⑤
浅岡も、彼の下敷きになった一姫も、奇跡的にほとんど無傷だった。
階段の中腹、踊り場で止まったのが幸いしたらしい。
一姫は軽い打撲、浅岡は腕の傷が開いた程度。
二人とも数分脳しんとうで倒れていたが、俺が百十九番を探している間に目を覚ました。
一姫の主張により、三人とも仲良く救急車に乗せられ休日夜間緊急診療所に搬送され、再び顔を合わせた時は深夜零時に差し掛かっていた。
「ごめんなさい」
いつもゴーイングマイウェイの一姫がしょげ返っていた。
座っているより立っている方がマシな気分の俺と、なるべく安静にと言われてベンチに座る浅岡の前で、なるべく安静にと言われた一姫が床に正座している。
「わたしが、ちゃんと考えていれば、こんなことにはならなかった」
床に頭を擦り付ける。
「霊がどうのとか説明して、理解してもらえるわけないだろ。俺が浅岡を突き飛ばしたことは変わんないよ。ごめん、ほんとうに、ごめん」
浅岡は俺たちを交互に見て、困ったように体の前で両手を振った。
「だいたいのいきさつはわかったので……わざとじゃないなら、仕方ないです。気にしてませんから」
ここのところ薄まっていた嫌悪の気配を強力に放出しながら、浅岡は眉尻を下げて笑う。
俺は自分の手に爪が刺さるくらい強く拳を握った。
自分の軽率さを呪った。
タイミングの巡り合わせを恨んだ。
浅岡の信頼を裏切ってしまったことへの絶望にめまいがした。
一姫の説明によると、 今年の一月突き落とされ帰らぬ人となった岳優人の依頼により犯人を探すことになったが、常にこの歩道橋を見張っていなくてはならないのに、岳優人はいざという時タイミングで目を逸らしてしまうらしい。
それは突き落とされた恐怖によるものだと、本人は分析していたが、一姫が一緒に見張っている時は何も起こらなかった。
そこでもう一人見張りを増やそう、と考えた。
自分が囮となって階段の際に立ち、犯人を待とう、と。
だから今日は帽子の中に折り畳んだタオルを仕込み、階段を落ちた時少しでも怪我を減らせるようにとGジャンを着て件の時刻を待っていたらしい。
もちろん、霊が自分の都合の良いように嘘をついたり記憶を改ざんしていたりする可能性は考えていた。
だが、犯人が誰であれ、状況がどうであれ、一番突き落とされ易い場所に自分がいれば、最悪の事態は防げると安直に考えていたと、一姫は謝罪する。
そう、岳優人が冬の最中に突き落とされて死んだ、この事件に、犯人なんていなかったのだ。
いたのは、自ら死を選んだ少年、ひとりだけ。
自分は突き落とされたのだと信じ込んだ、自分に信じ込ませた岳優人、ただひとり。
人間は少なからず霊媒能力を持つ、というのが一姫の持論だ。
一姫ほど霊力が高いと逆に跳ね返してしまうらしいが、霊の気持ちや能力次第では霊媒師なし、降霊師なしに人に憑依することは可能らしい。
今回のケースにおいても、一姫の降霊なしに岳優人は俺に憑依したと言う。
にぃくんはもともと霊媒体質な上に体力精神ともに弱り切っていたから、川の水が高い所から流れ込むようにするっと行ったんじゃないかな、と本気なのか適当なのか判断つかない表現をした。
突き落とす相手が浅岡君だったのは、一に近くにいたから、二に一姫を突き落とすのはリスクがあると判断したから、三に目撃者を求めるなら岳優人と会話できる一姫の方が自分の主張が通り易いと判断したからだと、指折り数える。
確かに一姫を突き落として帰らぬ人とならない保証はどこにもなく、その場合、岳優人の主張を拾ってくれる人を永遠に失うことになる。
つまり一姫は、最初から囮とするには一番遠い人材だったというわけだ。
