エピソード2「ヒーローとゆかいな仲間たち」
ヒーローとゆかいな仲間たち ①
「時空戦士イバライガー」という自主活動を主催、運営している団体が、つくば市に拠点を持つ「茨城元気計画」なのである。
僕はそもそも誤解していたのだが、イバライガーはこの茨城元気計画の代表者が作ったオリジナルヒーローであり、その活動はあくまで自主活動。
ローカルヒーロー、ご当地ヒーローとして紹介されるイバライガーだが、他のローカルヒーローがその名の通り、県や市町村を母体として活動しているのと違い、イバライガーは個人が事業として活動している。
地元のイベントへの参加、病院や施設を訪問するボランティア活動、パトロール等々……年間を通して精力的な活動を展開している。
イバライガーの活動は、茨城元気計画の代表がたったひとりではじめたものだそうだ。
それが、多くの人の賛同、共感を呼び、活動を共にする参加者が増え、今では茨城元気計画という団体を結成するまでに大きくなっている。
さまざまな企業がスポンサーとして、イバライガーの活動をサポートしている。
サポート企業の応援、商品のPR、地元警察と協力しての防犯活動と、イバライガーは今や茨城に必要不可欠なヒーローなのだ。
ヒーロー好きの大人たちが集まっての自主活動が、地元民に茨城県のローカルヒーローとして認められているということだ。
そして、その活動、人気の広まりはもはや県内だけにとどまらず、千葉や埼玉など県外でもステージショーを開催。また、茨城県でのイベントに、県外からもファンが駆けつけるまでになっているという。
すごいことだ、と思う。
ホームページに掲載されている記事を読みながら、僕はただ、すごい、とくり返すしかできなかった。
大の大人が、自分たちの好きなことをひたすら続けていった結果が、地域の人々に認められている。
馬鹿馬鹿しいようなことを大真面目に、真剣に取り組み続けて結果を出している。
そんな活動を、もう十年以上も続けている。
子供の心を持ったまま、成長したような大人たち。
子供の頃の夢を、実現させてしまう大人たち。
夢は、あきらめるものだと思い込んでいたのに。
何てうらやましい人たちなんだろう。
僕は、自分の中に、昔持っていた何かにあこがれる気持ちがよみがえってくるのを感じた。
つくばフェスティバルの後、家に帰るとすぐに、
ネットで公開されている過去のショーの映像。
子供向けに組み立てられたストーリーや、スポンサーやキャンペーンに合わせた内容のショーの他に、オリジナリティの強い物語も多くあるのが印象的だった。
こだわりの感じられる設定、丁寧な作りのストーリー、どんな内容でも損なわれることのないイバライガーのかっこよさ。
本当にヒーローが好きな人たちが、生半可でない入れ込みようで作り上げているのがわかる。
気づけば、動画を見ながらあっという間に何時間も過ぎてしまっていた。
それくらい、夢中になっていた。
時間を忘れて何かに夢中になったのは、一体何年ぶりのことだろう。
何かに急き立てられるように、僕の心は走っていた。
考えるよりも先に、手が、指が動いていた。
その日の内に、僕はホームページに載っていたアドレスにメールを送った。
茨城元気計画に参加したい、その気持ちをありったけ込めたメールを。
そわそわしながら夜を明かし、翌日にはもう返信が届いていた。
――基地で会いましょう。
返信メールに書かれていたその言葉に、僕の胸が高鳴った。
基地。
子供の頃に誰しも夢見た、ヒーローの秘密基地。
そうだよな。
イバライガーはヒーローなんだから。
ヒーローがいるのは秘密基地でなければな。事務所でなく。
そのヒーロー設定の徹底ぶりに、僕はにやにやしてしまった。
何か、とても楽しい。
僕はすぐさま了解の返事を送った。
そして、カレンダーにしっかりと予定を書きとめる。
水曜日、僕は初めて本物の秘密基地を訪ねる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます