9 尋問

「さて、どうします?」


 ロープで縛り上げた男達の処遇を問う。


「どうせ、町なり村なりに着いたら、引き渡して縛り首だろ? 連れて行くのも面倒だし、そのまま足だけ切って放置しとけばいいんじゃないか? 野犬なり、ゴブリンなりが始末してくれるだろ」


 半端な時間で起こされたサクラさんが、不機嫌そうに言う。

 ちなみに盗賊が縛り首なのは、前に聞いた事があるので事実である。

 犯罪者にも人権がーーなんて言うのは、犯罪者に食べ物を与えられるくらいに国が豊かな場合に限る。

 自分たちが、いつ食い積める事になるかもわからない世界では、貴族か軽犯罪でもない限り犯罪者は概ね処刑される。


「ちょっといいだろうか? 放置は困る。野犬はまだしも、ゴブリンが街道を餌場だと認識してしまうからな。すでに数人死んでいるし、まとめて魔法で焼いてもらうのが一番良いのだが」


 リットさんがそう言うと、一緒に来た商人さんの護衛の人もうなずいている。


「え~~、めんどくさいんだが」


 サクラさんの機嫌がさらに悪くなる。


「じゃあ毒とか使う? 死んだあと、肉体にも残るから、ゴブリンが食べたらゴブリンも死ぬよ? まあ、その盗賊さんはめっちゃ苦しんでから死ぬ事になるけど」

「勘弁してくれ……っ!」


 メイの意見を聞いて、盗賊の男ーー最初に殴った髭面が呻く。


「あんたの意見は聞いてない。仮にオレ達が負けてたら、あんたらは何をするつもりだった? 手慣れた様子だったし、初めてでもないんだろ? 自分たちだけが苦痛を逃れられるとでも?」

「まあ、あきらめてよ。なんなら口移しで飲ませてあげてもいいよ? 人生最期に美少女とチューできるなんて、むしろラッキーじゃない? すぐに言葉通りに死ぬほど苦しむけど」


 一切容赦する気のないオレとメイの言葉に、髭面が真っ青な顔で、それでも喚く。


「俺達の背後にゃ、ボンブ男爵が付いてるんだ! 俺達に何かあれば男爵がーー」

「言い逃れにしても、ベタ過ぎ」

「言い逃れじゃない! 男爵から、10歳くらいの黒髪の娘を捕らえることができたら、無傷で連れてこいって言われたんだ!! そうすりゃ、金をくれるってーー」


 ……10歳くらいの黒髪か。

 サクラさんでも、さすがにもう少し上には見えるし、サクラさんは黒髪ではない。

 該当しそうなのはーー

 視線が馬車に向く。

 チノちゃん。

 彼女は10歳くらいだし、ローブのフードから見える髪は黒い。

 フードを下ろした姿は見たことがないしね。

 事情があるのだろうと、詮索はしなかったけど。

 リットさんの表情が固い。

 ……この人、隠し事が下手だなぁ。


「だから勘弁してくれ!! もう盗賊はしないから!」

「ーー黙れ」


 殺気を乗せて刀モドキを向けると、ピタリと髭面は黙った。

 顔色は真っ白だ。


「ちょっと興味深い話をしてくれたから、ここで殺しはしない。だが、町には付き出させてもらう。言い訳は町の人にしな」


 ……その後、死体を集めて渋るサクラさんに頼み込み、死体は魔法で焼いた。

 髭面たちは、ロープで馬車に繋ぎながら、自分たちで歩いてもらう。

 まあ、盗賊行為は自業自得なので、あとは町の人に任せよう。

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