1 異世界転移
「
オレの自己紹介を3対の目が見つめる。
その視線に──というか、視線の持ち主たちの格好に、オレはなるべく明後日の方を見るしか出来ない。
なぜならオレも含めこの場にいる全員が下着姿だからだ。
なんかメッチャ気恥ずかしい。
というか、オレ以外はなんで恥ずかしがらないのだろうか?
「北金沢ってことは、
この中では一番年下であろう10歳くらいの女の子がつぶやく。
さすがに子供なので、この子相手にはそんなには緊張しないのだけど、それでも直視はできない。
なにしろこの子だけなぜかパンイチでおっぱい丸出しだからだ。
しかもまだ恥じらいがあまりないのか、隠すそぶりもみせない。
目が悪いのか、厚いレンズのメガネをかけ、髪がぼさぼさで手入れをしているようには見えない。
顔立ちは可愛いのに、なんとももったいない感じの子だ。
「アタシは
『大人⁉』
全員の声が思わず重なる。
22歳と名乗った女の子──もとい、サクラさんは苦笑しつつ肩をすくめる。
「そんなリアクションも見飽きたな。身分証があればよかったんだが、なんでか裸だしな」
パチンとショーツの端を軽く引っ張って弾くサクラさん。
「あ、下の毛なら生えてるから見るか? 証明にはならんかもしれんが」
ニヤリと笑うサクラさんに、オレは横に首をぶんぶん振る。
「ふむ。まあ信じてもらうしかないな。じゃあ次、そこのピンクパンツ」
「ウチ?」
サクラさんの指定に、ピンクの下着の女の子が自分を指さす。
染めているのか、艶のある金髪が目につく。
染めているにしては随分と綺麗だ。
「ウチは
状況をちゃんと理解できているのか怪しいくらいに明るく挨拶をするメイ。
そういえば目の色も色素が少し薄いのか青っぽく見える。
「そっちのマドカちゃんとは同い年だね。っていうか、みんな出身がバラバラ?」
「というか、ここが何処かもわからないですしね」
最後の一人が周囲を見回しながらそう言う。
ここは窓もない建物? の中だ。
石造りで四方の壁に一つづつ松明が灯っている。
一つだけやけに重そうな鉄製の扉があるのだが、先ほど確認した段階では開きそうになかった。
「じゃ、最後。白パンツ」
「
その紹介を聞いてサクラさんが考え込む。
「天木学園?
「よくご存知ですね?」
「文化人類学部って言ったろ? アタシは宗教学系で各地の伝承なんかをまとめてんだよ。天木学園は神道系の学校だろ。だから覚えてたってだけさ」
サクラさんが肩を竦める。
「で、全員どこまで覚えてる? ってか、ここに来るまでを知ってる奴いるか?」
オレ達はお互いに顔を見合わせる。
「オレは学校で一時間目でした。英語で、なんか窓をチラッとみたらやけにまぶしいなって思って……そしたらここにいました」
「ウチも授業中だった。数学でちょ~~ツマンナイとか思って、机の中からこっそり鏡を出して眉とか調整してたんだけど、反射がキラッとしてヤベって思ったとたん、ここにいた」
「私も学校でした。朝のご祈祷の時間ですね。目を閉じて祈っていたので、光っていうのはよくわかりませんが、ふと目を開けたらこの状況です」
「なるほどな。時間軸はみんな一緒か。アタシは大学の研究室で寝てたからわからんが、まあ、同じ時間なんだろ」
「え~~、いいな大学生。アタシも朝とか寝てたい」
メイの言葉にサクラさんが呆れた顔を見せる。
「朝寝てたっても、前日深夜までレポート書いてたからだぞ? お前等授業中だったってことは制服着てたよな。アタシもキャミは着てたはずなんだが……」
「一瞬でひん剥かれたってことだよね。まあ、逆にそれ以上は何もされてなさげだけど」
確かに身体に変調はない。
だけど気付かれずに服を脱がすなんて真似はできるわけがない。
かといって授業中のオレを一瞬で気絶させてこんなところに連れ出すなんて真似もできるわけがない。
しかも四人も同時になんて──
「魔法でもなきゃ無理だよな」
オレの言いたい事をサクラさんが言ってくれた。
「魔法って、マンガ? じゃあ異世界転生って奴かな」
メイが笑うと、ミソギさんが首をかしげる。
「異世界転生?」
「うん。そんなマンガとかラノベが結構あるみたい」
「メイちゃん詳しいの?」
「ん~~、そうゆうの好きな男の人とか多いから、教えてもらうの。おススメとかくれる人もいるよ」
明るい性格だとは思ってたが、やはりコミュニケーション能力が高いらしい。
オレは少し人見知りなところもあるので、この手のタイプはちょっと苦手だ。
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