時系列も行ったり来たりし要点もとりとめなく話す一姫が集めた情報から判断するに、あれほど一気に噂が広がったにも関わらず、警察が再捜査に動かなかった理由。
それは、そもそも、この出来事に事件性は薄いと判断されており、十九時四十四分に落とされた人たちは、誰かに突かれたのではなく、岳人に憑依され足を踏み外しており、自ら足を踏み外したという自覚、もとい、錯覚があったのだ。
誰かに背中を押されたと断言する人はいなかったらしい。
俺に通じても一般人には通じない一姫の荒唐無稽な話を浅岡は黙って真面目に聞いていたが、納得した表情にはならなかった。
ただただ疲れたという風に顔色を暗くして、そうなんだ、と言っただけ。
この場で一姫を責めても、浅岡が困るだけで浅岡に対する贖罪にもならなければ説明にもならない。
「浅岡ごめんな。許してもらえないかもしれないけど、この気持ちは本当だから」
寄りかかっていた壁から身を離し膝をつく。一姫に倣おうとした俺に、浅岡は待って、と声をかけた。
「もういいよ。もう、すんだことだから。こうやって元気だし、お姉さんも助けてくれたし、僕、お姉さんを下敷きにしたし。お姉さんの方を気にかけてあげて?」
浅岡の俺への表面的な態度は六時間前と何ら変わらないのに、その言葉も、俺に向けられた困ったような労うような笑い顔も、拒絶のそれでしかなかった。
◆・◆
「死ね」
その日から何日か過ぎた日の朝、登校する生徒の誰よりも早く歩道橋に向かい、俺は家からくすねてきた一升瓶を花束の隣に叩きつけるようにして置いた。
「急性アルコール中毒で昇天しちまえ」
あれ以降、階段から落ちた人の噂も聞かなければ、一姫の前に岳優人が姿を現わすこともなかった。
俺はぼやくように呪詛を投げかけて、きっと成仏したんだろうと手を合わせる。
霊なんて嫌いだ。
死んでるくせに好き勝手望むし、好き勝手に迷惑かけるし、好き勝手気を晴らしては消えて行く。
あの日のことを思い出すと、未だに悔しさに鼻の奥が熱くなる。
せっかく、変わろうとしたのに、まるで、変わらない方が良いみたいに、運命は俺を嘲笑う。
だから、あれ以降、浅岡とは言葉を交わしていないし、放課後の勉強会もなくなった。
「君」
予期せぬ方向から声をかけられて、俺は目を開ける。
学校側の端に、男性がひとり立っていた。
Tシャツにジーンズ、リュックを背負って髪は少し染めているようだ。
彼は右手に傘を、左手に花束を持っていた。
「優人を参ってくれてるのか? おれ、君の学校の卒業生なんだ。ここで死んだヤツと同じクラスだった」
「そうなんですか」
ここまで来た青年は古い花束を手にした花束と交換する。
そして、しゃがみ、手を合わせる。
十秒、二十秒。
俺は待って、口を開いた。
「なんで、岳先輩は死んだんですか?」
「バカなやつだよ」
彼は苦笑いを浮かべる。
「おれにも詳しい理由はわかんないけど、あいつは良い大学に入るって言われてたし、優しいし気さくだしクラスでも人気者だった。何度か遊びに行ったけど、親とも仲良さそうだった。なんでかな」
花束の向きを調節する風に、彼は目の前のものをいじる。
「あいつの家ってこの近くなんだ。ほら」
立ち上がって北側の道を指し示す。
「あの赤い屋根の家がある角を曲がった先にあるんだよ」
「でも、南側の階段下に転げ落ちたんですよね」
「ああ。だから、事件性があるかもしれないってんでしばらく警察も動いてくれたんだけど、やっぱり自殺じゃないかってことになったらしい。誰かに殺されたならまだ恨む先があって良かったんだけど、遺書が出て来たんだ」
「遺書?」
