第23話 バイト
女子高生が一人、バイト募集が貼ってある掲示板を眺めていた。
颯爽と怪しいおっさんが声を掛ける。
「美緒ちゃん、バイト探してんの?」
「話しかけるなっ!」
美緒は、ツンケンして、時野をあしらった。
「ああ、あれかツンデレって奴?そのうちデレてくれるのかな?」
「デレねえよっ。」
「よかったらバイト紹介しようか?」
「なんで、無職のおっさんに紹介して貰わんといけねえんだ。はっ、まさか危ないバイトとか・・・。」
「いやいや、そんなの紹介したら、俺が宇品に殺されるし。」
「人の心配より、自分の職探したら?」
「この年になると・・・職なんてないんだよ・・・。」
「で、なんのバイト?」
「駅前のフォンデってケーキ屋知ってる?」
「知ってるよ、人気店じゃん。」
「俺、常連だからさ。聞いてみてあげようか?」
「てか、あそこ男が入れるような雰囲気の店じゃねえだろ・・・。」
「そう?俺は気にしないけど。持ち帰りなんかよく買うよ。」
「あそこの服ってさ、フリフリしてなかった?」
「フリフリしてるよ。ファンシーだよw」
「私が似合う訳ねえだろっ。」
「いやいや、めっちゃ似合うかと。」
「・・・。」
「とりあえず、行ってみる?ケーキ奢るよ。」
「・・・。」
「何、そのめっちゃ怪しんでる目は・・・。」
「親父が、何があっても、おっさんには関わるなと。」
「そういやあ、宇品って誕生日近かったような?」
「うっ・・・。」
「可愛いとこあるじゃん、美緒ちゃん。」
「う、うっさいっ。」
「気に入らなかったら、断っていいから、とりあえず行ってみよう?」
美緒は、うやむやに怪しい、おっさんに連れていかれた。
「いらっしゃにませ。警察に通報しましょうか?」
店員が温かく出迎えてくれた。
「えっ・・・。何故に?」
「時野さん、女子高生に手を出すのは、犯罪です。この人、危ないから警察呼んで、あげようか?」
フリフリのファンシーな服を着た店員が、美緒に問いかけた。
「お願いします。」
「ちょっ・・・。そんな事より店長いるかな?」
「居ますよ。じゃあ警察と店長呼んできますね。」
「警察はいいから・・・。」
駅前のケーキ屋フォンデは、店内で飲食ができる。
見た目はファンシーな店の為、男が入店するには度胸がいる。
昼時は、主婦層が多く、夕方からは学生やOLといった客層になる。
男性客は、カップルくらいしかいない。
「ちょっと時野さん、娘さんなの?」
近くに座っていた、常連のおばちゃんが声を掛けてきた。
「いや、知り合いの娘ですよ。」
「ふーん、お嬢ちゃん気をつけなさいよ。時野さんは獣なんだからね。」
「はい、気を付けます。」
「・・・。」
「いらっしゃい時野さん。警察はもう少ししたらきますから。」
「ちょ、洋子さんまで・・・。」
フォンデの店長は、40代で小柄な女性だった。
「で、時野さん、今日は?」
「この娘をバイトで、雇ってもらおうかと。」
「ふむ。」
そう言って、店長の洋子は、美緒をじっくり観察した。
「あ、あの私、制服似合いそうにないんで、出来たら裏方が・・・。」
「あら、そんな事は、ないと思うわ。ちょっとこっち来てみて。」
そう言って、美緒は店長に連れていかれた。
「ちょっと時野さん、今のうちに逃げた方がいいんじゃないの?」
常連のおばちゃんが忠告してくれた。
「本当に警察呼んでるんですかね・・・?」
しばらくして、フォンデの制服を身に着けた美緒が時野の前に戻ってきた。
「めっちゃ似合ってるよ。」
「う、うっさいっ。」
「あら、駄目よ。美緒ちゃん。さっき教えたでしょ?」
店長に言われ、美緒はしかたなく。
「いらっしゃいませ。」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
パシャっ。
時野はベストショットを写メった。
「おおおお、おっさん、何してるっ!!!」
「時野さんそういった行為は慎んでもらえます?」
「記念にね。どうです洋子さん。」
そう言って、時野は写メった画像を店長に見せた。
「すごく可愛く撮れてるわね。今回だけ特例ですよ?」
「了解。」
「け、消してっ。今すぐっ!」
「じゃあ、美緒ちゃん、さっそく今日から働いて貰うから。」
そう言って、美緒は再び店長に奥へと連れていかれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます