第8話 遠いから近く感じる
「流れ星って、なんで見て唱えるだけで、願いが叶うんでしょう。能動的な流れ星の話を聞きました。一人で見るのは寂しい!なんてね。お休みすると言いつつ、呟きたくなったので呟きました。」
と表示された。烏目 鳥目のアカウントだ。
どういうことだろう。まあ、ロマンチックなのは変わらないが。気になるのは、能動的、とひとりが寂しい、かな。でも、彼はよくわからない、普通の物差しでは測れないんだった。でも、わざわざ、つぶやくかな。こんな夜中に。だって、休むと言ったのにわざわざ。この内容にそんなに緊急性があるとは思わないが。
そうぼんやり思いながら、返信の欄を見ると、
「新作の伏線ですか?楽しみ!」
「なんだろう。次のお話かな?」
「取材が良い刺激になったのかな?」
なんて書いてあった。そうなのかもしれない。彼は意外にも気分屋だ。頭が納得した。いや、納得しかけた。いや、納得したかった。しかし、そうは第六感が許さなかった。何かを感じた。
何かを。
そう思って、夜中にごめんと断って、何かあったらまた教えて。旅に出る。と葦田くんに送った。
そして、旅立つことに決めた。アスタに。いますぐ。両親には後から言えばいいだろう。どうせ、夏休みも最終日まで帰ってこない。海外旅行なら、数回経験があるので、大丈夫だ。アスタは日本から一本でつながっている。
こんな、急な思い付きを論理的に説明しろ、と言われたら無理だろう。冷静な判断、理性を基とした判断などここには、ない。唯一言うなら、第六感は外れない。ということだろうか。ネットで調べて、朝六時に行って14時間かけて、あっちの昼の11時に着く。そっから色々あって、昨日彼が更新した掲示板の明日の月には間に合うだろう。
朝四時に思い立って、ちゃんと飛行機に乗って、今は飛行機の中だ。予定通り。眠いから少し寝よう、そう思って、あと六時間で着く、というときに起きた。
アスタに着いてからを考えなければ。着いたら、適当にご飯を食べよう。この旅の目的、というか旅に出るに至った衝動は、彼に会うことだから、彼の言う、新月かはたまた、流れ星かを同じタイミングに見られればよいだろう。幸い、今の季節は寒くもないので、一晩ぐらい、野宿で大丈夫だろう。
そういう考えを持った数時間前を振り返りながら、僕はただ甘いフライドポテトを食べながら、アイナナ通りへ向かっていた。空港の地名はソーゴで、どこかよく分かっていなかったが、というか調べるという気がなかったが、英語で尋ねると、この大通りを歩いて、10時間で着くといわれた。でも、タクシーに乗れば早いよ、とも言われた。しかし、私はお金を日本円から、メッゾに少ししか換えなかったし、第一贅沢をするほどの余裕はない。もともと、「冥土の土産」に関する聞き込みをしながら、アイナナ通りへ向かう予定だったから、徒歩での移動がちょうどよかった。歩くのは元から嫌いではないし。
甘いフライドポテトを食べすぎて、その味にはまってきたころ、ステッキが似合う紳士と、つばの大きな帽子の似合う淑女の老夫婦通りすがりの私に興味を持って話しかけてくれた。アスタ訛りの英語は癖が強く難しかったが、コミュニケーションはとれた。「冥土の土産」の話に興味を持って、というと、確かに今日は夕方から新月が出るから、あすの早朝は最適だが、君みたいな若い人は可能性で将来がまぶしく照らされているんだよ、と答えた。横から、興味を持ったらしい老婦人が、でも、君みたいなおこちゃまに朝の三時に起きるなんてできるのかしら。第一、度胸がね。などと言った。紳士は妻をたしなめながら、可能性は無限だよと再度、念を押した。
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