第107話 流し受け

4人PTのレベル上げは、ベルラインが敵を引き付け、グランマが敵を殲滅、ミルミルが回復待機という役割で、元々メンバーに入っていなかったカルディナには、出番が無かった。

ついでにいえば、ミルミルの出番も殆どない。


「凄いのね薙刀って、綺麗。」


ミルミルがグランマの戦闘を見ながら言った。


「なんで薙刀使う人居ないのかしら?」


ミルミルは、ふと疑問に思った。

マイノリティと言えども、皆無というのは通常ありえない。


「良く見てみなさいよ。あれで他のアタッカーは、どう立ち回るのよ。」


カルディナが的確に答えた。

このゲームは、味方に攻撃は出来ないが、味方の攻撃は当たる。

つまり、薙刀の振り回しの攻撃が範囲攻撃として判定されている。

範囲攻撃は、味方であっても、ダメージを受ける。

同じ槍術師の槍にも、振り回しがあるが。


「槍は突いてろ。」


「槍ぶん回し厨は、来るな!」


等、槍でさえ肩身が狭いのが現状だ。


そもそも日本で、薙刀が廃れた理由は、槍の登場だった。

集団で使えて、突きに特化してる為、槍一択となってしまった。


「槍と同じですね・・・。」


「それで突きをするなら、槍の方がいいでしょ。」


「なるほど・・・。」


ミルミルは、グランマに視線が集中していたが、カルディナは、そうではなかった。

ずっと、ベルラインに視線を集中させていた。

いつもの邪な視線と違って・・・。


「どうしたの、カルディナさん?ベルラインさんが気になるの?」


グランマが声を掛けた。


「いや、あの、私の盾と何が違うのかなあと・・・。」


「同じ盾だろ。」


ベルラインが答える。


「でも、私とベル様じゃあ受けるダメージも違うし。」


「盾の受け方の問題でしょう。」


グランマが答えた。


「受け方ですか?」


「ええ、ベルラインさんの受け方は、流しだわ。ベルラインさんは、合気道でもやってるの?」


「いえ、そういったものは、何も。」


「そう、なら自然と身についたのね。大したものだわ。」


「どういった方法なんですか?」


「攻撃を受けたと同時に、力を少し流すのよ。とても真似できるものじゃないわ。特にカルディナさん、あなたには向いてないわ。」


「・・・。」


「まあ、私のせいだけどね。あなたには基本動作の足さばきと型を徹底的に教えこんでるでしょ。流し受けには向いてないわ。」


「盾に向いてないと?」


「盾と言っても、流し受けだけじゃないでしょ?少なくとも私が見た限りでは、団長さんは、普通の受けだったわ。」


「はあ・・・。あのベル様は、以前3体同時攻撃を受けたことが、あるんですが、それも流し受けなんですか?」


カルディナは、3匹の豚と戦った時の話を持ち出した。


「あれは、時間差を作っただけだ。1体目を盾を出して早く受けて、2体目を普通で受け、3体目は、引いて受ける。」


「押し受けね。一歩間違えれば大ダメージだけど。ピンポイントをずらせば、流し受け同様、有効な技よ。ベルラインさんは、押し受けも出来るのね。」


「あれは、あまり得意ではありませんが、何とか。」


「そうね、カルディナさんには押し受けが似合ってるかもね。」


「本当ですか?ベル様、是非、私に教えてください。」


「得意ではないといったろ。押し受けが得意な奴なら、貴様の知り合いにいるだろう。」


「・ ・ ・ ん?」


完全に首を傾げるカルディナ。


「もしかして、双璧のもう一人ですか?」


ミルミルが言った。


「あいつは、押して受ける派だからな。」


ベルラインが答えた。


「ガ、ガルフ・・・。」


カルディナは、知り合いの名前を口にした。


「押し受けの得意な人がいるのね。是非教えて貰うといいわ。」


「は、はあ・・・。」


その後の戦闘で、カルディナは、ベルラインの上半身でなく足さばきに注目した。

上半身の動きは、これまでも真似したことがあったが、足さばきは、気にしていなかった。

そうして、わかったことは、自分の足さばきとは明らかに違うという事。


【あれを今から習得は、無理だろうなあ・・・。】


【まったくあいつは何もせずにっ】


何もせず、ただ自分の方を見ているカルディナに対してベルラインは、そう思った。

そして、次の敵の攻撃に対し、盾を突きだした。

敵の攻撃が振り下ろされ、力が乗る前に盾をぶつけた。

ベルラインは、得意ではないと言ったが、レベル上げの雑魚程度には、簡単にする事が出来る。


「今のが、押し受け・・・。」


ベルラインは、カルディナにも判りやすいように、大げさに動作していた。

なんだかんだいいながら、甘いベルライン。


戦闘終了後、グランマは、ベルラインを褒めた。


「本当にベルラインさんは、素晴らしいわ。」


そして、つい、頭を撫で撫でしてしまった。

まあ年寄りには、よくあることで。


「えっ、グ、グランマさん・・・。」


ベルラインは、赤くなって照れてしまった。





【次回予告】

「私とんでもない事してしまった・・・。」

「貴様には、心底あきれた。」

「本気で、ベル様を怒らせてしまった・・・。」

「私、引退するわ・・・。」


はたしてカルディナが犯した罪とは・・・。

次回、「最後の・・・。」

全然、違う話になったら御免なさい。

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