第66話 【リアル過去編】はじめてのおつかい
千鶴はキャラ作成の前から決めていた。
リアルと同じ身長でやろうと。
体験中に思った事だが、リアルより高い身長の為、間合いも広かった。
あれに慣れてしまうと、リアルの剣道に影響が出てくるのではと、懸念したからでる。
名前を考えるのも面倒だったので、自分の名前から一文字取って、英語に変えた。
カルディナのように、私、カルミナだから、なんとなくカルディナって、いい加減な決め方よりはいいかなと、自分に納得した。
最初のログインポイントは、最初の村である。
開発スタッフというか、開発室長が、ジャパンRPGが大嫌いなので、最初に何かをしなければならない事が無い。
最初から自由な世界。
ゲーム慣れしてる連中なら、何かを見つけてきて、進んで行くものだが、
千鶴は、ゲームを殆どやったことが無い。
「遅いっ!」
大きな盾を持った騎士が声を掛けてきた。
「えーと、み・・・じゃなかった、カルディナ?」
「キャラ作成とか説明してあげたのに、どんだけ時間掛かってるのよ。」
「こういったものは、よくわからないので・・・。」
「まあ、いいわ、とりあえず装備買いましょ。裸じゃあ防御力ないし。」
「えっ?」
千鶴は自分の格好を改めて再確認した。
「なっ・・・下着じゃないですかっ!!!」
「水着みたいなもんよ。ゲームだし気にしなくてもいいわよ。」
「気にしますよっ!」
「周りを見てみなさい。殆どクレインと同じ格好でしょ?」
「ほ、本当だ・・・カルディナの方が浮いてますね。」
「最初の地点だし、そんなもんよ。とりあえずお金渡すから、最初の防具屋で、適当なもの選んで買って来て。」
そう言って、カルディナは、お金をクレインに渡した。
最初の防具屋は、Lv1から装備できるものしかなく、品揃えは大してない。
それでも、裸よりはマシという感じである。
「お待たせしました。」
クレインは、頭は兜、体は、鎧と武士の装備を身に着けていた。
「ちょっ、あんたよりにもよって、それ選ぶかっ!」
「格好いいでしょ。」
目をキラキラしながら言ってくる千鶴。
「お金は余分に渡してるんだから、もっと可愛いのに変えてきなさい。」
「これ以上に可愛くてかっこいい物はありません。」
こうなったら、クレインは後に引くことはない。
「も・・・もういいわ。最初はレベル上げと行きたいとこだけど、あんた全然ゲームの事知らないでしょ?」
「まったく。」
「とりあえず、簡単なクエストやってみましょう。」
「クエストですか?そんな事より対戦しませんか?」
「お断りですっ!」
「えー。」
二人は、パーティーを組んで最初の村の一軒の家に入った。
狭い家なのに中には、大量の人が居た。
「なんですかこれ?大量の人が、これじゃあ動けませんよ?」
「試しに他の人に触ってみて。」
「えー・・・」
その時、他のプレイヤーが、クレインに突っ込んできた。
「えっ。」
するとそのプレイヤーはクレインをすり抜けて行った。
「基本的に、パーティ組んでたり、ギルドルームに居たりしなけりゃ、他のプレイヤーと接触する事はないわ。NPCも接触できないから。」
「NPC?」
「プレイヤーじゃないキャラクターね。あそこに人に囲まれてる、おばさんが居るでしょ?あれに適当に話しかけて。」
「はー。」
クレインは、他プレイヤーをすり抜けて行って、NPCに話しかけた。
「あら、あんた、もし暇だったら、これを村長さんの家に持ってって、くれない?」
基本的にNPCの会話は、勝手にパーティートーク扱いになる。
NPCの声は、パーティーを組んでいる人間にしか聞こえない。
大量に人が居ても、それぞれのパーティートークで会話するようになるので混乱する事はない。
「村長さんの家ってどこにあるんです?」
「この家でて、2軒どなりかな。」
カルディナが答えた。
「ちかっ!あなたは何で、自分で行かないんですか?」
クレインがNPCに再度話しかけるもNPCは何も言わない。
クレインの眼前には、ウィンドウが開いており、yesかnoを選ぶように表示されていた。
「このおばさん何もいいませんよ?」
「NPCだもの・・・。ウィンドウ開いてない?yes選んで、クエスト始めましょう。」
クレインは、仕方なしにyesに指で触れた。
「助かるよ。食材だからね。なるべく早く持ってっておくれ。」
「急ぎなら自分で行ったらどうです?」
クレインの再度の問いにもNPCは答えない。
「さあ、村長の所へ行くわよ。」
クレインは、完全には納得はしてないが、カルディナの指示に従った。
「おおー、ちょうど待っておったぞ。」
村長の家に行くと、初対面なのに待ち伏せされていた。
「これが無いと、晩飯が始まらんからな。これは、少ないがお礼じゃ。とっておいてくれ。」
回復薬と微々たる経験値が貰えた。
「これでクエストとやらは、終わりですか?」
千鶴は、カルディナに聞いたつもりだったのだが、NPCが反応した。
「おおー、あんたか実は困ったことになっておっての。村の周りで、ラットが繁殖しておってな、すまんが10匹ばかり狩ってきてくれんか?」
「・・・。」
「ちょうどいいわ、それもやりましょ。」
千鶴は何も言わず、ウィンドウ画面のyesを押した。
「こういうことをやるゲームなんですか?」
「RPGってのは、こういうことをチマチマやるゲームよ。」
「・・・。」
「まあ別にやんなくてもいいんだけどね。」
「む、じゃあやらなくても・・・。」
「ラットは最初の敵だし、レベル上げにもなるから、ちょうどいいのよね。」
二人は、さくっとラットを10匹狩って、村長の所へ報告に行った。
今回も回復薬と微々たる経験値が貰えた。
「それじゃあ、今日はここまでかな?」
「え?」
「あのね、このゲームは連続ON時間が2時間なのよ?休憩15分取らないと再ONは、出来ないわ。」
「私は、まだ2時間たってませんが?」
「誰が、私を待たせてたんだっけ?」
「そ、そうでした・・・。」
「クレインは、まだ初心者だから、後は明日にしましょ。」
「わかりました。」
それから、ある程度、独り立ちするまで、カルディナは付きっきりで、お手伝いをした。
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