「あの日は一月の第三日曜日で、センター試験の後だった。朝、試験会場の入り口で配ってた塾のチラシに、笑うだろ、失礼すぎるよな、その塾のチラシの裏に、《落ちた。死ぬしかない》って書いてあったんだ」
「何ですか、それ、誰だって試験がうまくいかなかったら、そのくらい、」
そのくらい言いますよ、と言いかけて、俺は言葉を呑んだ。
もし、俺だったら。
こんなに頑張って、勉強して、こんなに必死になって、クソみたいな学校生活にしがみついているのに、三年間苦痛を堪え忍んだその結果が容赦のないゲームオーバーだったら。
何のために生きてきたんだろう。
これから、どうやって生きて行けばいいんだろう。
歩もうとしていた道がなくなってしまったのに。
「それだけの言葉で、自殺と決めつけるのはあまりに無情だとおれも思う」
細かな雨粒が横殴りに吹いて俺の頰を叩く。
最近ずっと、晴れた空を見ていない。
雲に蓋をされた閉鎖空間。
「でも、もしそれが真実なら、あいつは夢とか希望を将来ごとを失ったんだろうな。高校の三年間、ずっとまじめに勉強してたやつなんだよ。きっとあいつにとって受験だけが出口だったんじゃないか。だから、失敗して、死ぬしかなかったんだ」
「生きることから逃げ出したってことですか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。想像するんだ。ほんとはあいつも、生きたかったんじゃないか? これがあいつなりに幸せを掴もうとした結果だったら良いなって思うんだ。
優人の全人生かけて歩んで来た道の先が崩れ落ちて、絶望に閉じ込められた。このまま抜け出せないなら、何かを変えるしかない。崖を向う岸に飛び越えるしかない。だから、より幸せになるために生きようとして、飛んだんじゃないかって」
「わかんないです」
手すりにつかまって幹線道路を見下ろした。
「ははっそうだよな」
青年も手すりに両膝をついてよりかかった。
岳優人が不注意や自殺ではなくもしかしたら他殺かもと思われた理由。
それは一姫と浅岡のように踊り場で止まらず、一番下のアスファルト地面まで転げ落ちていたこと。
体内からアルコールは検知されず意識は充分あり受け身を取ることが可能だったと推定されたこと。
自殺志願者の多くは足から落下するが、遺体の損傷箇所と具合から、頭部からの落下と判断されたこと。
普通この高度の階段を落ちただけでは老人や幼子でない限り死亡したりはしないが、何者かに勢いよく押されたか、執拗に落とされたかだと、可能性はあるらしい。
だが、今では本人が勢いよく飛び降りたんだと、考えられている。
「生きようとして、飛んだ」
その言葉を俺は、そっと舌の上で転がした。
◆・◆
毎日は細々した行事や宿題、小テスト、一姫の依頼によって目まぐるしく過ぎ行き、俺は隣で浅岡がいじめられていることに相変わらず不干渉の立ち位置を続け、期末試験が始まり終わって、結果発表がなされた。
梅雨前線はいつのまにか頭上を通り過ぎ、日々ピーカンの青空が続き、気温が天井知らずに上って行く。
対して俺の成績は相変わらず底辺を迷走し、浅岡の成績は相変わらず上位五位内に食い込み、長野は一位と二位を総なめして、俺の不合理な現実への理解力を試して来た。
成績の影響力は凄まじく、長野が浅岡をいじめるのには何らかの深遠な理由があるのだろう、と思う生徒もいるほどで、つくづく、自分たちは学力信奉の空間にいるのだと思い知る。
俺自身勉強ができれば将来が確約されると根拠もなく信じていて、もしかしたら例外もあるかもな、と頭の隅っこで思っても、自分だけは大丈夫だろう、頑張ってさえいれば報われるのだと、何の保証もないのに地震の速報や世界のどこかで起こったテロのニュースを聞きながら思う。
