第30話 火種

ベルラインは、パルコが鋼の翼のギルドルームに居るのを個人トークで聞いて、ギルドルームに向かった。

鋼の翼のギルドルームは、いつもの通り、パルコとミラが、円状に連なったソファーに座って話していた。


「こんばんわ、パルちゃん、ミラちゃん。」


「「こんばんわ」」


「なんだか、パルちゃんはご機嫌に見えるが?」


「わかる~、実はねえ。」

そう言って、パルコは、双剣のうちの一本を抜いて見せた。


「随分と凄そうな剣だね。」


「でしょ。シンゲンの伝手で職人さんに作ってもらっちゃった。」


「材料持ち込みで?」


「そう。」


「もしかして、ライトカーボンメタル?」


「よくわかったわね。」


「実は、クレインちゃんが気にしてて。」


「ん?」

ベルラインは、事情をパルコ達に説明した。


「なるほどねえ。時期が悪いっちゃあ、悪いわよね。」


「気にする必要はないと伝えたんだが・・・。」


「私のこれは、一部分けてもらっただけなの。」


「ほう。」


「これ言うと、ベルちゃんは怒っちゃうかもだけど・・・。」


「まさか・・・、釣りのロッドの材料とか・・・。」


「当たり・・・。」


「・・・。」

むしろ、ベルラインは呆れてしまった。

ライトカーボンメタルなんて、簡単に手に入るものではなく、採掘できる職人も限られている。


基本的に一般に出回ることが無く、ギルドの伝手をたどってとか、ギルド単位で購入するとか、護衛して報酬で貰うとか、そういう代物だった。


「また騒ぎになっちゃったら、ごめんね。」

パルコは先に謝った。


「いや、さすがにあのようなことは、もう無いし、ライトカーボンメタルなんて、ギルドでも在庫は無いから心配はないよ。」


「そっか。」


「しかし、堅松樹の次は、ライトカーボンメタルと・・・。」

ベルラインは心底呆れた。


「ねえ。私たち女性にはわからない世界だわ。ああ、でも釣り好きの女性も何人かいるわよね。」


「まあ、楽しみは人それぞれだから。」


「これで武者たんも安心してくれるかしら?」


「むしろ火に油を注ぎそうで、真実を伝えるのが怖いんだが・・・。」


「ご愁傷様ですw」


「あ、ごめん。個人トークが入った。」

ベルラインは、そう言って個人トークに切り替えた。


「何処にいますの?」


「パルちゃんとこのギルドルームだ。」


「今から行きますの。」




「サーラが来るみたいだ。」


「あら、何の用かしら?」


「さあ?」

二人が首をかしげてるとサーラントが鋼の翼のギルドルームにやってきた。


「いきなりで悪いんですが、これを見て欲しいんですの。」

そう言って、サーラントは一枚のSSを表示した。


「なっ・・・。」


「あら、まあ。」


「ベストカップル。」

最後に、ミラがボソっと爆弾発言をした。


「どういうことですの?」

サーラントがベルラインに詰め寄る。


「何がだ?」


「どうしてこういうSSがありますの?」


「それはだな。うちのギルドとシンゲンのギルドが、釣りレッスンを受けてだな。その時のSSだ。」


「どうして、釣りレッスンでこういうSSになりますの?」


「うちの馬鹿どもが、世話になったので、お礼を言ったらSSを撮ってもいいかと聞かれてだな。」


「それで?」


「SS位、構わんだろ?」


「どうして、腕を組んでますの?」


「私が組んだんじゃない。見ればわかるだろ。」


「まんざらでもなさそうですの。」


「貴様は何を言っている?」


「ベルこそ、どういうつもりですの?」


「どうもこうも、SSを撮っただけだろ?」


「どうして、こういうことになってますの?」


「いや、説明したし・・・。」

段々と詰め寄られ、困ったベルラインは、パルコの方を見た。


【パルちゃん助けて】


【しょ、しょうがないわね・・・】

目と目で会話した。


「サーラちゃんは、自分の居場所がとられたから怒ってるの?」


「私の居場所ですの?」


「ベルちゃんの腕と隣かな。」


「ななな・・・・・。」

顔が真っ赤になった。

パルコは、ベルラインの方を見て、グーっのサインをした。


【パルちゃん、解決になってないよ・・・。】

ベルラインは、目で非難した。


「わ、私が言いたいのは、そんな事じゃないんですの。」


「じゃあ、何が言いたいんだ?」


「私とベルは、βからの付き合いですよね?」


「そうだな、パルちゃんもだけど。」


「私が抜けてるよね・・・。」


「私達のツーショットとか、ありませんよね?」


「パルちゃんともないだろ・・・。」


「私もないわよ・・・。」


「それなのに、いきなり出てきた人にこんなSSって、おかしくないですか?」


「はああああ・・・。」

ベルラインは大きなため息をついた。


「あのなあ、サーラ。このSSは、どうやって手に入れた?」


「ギルメンの方に貰いましたの。」


「そんな事だとは思ったよ。じゃあギルメンの連中に聞いてみるんだな。私とのツーショットがないかと。」


「そんなの撮ったことありませんの。」


「SSは、誰でも撮れるだろ。」


「でもツーショットなんて、記憶にございませんの。」


「とりあえず、ギルメンに聞いてこい。もしなかったら、気が済むまで、SS撮りに付き合ってやるから・・・。」


「本当ですの?」

そう言って、サーラントは、自分のギルドルームに、帰って行った。


「ふううう・・・。つ、疲れる・・・。」


「もてる女は辛いわねえ。」


「やめてくれ、パルちゃん・・・。」


「夫婦みたい・・・。」

ミラがボソっと言った。


「ミラちゃんまで・・・。」

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