ヨンペイは聞いた。


「多分、メーターオーバーだろうねえ。」


「メ、メーターっ!!」


ヨンペイの現在のシマアジの記録は68センチ。


緊張しながらもやり取りを続け、15分が経過し、魚が大人しくなった。

釣り上げたシマアジは、見事103センチ。


「で、でかっ!」


メーターオーバーに喜ぶヨンペイ。


「おめでとう。」


心から祝福するタイマー。



そして、ゲーム内にアナウンスが流れだした。



「ただいま、釣りにおいて、全種99匹が達成されました。」



「まじかっ!」


「やっとアレがっ!」


「門が開くぞ~っ!」


「おいっ、誰か門の所へ一緒に!」


「門が~。」


ONしていた連中が、あちらこちらで騒ぎ出す。


ギルドルームに黙して待機してる攻略組の面々は、黙ったままだった。



「今回、達成された方には、称号「釣りキチ」が授与されます。尚、この称号は、ユニーク称号ではありません。」



「やはりな。」


聖騎士団のギルドルームで、ギルバルトが一人つぶやいた。


「そうきたか。」


黒き戦士たちのガルフが。


「どういうこと?」


連合のギルドルームで、副GMのスザンナが他の副GM達に聞いた。


「もし、閉ざされた門が開くのなら、称号はユニークのはずだよ。」


同じく副GMのエイトが答えた。



「つきましては、全種99匹達成の記念として、ギルドルームに釣り堀の実装が可能となります。NPCの家具屋にて販売してますので、どうぞ釣りを満喫してください。ギルドルーム内での釣りは、制限時間は、ありませんので、ご安心ください。」



「ま、マジかっ!!!」


VFGXにONしてる人間の中で、タイマーだけか歓喜の声を上げた。


「し、師匠、落ち着いて・・・。」



「道具屋にて、ギルドルーム用の竿と餌の販売も始まりましたので、そちらも併せてご利用ください。」


こうして、アナウンスは終わった。



「なるほど。」


ギルバルトは、全てを理解した。


最初の川は、最初の村にある。

だから、道具屋も直ぐ近くに。

タイマーとヨンペイは、直ぐに確認に行った。



頑丈な物干し竿


どんな大物が来ても折れません。

注意:ギルドルーム専用の竿です。



金の練り玉


こんなのにくいつく魚がいるのだろうか?

むしろ、人が飛びついてきそうだ。

注意:ギルドルーム専用の餌です。



価格は、共に2万ゴールドだった。


「え、餌が2万・・・。」


タイマーが唖然とした。


「こっちが本命のようですね。」


「本命?」


「閉ざされた門を開ける条件ですよ。」


「へえ~。」


タイマーは特に興味がなかった。

それよりも、この竿と餌で何が釣れるのか、ワクワクして胸が一杯になった。

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