第53話 貴方は、何時の日にか別の彼方達を助けるのよ。

「ここ迄で聞きたい事はある? 」

シャルル達二人へとミオが問う


『大丈夫です。 医術師が魔法で身体の異常を調べる事と同じ、と考えても良いのなら、ですが 』

シャルルがミオへと確認した


「多分、同じ事だと思うわ。 

人ではなく、機械を使って調べているだけだから 」

多分…… 実際に見ていないので曖昧な答えになってしまったが問題は無いと思う。 人が魔法を使って感覚的に調べているのだろうと想像したのだ。


「次の所だけど…… これが理解できるのかな? 」

【遺伝子情報の取得実行…… 再生治療工程の構築 】

の部分だ! ミオは悩みながらも説明をする。


「え~とねぇ、ここからの説明の前提になる事だけど、人の身体の中にはその人の身体を構成する設計図・・・・・・・・・・・・・、の様な物があるの。

その設計図・・・を調べて、その人の身体の損なわれた部分を再生するの 」


ノリト達が居た地球では、最新のクローン技術や、自己組織誘導を用い、患者自身の幹細胞を利用することで、損傷した臓器を複製し機能の損なわれた臓器と置換または、幹細胞移植による再生医療を行なっていた。

その地球であってさえさえも、再生の揺り籠リジェネレーション・クレイドルは最先端の医療機器であり、ノリトが設計し人類へと齎した奇跡であった。


「人の身体には本来、怪我や病気で損傷し失われた部分を自ら修復し再生する能力が備わっているのよ。

一番身近な事で説明すると、指を切っても自然と傷が塞がって治っていくでしょ。

それを、自己組織再生能力・・・・・・・・と言うの。

 これは、色々な身体の部分に変化することが可能な幹細胞・・・と言うものが自分の中にあるからなの。

その幹細胞が損傷した部分へ必要に応じて増えたり変化することで、損傷部分の再生が行なわれてるの。

少し複雑だけどここ迄は良いかな? 何と無くでも理解できるかなぁ? 」


 説明を聞いていたアルフォンスが若干興奮気味に話し出す。

『僕達の身体にはその様な能力が備わっているのですか!

その事をミオ様のお国はお調べになったのですか? 凄い事です!

それと…… もしかしてですが、魔法とはその力を増やしたり加速したりしているのでは無いでしょうか?

指を切って無くしてしまった人も、魔法では何も無い場所に一瞬で指が生えて治るのですよ!

魔法とはイメージが大事です。 

その新しい概念を知れば、魔法医療が進歩するかもしれませんね! 』


「魔法では一瞬の出来事なの!? それは凄いわねぇ!

私達の技術ではそれは無理ね。 どうしても時間が掛かってしまうの。

それでも、昔よりは随分と早くなったのよ。

14日掛かった怪我が今は3日程度で完治だから。

 それにしてもアルフォンス様は医療に御興味がお有りなのですねぇ 」


『はい、母の事がありましたから。 

未熟ですが、自分が努力して治して差し上げたいと、勉強を致しました。

でも、国の魔法師でも出来なかった事……

自分の様な子供に出来る訳が無いのですが 』

アルフォンスは俯き答える。

最後の方は消え入りそうな、悔しげな声を絞り出していた。


「そんな事は無いわよ! 

今は無理でも、その努力が実を結ぶ事は何れ来るの!

助けたい人には間に合わなくても…… その努力で助けられる人は絶対に居るの!

彼方達のお母様には間に合わなかったけど、私達が来たわ。


 これはある人・・・の言葉よ!

貴方は、何時の日に別の彼方達・・・・・を助けるのよ。

だから、いつかを目指して努力を続けて。 

きっと努力を続けて良かったと思う日が来るから 」

ミオはアルフォンスへと想いを伝えた。

自分が嘗て言われた事を思い出して。

今は傍に居ない鐵面皮・・・の相棒を想いながら。

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