第78話 女の戦い

31名の女性が、円状になったテーブルに着席していた。


「本日はサポート協議会にお集まり頂きありがとうございます。さっそくですが、今日の議題について。」


ターヤは、一気に本題に入ろうとしたのだが。


「お待ちいただけますか?会長。」


議会がざわつく。

ターヤとルビアは、同じベルサラで、一枚岩だと認識されてるからだ。


「本題に入る前に、ひとつ取り上げて頂きたい人物がいるのですが?」


「それは、このサポート協議会で取り上げなければならないような人物なのですか?」


「皆さんにも聞いて頂きたいのですが、あの聖騎士団にガチの女性がいるのをご存知ですか?」

ルビアが全員に問う。


「えっ・・・。ベル様のギルドにっ・・・。」


「危険じゃない?」


「というか、そういう女性が入ったって事?」


「普通なら、ギルドに入れないんじゃ?」


【なるほどな。協議会まで何のアクションも起こしてこなかったのは、

カルディナの事を調べていたのか・・・。】

ベルラインは思った。


「ベル様、本当にそのような方が聖騎士団にいるんですか?」


「ベルさん。」

何人かが、ベルラインに聞いてくる。


「確かに、当ギルドには、ガチなのが一人いるが、それが何か?」


「危険です!きっとベルさんを狙ってますよ。」


「そうに違いないです。」


「どうして、そのような輩を・・・。」


「総受けは何考えてるのっ!」


「総受けだから、受け入れたんじゃない?」


「「「・・・。」」」


パルコが、茶化すように言うと、議会全体が静まった。


「聞くところによると、ベルさんの次に古株のようですね?」

ルビアが、ベルラインに聞いた。


「そうだ。」


「えっ・・・。そんな人居たっけ?」


「聖騎士団の女性は全員知ってるつもりだったけど・・・。」


「隠してられたんですか?」

ルビアが更に突っ込んで聞いた。


「いや、そんなつもりはない。なるべく関わらせない様にしてただけだ。」


「その様な危険人物が、同盟ギルドに居るのは、大変不安なんですが?」


「私のギルドの問題だ。同盟ギルドと言えど、ギルド内の事は干渉しないで頂きたい。」


ベルラインは、強く発言した。

ベルサラの人間であれば、ベルラインに強く言われれば引き下がるだろう。

しかし、ルビアというか、眠れる教会のギルメンは、サーラント至上主義のベルサラである。

サーラントに害が及ぶかもしれないのであれば、例えベルラインが相手でも引くことはない。


「そうは、参りません。同盟ギルドとして、相手のメンバーを把握しておくのは、当然でしょう?他の人にも知っておいてもらいたいと思いますので、あえて名前を出させて頂きます。聖騎士団のカルディナさんは、私が同盟ギルドで、唯一知らなかった人間です。ギルド発足当時からの同盟ギルドですのに、大変心外なんですが?」


「へえ、となるとルビアさんは、うちのギルメンも把握してるんでしょうね?」

パルコが挑発するように言った。


「当然でしょう?鋼の翼さんは、人数も少ないですし、全員把握してます。」


「そう?全員と会った事あるのかしら?」


「もちろんです。」

パルコは、ニヤっと笑った。


「実は、うちにも問題児が居て、とてもじゃないけど教会なんかには、紹介できない人物なんだけどね。」


「そんな人は、鋼の翼には居ないでしょ?」


「いっとくけど、教会になんか行った日には、ギルドが内部崩壊するわよ?」


「大げさな。」


「そう?釣り仙人って通り名だけど、最近は、伯爵とも呼ばれてる人物だけど?」


「「「は、伯爵っ!!!」」」

この時、協議会の全員が思い出した。そういやあの人、鋼の翼じゃんっと。



伝説は語り継がれる。

たった一夜にして成し遂げた前人未到の足跡。

VFGX人気ナンバーワンの女性を華麗にエスコートしたと思えば、華麗に空を舞い一人の少女をお姫様抱っこして攫って行った所業。



「伯爵なら、教会を崩壊させそうじゃない?」


「だって、女ならあんなエスコートされたいって思わない?」


「お姫様抱っこなんて、女の夢よね?」


ざわつく協議会。

ルビア自身も、戸惑った。

あのPVを見た時、あんなエスコートされてみたいと思ってしまったからだ。


「だ、男性と女性では、身構えが違いますっ!」

なんとか反論するルビア。


「でも、皆、知ったでしょ?カルディナさんを?」


「う・・・。」

知っていれば対処は出来る。


「ルビアさん、私も最近知ったのだけど、うちのGM(バカ)がゲストキーを渡しててね。ギルメンもガチと知ってるから、対処は可能よ。」

ターヤが言う。


「ですが・・・、うちのギルメンが誰一人知らなかったというのが問題なんです!」


「実は、ここにカルディナさんについてのメールを頂いてます。」


「メールですか?」


「そうね。嘆願書みたいなものかしら。カルディナは、腐った奴で、男には口も悪い、でも根は悪い奴ではないので、穏便に済ませて欲しいと。」


「そんなものが何です?どうせ、聖騎士団か、野武士の人間のものでしょ?」


「眠れぬ教会のビショップさんからです。」


「なっ!!!」


「どうですか?皆さん。聖騎士団のカルディナさんは、ガチのようですが、知っていれば対応は可能でしょう?」


「問題ありません。」


「まあ、ガチなんて女子高行けば一人は居ますし。」


「女性が多いとこは、たまに居ますよね。」

特に問題とするような人は、誰も居なかった。


「もし、対応に困ったら、私かベルさんに申し付け下さい。ベルさんは、それで構いませんよね?」


「ああ、構わない。」


【完全にやられた。】

ルビアは、敗北を確信した。


【明らかに誘導された?でも誰が?そもそも、面倒くさがりの狂乱が今日に限って何故あんなに発言を?ターヤさんが?いや、ターヤさんは中立のはず。

ベルさんがこんな手の込んだことをするわけないし・・・。一体、誰が・・・。】


ルビアは、考えた、一体裏で、糸を引いていたのは誰かと。

そうして、一人の男の顔が浮かんできた。


【おのれっ!総受けめっ!!】

ルビアの中でどす黒い炎が燃え盛る。


【絶対に、許さんぞっ!!】

後日、ギルバルトが、こっぴどく苦情を言われたのは、特にどうでもいい話である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る