第31話 収束?

サーラントが自分のギルドルームに帰ってみると、

ギルメンの他に、魔術結社ヨルムンガンドの面々が居た。

GMのミズガルドは居らず、副GMのターヤが居た。


「何かあったんですの?」


「いえ、我々の事は気にせずに。」

ターヤが答えた。


「サーラさん、ベルさんは何か言ってました?」

ルビアが聞いてきた。


「い、いえ特には何も・・・。」


「もっと追及すべきです。」

周りの人間も頷く。

もちろん、ヨルムンガンドの面々も。

今日集まってるのは、全員がベルサラの者たちだった。


「そ、それよりも。」


「どうかしました?」


「あの、私とベルのツーショットとかってあるんですの?」


「「「ありますよ。」」」

一斉に返事が返ってきた。


「え・・・。」


「とりあえず、私のはこれ位です。」

ルビアが、数十枚のSSをサーラントに見せた。


「いつのまに・・・。」


「私のはこれです。」


「私のは・・・。」

コレクションの品評会のようになっていった。

もちろんヨルムンガンドの面々も参加している。

そんな中、普段は大人しい眠れぬ教会の一人が言った。

「あ、あの私、究極の一枚を持ってます。」

一同が一斉に振り向く。


「究極ですって・・・。」


「いや、私のが・・・。」


「私のだって。」

ざわざわする中、その女性にルビアが言った。


「こちらへ来て、サーラさんに見てもらいましょう。」


「は、はい。」

女性は自信満々に、サーラントの前で、SSを巨大化させて表示した。


「「「きゃああああー」」」

ギルド内に黄色い悲鳴が鳴り響く。


「なななななななな・・・・。」


サーラントが言葉にならない程、動揺し、顔を赤らめる。

そのSSとは、大木に背をあずけ寄り添う二人が見つめあっている物だった。

身長が高いベルラインが視線を下のサーラントの方へ向けていて、サーラントは、ベルラインを見つめ見上げている。

その距離は近く、まるで今からキスでもするかのような距離だった。

しかも、ちょうど木漏れ日が差し込んでいて、映画のポスターにでもなるようなSSだった。


「ごめん、これ送ってくれる?」

誰かが言った。

堰を切ったように、みんなが同じようなお願いを始めた。


「あ、あのとりあえず、ギルドで一斉送信しますんで、ヨルムンガンドの方たちにも送ってあげてください。」


そう言って、SSは、瞬く間に広まってしまった。

ギルド一斉送信してる為、SSはサーラントの所にも送られていた。


「あ、あの皆さん、ちょっと私、出てきます・・・。」

サーラントがそう言ってギルドルームを出ようとすると。


「頑張ってください。」


「釣りガールに負けないでっ!」


「私たちはサーラさんの味方ですっ!」

と励まされてしまった。




鋼の翼のギルドルームでは、冒険中のクレインにベルラインが個人トーク

をしていた。


「¥▽◇”#$$!!!」

言葉にならないような怒気を孕んだ声だった。


「ごめんクレインちゃん何言ってるかわからないよ・・・。」


「ベルさん、何処に居るんですっ!」


「私は、もう落ちるから、とりあえずクレインちゃん。カラットは使わないみたいなんで・・・。」


「そういう問題じゃありませんっ!」


「ごめん、ちょっと用が・・・切るね。」

とベルラインは強引に個人トークを終了させた。


「ふうう・・・。」


「やっぱり武者たんは、お怒りのようね?」

パルコが言った。


「大会前で気が立ってるみたいで・・・。」


「一緒に冒険してる人は災難ね。」


「多分、ビショップだと思う。」


「教会唯一の男性の?」


「そう。」


「武者たんの薬草って通り名だっけ?」


「クレインちゃんに振りまわされてる一人だよ・・・。」


「こんばんわ。」


「「こんばんわ。」」

先ほどは挨拶をしなかった、サーラントだが、今度は挨拶をして

入ってきた。

挨拶には、パルコとミラが返事をした。


「で、どうだった?」

ベルラインが聞く。


「ベルの言う通りでした。」


「だろうな。」


「数百枚以上ありました。」


「ひいいいっ」

ベルラインは、想像以上の数に悲鳴を漏らし、冷汗まで出てきた。


「そ、それは・・・、思ったより多かったな。」


「これが究極の一枚だそうです。」

そう言って、サーラントは、究極の一枚を表示した。


「・・・。」

ベルラインは、一瞬で廃人と化した。

真っ白に燃え尽きて・・・。


「ななななな・・・。」

言葉にならないほど動揺したのはパルコだった。

ミラは、顔を真っ赤にして、うつむいた。



「ど、どれくらい拡散したっ!」

数分後、復活したベルラインが、言った。


「ギルド一斉送信と、ヨルムンガンドの方々に・・・。」


「どうしてヨルムンガンドが出てくるっ!」


「先ほど、うちのギルドに集まってましたの。」


「手遅れね。」

他人事のようにパルコが言った、そして。


「ねえ、サーラちゃん。私にも送ってくれる。」


「はい。」

サーラントは、そういってすんなり送信した。


「き、貴様は、なんで簡単に送信したっ!!」


「欲しいと言われましたんで・・、ベルにも送りましょうか?」


「要らんっ!!」


チロリンっ。


ベルラインにメールが送られてきた。

「こんな時にメールだと? クレインちゃんから?」

ベルラインは、メールを開いてみた。


お仲がよろしいですね。釣り女よりは、百倍マシですけど。


と書かれており、添付ファイルがついていた。

開いてみると、究極の一枚が、表示された。


「な、なぜ、クレインちゃんにまで、もう出回ってるっ!」


「さっきギルド一斉送信って言ってなかった?」

パルコがサーラントに聞いた。


「そうですの。」


「じゃあ、薬草君にも送られてるんじゃ?」


「ビ、ビショップかっ!!!」

ベルラインが叫んだ。


こうして、ベルサラ究極の一枚は、瞬く間に広まってしまったのだった。

合掌。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る