第63話 【ゲーム過去編】ミルミルのスキル上げ

「すいません、団長。ちょっといいですか?」


ある日、体験入団中のミルミルは、ギルバルトに声を掛けた。


「な、なんだっ?」


頭の中で、どんな仕打ちを受けているのかが気が気でないギルバルトは、身構えながら聞いた。


「メイスのスキル上げに連れてってくれませんか?」


「ベルはどうした?」


「他の方の手伝いに行っておられます。」


「そうか、ちょっと待ってろ。」


「はい。」


そうして、ギルバルトは、個人トークでカルディナと、話し出した。


「カルディナか?出番だぞ。」


「ごめん無理。」


「ちょっ・・・。」


「リアカノがさ、VFGX始めちゃって、暫くは付きっきりなのよ。今度紹介するね。じゃーねー。」


と一方的に、個人トークを切られてしまった。


【カ、カルディナあああああああああああああああああ】

心の中で悲痛な叫びをあげるギルバルト。


【そもそも俺は、どうして一番信頼出来ない奴に頼ろうとしてたんだ。おっと、それよりスキル上げか・・・。】


とりあえず、ギルバルトは、教会に僧侶の派遣を依頼した。


「ミルミル、最初の洞窟で待ち合わせしてるから行くぞ。」


「はいっ!もしかしてシンゲンさんですかっ!」

目を輝かせながら聞いてくる。


「お前は、スキル上げをしたいんじゃないのか・・・。」


「そ、そうですけど。」


「呼んであるのは僧侶だ。アタッカーやらないとメイスのスキル上げにならんだろ。」


「そ、そうでした。」


【とりあえず、教会に男キャラが居ないので助かった。初心者僧侶と依頼には書いてあるから、中級者以上の人間がきてくれるだろう。】


ギルバルト的には、女同士で話しでもしてもらって、自分は壁に徹しようと、そういう腹積もりだった。

余計な気は使いたくないという。


「おまたせしましたの。」


まさかの教会トップが登場した。

ギルバルトは、顔から地面に倒れた。

リアルであれば、確実に鼻が折れてたところだ。


「あなたがミルミルさんですか?私はサーラントと申します。」


ニッコリと笑顔で挨拶するサーラント。


「は、初めまして、ミルミルです。」


【なんて綺麗な・・・太陽のように輝いてる・・・。】

ミルミルは、唖然とした。


「何故、わざわざサーラントが来る。」


うつぶせに倒れたまま、ギルバルトが聞いた。

酷く滑稽な格好だ。


「僧侶の新人さんと聞きましたので、是非お会いしたく。」


【そ、そこまで、考えつかなかった・・・】


己の浅はかな思慮に、ギルバルトは呆れてしまった。


「す、すいません。私、色んな方に教会へ行った方がいいって言われてたんですけど。」


畏まって言うミルミル。


「いえ、聖騎士団でしたら、僧侶が不遇を受ける事はありませんの。それに、何か判らないことがあれば、いつでも教会に来てください。ゲストキーを渡しておきますね。」


そういって、あっさりとギルドルームのゲストキーを渡した。


「あ、ありがとうございます。」




「とりあえず、俺が敵を引き付けるから、ミルミルがメイスで敵を倒してくれ。」


「はいっ。」


「それと、ミルミル。余裕があったらサーラントの動きを見るといい。」


「はいっ。」


スキル上げは、スキルを使用しないとスキルレベルが上がらない。

レベルアップで獲得できるスキルポイントは、全てのスキルに振ることが出来る。

しかしスキルLvで手に入るスキルポイントは専用スキルポイントであり、そのスキルにしか振ることが出来ない。

大概の場合、武器スキルを振るには武器のスキルLvを上げるのが一般的になっている。


ミルミルも僧侶の端くれなので、回復の手順はわかっている。

壁役がダメージを負ったら回復という基本を。

しかし、サーラントの場合は、先読みがありえないくらい正確で、ミルミルが攻撃を忘れる程だった。


【こ、これが、教会のトップ・・・。】


「どうした、ミルミル。スキルレベルをあげるんじゃないのか?」

ギルバルトに声を掛けられ、我に返って、攻撃を開始した。


結局この日は、1時間近くもスキル上げに付き合ってもらった。

サーラントは、回復や補助の事を、惜しげもなくミルミルに教えてくれた。


「わざわざ、サーラントが来る事じゃ、なかったんだがな。」


「とんでもありまえせんの。とても有意義でしたわ。」


「今日はありがとうございました。」


ミルミルは、丁寧におじきした。


「ミルミルさん、メイスも僧侶も頑張ってくださいね。」


「はいっ。」


サーラントと別れた後、ミルミルは、ギルバルトに聞いた。


「太陽のように優しい方ですよね?」


「・・・。」

【昔は、氷のようだったがな・・・。】


「太陽のプリエステスって呼ばれてるんでしたっけ?」


「・・・。」

【昔は、氷の女王ってよばれてたがな・・・。】


「団長ってやっぱり、女性嫌いなんですか?」


「どうして、そうなるっ!」


「だって、あんなに素敵な人なのに、そっけないじゃないですか?」


「別にいいんだよ。昔からの仲間だし。」


「やっぱり、シンゲンさんの事が?」


「どうして、シンゲンが出てくるっ・・・。」


「素敵な人だったなあ。サーラントさん。」


「別に教会に行きたいなら行っても構わんぞ。」


「いえ、出来れば聖騎士団にお世話になりたいです。」


「そうか、じゃあ、今日から正式に団員だな。」


「いいんですか?」


「ああ。」


カルディナが、投げ出した時点で、ギルバルトは諦めていた。

それに教会に行ったとしても、よくよく考えたら、あまり変わらないだろうと・・・。


下手にBL信者を増やしてくれるよりはいいのかもしれない。

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