第128話 陰鬱な森

夜になって、グランマは相談するめぼしい相手が見つからず、1人、陰鬱な森へと向かった。

デスペナルティで何かが無くなる訳でもなく、グランマにとって死んで、困るような事は無かった。

一応、警戒して、入口付近の敵だけ戦う事にした。

どうも、この陰鬱な森からは、ただならぬ気配を感じたからだ。


最初の敵は、蜂系が一匹と弱そうな虫が一匹。

まずは、弱そうな虫を一撃で粉砕し、蜂系の敵の攻撃に備えた。

確かに、今までの敵とは比べ物にならない程、早かった。

蜂系の2連続攻撃を、薙刀で難なくいなす。

すると蜂系は、毒針攻撃を使ってきた。

しかし、その一瞬の間が命取りに。

ほんのわずか、空中に止まったように感じたグランマは、一撃で、蜂を粉砕した。


「なるほど、入口付近の敵なら、攻撃がまともに入れば一撃で倒せるのね。」


しかし、グランマがこれで調子に乗る事はなかった。

あくまでも、入口付近の敵だけに専念した。

この辺が、クレインと違う所である。


「おい見たか?入口付近のソロの人。」


「何の武器だ、あれ?槍?」


「何か変わった槍だったよな。」


「しかし、ソロでよくうろつくよな。」


「装備もそんなにランク高そうじゃなかったし。」


「そのうち死ぬんじゃね?」


「結構、綺麗な人だったよな?」


「いやいやいや、30~40くらいのキャラだったべ?」


「いいじゃねえかっ!」


「お、おまっ・・・熟女好きだったのか・・・。」


陰鬱な森をパーティーで散策してる連中が、グランマの噂をしていた。

パーティトークではなかったので、周りに居た人も話は聞こえていた。


たまたま通りかかったソロの人間の耳にも入った。

少し、心配になって、その男は、入口付近へと行ってみた。

すると、入口付近では、薙刀を持って、華麗に立ち回る女性が居た。

ソロで、敵に当たるとモンスは1~2匹。

入口付近では、蜂系が2匹出る事は、あまりない。

もちろんスズメ系も出ない。

が、たまたま男が見かけたのは、運悪く蜂系2匹だった。

すぐさま応援に入ろうと思っていたが、華麗な薙刀さばきに目を奪われ、動きを止めてしまった。

グランマは、難なく蜂系2匹を撃破した。


「こんばんわ。」


男はグランマに声を掛けた。


「こんばんわ。」


「初めましてヒロシと言います。」


「どうも、グランマです。素敵な帽子ですね。まるで探検家みたい。」


「ああ、探検家なんですよ。俺。」


「あらっ、そんな職業もあるのね。」


「グランマさんは、ここの森は初めてですか?」


「ええ、速い敵がいるというんで、来てみました。」


ヒロシは、グランマのステータスを確認してみた。

通常ステータスは、デフォルト設定では公開になっている。

非公開に変える事も可能だ。


「あれ、グランマさんは、聖騎士団の人なんですか?」


「ええ、知ってますか?」


「はい、いつもギルバルトさんや、ベルラインさんにはお世話になってます。」


「そうなんですか?」


「はい。もしよかったら、陰鬱な森について説明しましょうか?」


「それは、嬉しい申し出ですが、ヒロシさんの方は用事はないんですか?」


「特にないです。ちょっと陰鬱な森を散策してただけなんで。」


「一人でなんて、凄いわ。」


「とりあえず、説明するのにいい場所があるんで、移動しましょうか。」


そう言って、二人は、虫の洞窟の前に移動した。



虫の洞窟の前には、16種類の虫の標本がある。

ヒロシは、それを使って一匹一匹、グランマに説明していった。

途中、全然知らない人間から話しかけられた。


「すみません、インセクトドクターさんですよね?よかったら、オープントークで説明してくれませんか?」


ヒロシが、当たりを見渡すと、20人以上の人だかりが出来ていた。


「わ、わかりました・・・。」


ヒロシは、他の人にも聞こえるように、虫の特性や動きを丁寧に説明していった。

最後まで説明終わるころには、100人近い人が集まっていた。


「インセクトドクターが虫の説明してるぞっ」


と人が人を呼んだ結果が、この大人数となってしまったわけだが。


「このスタースズメ、マスタースズメ、ブラックスズメを気を付ければいいのね?」


「はい、先ほど説明した動きを理解してれば、グランマさんならきっと倒せると思います。」


「なるほど。丁寧にありがとうございました。」


「いえいえ。また何かあったら連絡ください。」


そう言って、二人は名刺交換をした。

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