第68話 【ゲーム過去編】剣の道
「今日は、お邪魔してしまって、すみません。」
クレインは畏まって挨拶をした。
「男所帯で殺伐としてるがゆっくりしていってくれ。」
野武士のギルドルームで、シンゲンが言った。
「しかし、よかったのか?カルディナとの約束はないのか?」
シンゲンが聞いた。
「リアル事情で、暫くON出来ないようなので、構いません。」
「そうか。」
野武士のギルメンは、戸惑っていた。
本来なら、女性キャラが訪ねてきたら、ソワソワとするものだが。
鎧武者で固めたクレインは、見た目だけでは性別は区別できにくい。
声が女性ボイスを使用しているから、女性なんだろうと思える位だ。
しかも、あのカルディナの知り合いという事なら、むしろ関わりたくないと思うのはしょうがなかった。
「あのう、聖騎士団のカルディアさんの知り合いと聞いてるんですが?」
ギルメンの一人が聞いた。
「すみません。いつもご迷惑かけてるみたいで。」
カルディナの名前が出たので、幼馴染としてとりあえず謝った。
「「「おおーっ、常識的な人だ。」」」
安心するギルメン一同。
「クレイン、予定が無いのならレベル上げでも付き合うが?」
シンゲンが提案した。
「ここ最近、レベル上げや、クエストで辟易としてまして・・・。良かったら、誰か対戦して貰えませんか?」
クレインは、レベル上げで倒す雑魚戦に、飽きていた。
後に、陰鬱な森の速い敵に魅了され、狂ったように突き進みだすのは、まだ先の事になる。
「対戦?デュエルか。ふむ、うちのギルドは攻略ギルドとは言え、レベルも装備もクレインとは、随分と差があり過ぎるのだが。」
「まだ、手ごたえのある敵にも当たったことなくて。遠慮は要らないんで、誰か私を倒してみてくれませんか?」
「そうだな、とりあえず闘技場に行ってみるか?」
シンゲンは、時間が空いてる者を誘い闘技場に移動した。
ギルドルームに居たギルメン全員がついていった。
闘技場には3種類のスペースが存在する。
オーブンスペース、リミットスペース、シークレットスペースの3つだ。
オープンは、誰でも観戦できるスペースで、大会等で使用される。
リミットは、限られた人だけが観戦でき、シークレットは、対戦する二人のみが入れるスペースとなっている。
シンゲンは、リミットスペースにルームを作成し、ギルドメンバーのみ観戦可能で設定した。
「さて、誰か対戦してみるか?」
シンゲンが言うと、中堅クラスの一人が名乗り出た。
「スキルも未使用で、対戦しますから、少しは対戦らしくはなると思います。」
「そうだな。まあ、それでも差があるようなら、装備とかも調整しよう。」
シンゲンの提案にギルメンが頷いた。
そして、シンゲンを含む5人の人間が、クレインに負けた。
「なっ・・・。」
「・・・。」
「頭領、勝てる気がしません。」
「スキルがあれば・・・きっと・・・。」
「それは、どうかな?むしろスキルを使えば隙が出来ると思うぞ。」
ギルメンの一人、ポリースが言った。
名前の通り、職業は警察官だったりする。
剣道4段で、県大会でも優勝したことがあるが、残念ながら全国レベルとまでは言えない。
【女子の大会にも、何度か手伝いに行っているが、あんな突きを使う女子は見たことが無い。】
ポリースは、最初の戦いから、クレインが剣道経験者であることを見抜いていた。
「頭領、次は自分が行ってもいいですか?」
「お願いする。」
攻略ギルドでは、デュエルは殆どやることがない。
デュエルと攻略では、武器はもちろん、スキル構成もまったく違うからだ。
シンゲンの二刀にしても、剣道における二刀であれば、一本を小太刀を使用する場合が多い。
しかし、シンゲンのは二刀とも大太刀を使用している。
シンゲンは、アタッカーであり、攻略に於いて防御は使用しないからだ。
「リアルの事を聞くのは、マナー違反だが、段くらい聞いてもいいか?」
「はい、私は三段です。」
「そうか、俺は四段だ。よろしくな。」
「有段者と戦えるなんて光栄です。」
リアルでは、ギブスをはめている為、剣道の対戦をする事は出来ない。
まさかゲームで剣道の対戦が出来るなんて、思いもしてなかった為、
クレインは、ウキウキとしていた。
「最初に教えておくが、このゲームでは、刃受けは可能だからな。」
「そうなんですか?ありがとうございます。」
実際の日本刀で、時代劇のように刃受けをすると刀を痛めてしまう。
切れ味が命の日本刀に於いては、致命傷ともいえる行為だ。
二人はお互い、中段の構えで向かい合った。
数秒二人とも動かなかった。
クレインは、武者震いがするほど、血がたぎっていた。
そして。
小さい突きを3連。
ポリースは、軽くさばく。
【強いです。】
クレインは、そう感じた。
一方、ポリースの方も、攻め手が見つからず、苦慮していた。
【分が悪いが、やるしかないか。】
ポリースは火の構えをとった。
突きの使い手に火の構えは、分が悪いにも程があるが、慣れ親しんだ
構えなので、一か八かの賭けである。
クレインは、構えを変えず、対峙した。
【つくづく実戦向きの奴だな・・・。】
通常、剣道であれば、火の構えに対しては平正眼の構えをとる。
だが、これは剣道ではない。
ポリースとしては、平正眼の構えをとって欲しかったのだが。
ポリースは、大きく息を吸い込み、そして相手に向かって、飛びながら、
剣を振り下ろした。
剣道であれば、面を取る技だが、ゲームでは面を取る必要はない。
相手にダメージを負わせればいい。
対して、クレインは。
クレインも相手に向かって飛び込んだっ!
渾身の突きを同時にはなっていた。
【舐められてるな。剣道もゲームも俺の方が一日の長があるんだよっ!】
ポリースは、心の中で叫んだ。
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