第67話 【ゲーム過去編】新しいのが欲しい
「あのう、この刀じゃあ、もの足りないんですけど?」
クレインは、カルディナに聞いた。
「まあそれ、初期装備だからね。」
「そろそろ新しい武器が欲しいです。」
「レベルいくつになった?」
「12です。」
「ランク2の武器は装備できるね。じゃあさ、お姉様、何でもしますから買ってくださいって言ってみて?」
「へー。」
クレインは、呆れてスカした返事をしただけだった。
カルディナは、アイアンクローが来るかと思い身構えていたが。
「あれ?アイアンクローしないの?」
「ゲームじゃあ痛くないでしょ?」
「ええ、痛くないわね。」
「だから、明日、リアルでまとめてやります。」
「ま、まとめてって何??何回もされるの??」
「明日のお楽しみってことで、えへへ。」
「いや、全然楽しみじゃないし、そこ笑う所でもないでしょっ?」
「アイアンクローは明日に置いといて、カルディナの武器は、私のと何か違いますね。お店屋さんに売ってないような武器です。」
「お願いだから、リアルでするくらいなら、今してよ・・・。私の武器は、人が作った物だからね。NPCのお店には売ってないわ。」
「おおー、私も人が作った物が欲しいです。」
「この流れからすると、私が作る人探して、お金払って作って貰うでしょ?」
「そうなりますね。」
「で、アイアンクローをリアルでされるわけ??」
「それはそれ、あれはあれですから。」
「納得がいきませんが・・・。」
「で、作れる人知ってるんですか?」
「・・・。刀なんて作れる人知りませんが・・・。」
「むううう。」
「ランク2なら、店売りのでいいと思うんだけど?」
「人が作った物がいいです。」
「まあいいか。ちょっと聞いてみるね。」
「作れる人ですか?」
「いや、こういうことはね、使えるNPCに聞けばいいのよ。」
「おおー、そんなNPCが居るんですね。」
「ちょっと聞いてみるから待ってね。」
「はい。」
「ランク2の日本刀作れる人居ない?」
藪から棒に個人トークで、要件を言った。
「お前は、挨拶という物を知らんのか?」
「そんなのどうでもいいから。」
ギルバルトは反論しようとしたが、時間の無駄なんで辞めた。
「シンゲンに聞いてみる。」
「よろしこ~。」
暫くして、野武士の人間が来てくれる事になった。
「待たせたな。」
態々、野武士のGMが来てくれた。
「そんなのいいから、ランク2の日本刀は?」
せっつくカルディナ。
「すみません。初めましてクレインといいます。この人のことは気にしないでください。」
「初めまして、シンゲンです。」
いつもの如く、端的に答えるシンゲン。
「私のリアカノだからね。先に言っとくけど。」
シンゲンに念を押すカルディナ。
「カルディナ、アイアンクロー3回ね。」
「3回っ!!! 2回じゃないの??」
「君は武士を目指してるのか?」
シンゲンがクレインに聞いた。
「はい、日本刀が好きなんです。」
「なるほど。初心者用に何本かストックがあるので、一本持ってきた。君にあげるので、好きに使ってくれ。」
そう言って、ランク2の日本刀をクレインにトレードで渡した。
「いいんですか?お金ならカルディナが払いますよ?」
「構わない。」
クレインは、さっそく装備して、日本刀をキラキラした瞳で、見つめた。
傍から見ると危ない人に見えてしまう。
さらに鎧武者で、身を固めているから、むしろモンスター扱いされそうな雰囲気だ。
「いい物ってのがわかります。大事に使わせて頂きますね。」
「喜んで貰えて何より。カルディナの知り合いにしては、まともな人で安心した。」
「ゆってくれるわね、使えるNPCナンバー2の分際で。」
相も変わらず、知り合いの男には、ボロクソ言うカルディナ。
「カルディナ、さっきの使えるNPCって、人だったんですか?」
「ああ、うちのギルドマスターだから気にしないでいいわ。」
「いつか、その人にも謝らないと・・・。」
「クレイン、もしよかったら名刺交換しないか?」
シンゲンが申し出た。
「ちょっと、ふざけないでっ!」
カルディナが激おこプンプン丸になった。
「それをするとどうなるんです?」
「いつでも気軽に、個人トークができるから、わからない事とかあったら、教える事が出来る。」
「それは便利ですね。最初にカルディナとやったんで、やり方は、覚えました。」
「じゃあよろしく。」
シンゲンが、名刺交換を申し込んだので、クレインは、あっさりとyesのボタンを押した。
「このクソナンパ野郎っ!速攻で消しなさいっ!」
「何かあったら聞いてくるといい。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
二人ともカルディナを無視して話を勧めた。
シンゲンが去り、二人きりになった後、カルディナは徹底的にクレインに忠告した。
「いい、名刺交換は男としちゃあ駄目よ!」
「何故ですか?」
「あんたアホなの?ゲームの中にもストーカーや危ない奴は、一杯いるのよっ!」
「既に目の前に居ますが・・・。」
「私は同じ女性だからいいのよっ!」
「シンゲンさんはいい人のように見受けました。」
「わかんないでしょ?ゲームなんだからっ!」
「でも使えるNPCナンバー2なんでしょ?」
「それが?」
「だったらいい人です。」
「・・・。」
「それに、どんな人でも一度手合せしたら判って貰えますよ。」
カルディナは、体験で戦った事を思い出し、身震いがした。
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