ぱたりと噂のとだえた歩道橋の岳優人のことも他人事で、浅岡のことももちろん、対岸の火事だった。
一学期最後の日、放課後の全校掃除の時間。
掃除当番で自分の教室が当たったため、壁の汚れを雑巾と泡洗剤で拭くことになった。
窓側の壁をゴシゴシと一心に拭くふりをして、その実掃除に消極的参加をしていると、廊下の向こうから囃し立てるような騒々しさが近づいて来る。
手を止めて立ち上がった時、開け放した扉から見覚えのあるオレンジ髪の男がけたたましく笑いながら乱入して来た。
同類と思しき男子生徒が数人連なり、笑いながら女子生徒が続く。
その中央に浅岡がいるのは目を凝らさなくてもわかった。
掛け声とともに、手にしたモップを振りかぶる。
逃げて来たのではなく、文字通り半ば引きずられて来た浅岡の背中をモップのタオル側でひっぱたき、肉の弾ける耳障りな音を爆破させる。
「はやくいけよぉ!」
苛立ちを含みつつも、享楽に満ちた声。
ふらふらとこちら側へ歩く浅岡を、その男子生徒はもう一度モップで叩いた。
嫌な音が炸裂する。
大きく体を傾げ、たたらを踏む浅岡の頭部からゆっくりと鮮やかに赤いものが伝い、続いてドロリと膨らみ勢い良く流れ出す。
金具が頭を裂いたのだ。
「ちゃっちゃとやってよ、チョーノに期待されてんじゃん?」
「っるせぇ!」
女子生徒がケラケラと笑い、オレンジ髪の男子生徒が舌打ちする。
「アイツは関係ねぇ。オレの実力だよ。見てろ」
「笑えるー! 実力だって!」
「ちょー期待してる!」
「マジマジ」
「できたら、好きなトコ、キスしてあげるよー!」
「マジだろうな?」
「決まってんじゃん。アタシらが証人になるよ!」
「キモいの消しちゃってー!」
「あー! クソほどやる気出てきたわー!」
下世話な会話で盛り上がる彼らを、半数近くを中もしくは高の外部組で構成される特進クラスの生徒が眉を潜めて見守る。
「おら、はやく行けよ。生きてるだけで人を不快にさせんだからさ、最後にオレらをちょっとでも笑わせてくれよ」
オレンジ髪は浅岡の頭をモップで小突いた。
目に流れ込む血を、梅雨が明ける頃から着るようになった長袖シャツの袖で拭って、浅岡は再び足を動かす。
その場にいる生徒全員に見守られながら、俺の前をじりじりと通り過ぎる。
垂れ落ち続ける血に、彼の肩が染まっていた。
肩口から二の腕、二の腕から肘へとゆっくり広がって行く。
胸と背中もしとどに濡らす血には目もくれず、まっすぐ前だけを見つめる浅岡の目には狂気に溶ける寸前の理性が光っている。
彼以外、誰も動かないし、動けない。
特進クラスの面々は、少なくとも俺は、浅岡の気迫に呑まれていた。
ガタン。
浅岡の足が移動途中で放置された椅子に引っかかる。
くずおれかけて、背もたれに掴まる。
体力が限界なのか、彼は俯いて歩みを止めた。
ボタボタと血が床に落ちて弾ける。
彼の手が椅子の背を強く握るのが見えた。
色白の手が血の気を失って、いまや、紙のように真っ白だ。
「うあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
予兆も何もなく浅岡が椅子をぶん回した。
軌跡が豪快な弧を描く。
椅子の足が強化窓ガラスを軋ませ、蜘蛛の巣を入れた。
計算も理屈もなくでたらめに椅子を振り回し窓に打ち付ける。
その度に耳障りに教室の空気が軋む。
三度目で窓ガラスが割れ、かけらが四方八方へ飛散する。
バルコニーに出て掃除をしていた生徒が、虚を突かれたように動きを止めていた。
「早く、飛び降りて見せろよ」
にやにや笑いをたっぷり含んだ低い声。
