第102話 釣りスキルとは

釣りスキルレベルは、マックスが99となっている。

しかし、他のスキルと違って、何もない。

あの探検家のスキル、採集でさえ振りつづけてると標本が可能になる。

当初、開発段階では、釣り師という職業が設定されていた。

が、VR機の釣りゲームというのは、他にも多く存在しており、VFGXでわざわざやる必要もないだろうという事で、職業は削除された。


VR機には、様々な規制が存在する。

一番、有名なのは、三大欲求に対する規制だ。

食欲、性欲、睡眠欲。

なかでも性欲は、はるか昔から、様々な物を発展させてきた。

家庭用ビデオデッキや、パソコンが光の速さで、普及したのは、まさに性欲のお蔭と言っても過言ではない。


家庭用ゲーム機の創世記に存在した、有名ゲームメーカーも元はエロゲーを作っていた会社だ。

性欲に関しては、VR機の創世記時代に様々な事件が起きた為、禁止された。

VR機の創世記時代はエロゲーメーカーがこぞって開発に着手していたが、世界中で禁止された為、潰れていった。


中には、タウントカンパニーのように潰れるエロゲーメーカーを買い取った会社もある。

食欲や睡眠欲に関するものも世界中で禁止されている。

食欲は、拒食症の人間を助長する危険性がある上に、VR機が無かった時代でさえゲームにのめり込み餓死する人間も居たくらいなので、仕方ないと言えば、仕方ないだろう。


一番の問題は、睡眠欲。

不眠症の人にとっては、眠れるということで開発当初は、期待されていた。

しかし、VR機で一番問題になっていたことが、不幸にも結びついてしまった。

それは、洗脳である。

VR機の開発が始まった当初、多くの一般人が洗脳できるんでは?と疑った。

多くの開発者が否定していたが、睡眠の研究していたグループが簡単に立証してしまったのだ。

その研究成果は、瞬く間に世界中に発表され、VR機=洗脳というイメージを植え付けてしまった。

そのお蔭というわけでもないが、VR機の闇風俗は、殆ど存在していない。

皆、洗脳が怖いからだ。


現在、世界中の国では、三大欲求に関するVR機の開発は禁止されている。

一部の国連非加盟国では、未だに開発を進めている国もあるが・・・。


さて、話は戻って釣りスキルであるが、結論から言えば無意味である。

釣りは、スキルが無くても出来るし、ロッドの装備も制限はない。

釣りのクエストは、あるが、ロッドと餌が貰え、釣りスキルが獲得出来るようになるだけだ。

釣りギルドの人間でも、最初は覚えていたが、意味がないとわかった後は、スキルスロット確保の為、消している人間も多い。

まあ、タイマーの場合は、スキルは1つしかないから何の問題もないが。


「そう言えば時野さんは、釣りスキルがマックスなの?」


千勢が聞いた。


「ええ。99になってます。」


「それは、凄いわね。」


現在、薙刀のスキルに少しずつ振っている千勢は、その凄さにビックリした。


「釣りスキルは、スキル値は振る必要はないですよ。」


「そうなの?」


「釣りをしてたら、勝手に上がっていきます。」


「技とかそういったものは、ないのかしら?」


「まったくないですね。」


釣りの職業が削除されたことで、釣りをどういう風に扱うかが会社で議論された時、社内の釣り好きな馬鹿、いわゆる釣り馬鹿全員が言った。


「釣りは技術だっ!マンガのような技は要らねえっ!」


と・・・。


そう言った理由で、超マニアックな釣り=プレイヤースキルが絶対の釣りになってしまった訳だが、それが他の釣りゲームと違って、うけている理由の一つにもなっている。


「私も今度釣りをしてみようかしら?」


「千勢さんは、釣りをしたことはありますか?」


「いえ、主人の釣りについて行った事はありますが、釣りをした事はないわ。」


「じゃあ、是非、自分がお教えしましょう。」


「ありがとう。スキルはいるのかしら?」


千勢には、まだスキルスロットに余裕があった。


「いえ、必要ないです。」


「そういうものなの?」


「ええ、釣りスキルは、あってもなくてもいいんですよ。」


「じゃあ今度、教えてくださいね。」


「はい。」


そうして、二人は、以前約束したフォンデに到着した。

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