いつの間に現れたのか、長野が腕組みをして惨劇を見物していた。
誰も動かない。
動きかけた生徒もいたかもしれないが、長野の声がそれを制圧してしまった。
カチカチとどこかから音が聞こえる。
浅岡の歯が震えているのだ。
カチカチカチカチ。
踊り狂う目が窓の外を見ている。
怯えるような、遠慮がちな、けど、思慮深く優しく知性を感じさせる黒い瞳は、ついに正気を失って、窓からの直射日光を受けて拡張した虹彩が、黄金色に光っている。
誰も動かない。
なんでだよ、なんで動かねぇんだよ。
苛立つ俺の足も竦んで動かなかった。
浅岡は手にした椅子を投げ飛ばす。
それが俺の膝にぶつかって、ようやく金縛りが解けた。
「やめろ! 死ぬぞ!」
窓の桟を乗り越えようと足を掛けた彼を後ろから羽交い締めにする。
飛び散ったガラスが刺さったのか、彼は体の至る所に血の染みを作っていた。
彼を捕らえたとき俺の腕にも激痛が走ったから、ガラスに切られているかも知れなかった。
「そう言えば、草場に突き落とされたんだっけ?」
感情の見えない声音で言い、長野は俺たちの背後に立つ。
抜け出そうと暴れる浅岡を捕まえる俺の腕が嫌な予感にビクリ、と痙攣した。
長野は俺の耳元に、しかも、確実に浅岡に聞こえる近さに口を寄せる。
「長野」
やめろ、言うな、やめてくれ、言わないでくれ。
懇願するような気持ちですがりつくように長野へ視線を投げる。
浅岡を放すわけにはいかなかったから、俺には逃げ場がなかった。
「聞いて驚いたぜ」
俺たち二人だけに聞こえる声量。
「やめろ」
俺は呻いて頭を下げる。
少しでも浅岡の耳を塞ぎたくて、彼の顔に自分の頰を押し付ける。
浅岡と俺の間で流れ続ける彼の血が熱い。
皮膚が滑る。
浅岡は前に進もうともがき続けている。
「浅岡も俺の前でも飛んで見せてくれよ。そしたら、解放してやるよ」
長野は俺の背中へ親しげに手を乗せた。
「俺、草場に嫉妬してるんだよね」
「長野、言うな」
「お願いした通り、やってくれてありがとうな。草場は、俺の仲間だよ」
決定的なセリフ。何もかもを心得た言い回し。
「長野おおおおおおおおおおおおお!!!!!」
怒りのまま吠えた。
腕の中で浅岡が一瞬放心する。
俺の叫びが拡散して行く。
次の瞬間、浅岡が体を強引に捻って俺の拘束から抜け出した。
浅岡の中で、叫んだ俺の声が決定打になったのだ。
彼の体を気遣って不安定な形で捕らえていたのが悪かったのかも知れない。
不意をつかれたせいかも知れない。
俺の想定を超えた火事場の馬鹿力を出されたからかも知れない。けど、そんなのはどれも言い訳だ。
これほど、無力さを恨めしいと思ったことはなかった。
こんな気持ちになるなんて、想像したことはなかった。
腕を伸ばす俺の手は虚空を掴む。
浅岡は窓枠を乗り越え、誰にも止められないままバルコニーの柵を乗り越える。
半瞬遅れでバルコニーの生徒が浅岡を追うような動作をした。
けど、もう、そこに彼はいなくて。
なす術がなかった。
全ては、俺がしてきたことへの仕打ちだ。
俺は、何も、できなかった。
手も足も出せなかった。
俺の体は、こんなにも自由だったのに。
エランヴィタールは、例えば宇宙のビッグバン、例えば好気呼吸の獲得。
それは、今までにない世界の創造であり、未知の世界への飛躍である。
学校という閉鎖空間の、終わりなきいじめから生き残るために、浅岡は飛んだ。
絶望に閉ざされた毎日から、希望の新世界へと飛躍した。
生きるために。
生き残る、そのために。
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