第47話 アーサーの死に関わる可能性も出て来たのだからな

 ゲオルグとアイギスは、メディカルユニットを後にし執務室へと戻った。

当然の事だが、執務室には他の者は居ない。

聞かれては困る事を話すのだから……

 先ほどノリトから齎された情報は看過出来るものでは無く、すぐにでも調査の必要がある。

だが、すぐに調べる必要がありはしても、誰を動かすか・・・・・・が問題である。

一連の企みに関わる者が何処に居るのか見当が着かない内に、無闇に動く事は得策では無い。

敵にこちらの動きを察知されるだけでなく、手掛かりすら逃してしまう可能性があるからだ。


『アイギスよ、これは大事になるやも知れぬな。

アーサーの死に関わる可能性も出て来たのだからな…… 』

ゲオルグは病で亡くしたと思っていた息子の事を想う。

毒殺された可能性が出て来たのだから、心中は穏やかではない。


『ただ、フローラ様が御健康を取り戻されたら…… 

動きが出る可能性がございます 』

アイギスは思案する。 

敵は永きに渡って準備をしているのだ。

アーサーが亡くなり既に十年が経過している…… 内部に潜り込んだ者はそれ以上の年月を、こちらへと気取られる事無く潜んで来たのだと想像が出来る。

フローラが後僅か三日、皆なの前に姿を表すまでには二週間あるが、すぐに噂が立つであろう。

フローラが健康を取り戻したと!


『そうであろうな…… して、どうでてくるか? 

一気に命を奪いに来るか? それとも…… 別の手段があるやもしれぬが 』


『陛下、ノリト殿とあの者・・・を引き合わせる御許可を頂けますか? 』

アイギスは次の一手を決めた様だ。


『ふむ…… よかろう、ノリト殿の協力は今後も必要になる。 

こちらの手の内、魔法については知っておいて貰いたい所であるしな。

あの者・・・錬成術・・・には興味を持つであろう! 

それに、エストの事もお願いする事になるなら丁度よいしな 』


『では、その様に手配いたします。

……陛下、ノリト殿のお姿ですが 』

アイギスは言葉を言い淀み、黙考してしまった。


それを・・・察したゲオルグが先に

『アイギスよ、やはり…… 似て・・ おったか? 』

その言葉を言い終わると、ゲオルグの瞳が揺れていた…… 

いや、涙で潤んでいたのか?


『生き写しとはこの事でしょう。 

何と言う…… 運命の悪戯とでも申しましょうか 』

アイギスはこれからの事を考え少し不安になっていた。

フローラが…… ノリト殿を、と。


『髪の色、瞳の色も同じとはな。 

ノリト殿は二十二歳だったな、アーサーが二十八であったか…… 

病に倒れたのが二十四……

確かに、あれが元気だった頃と生き写しであるな 』

今は望めぬ憧憬に目を細める。


『陛下、ノリト殿へとその事・・・も含め、先のお願いをしたいと考えておるのですが。

恐らく、フローラ様が御健康を取り戻し、その傍らにノリト殿が寄り添えば敵が動くと…… そして、人とは想定していない事、有り得ない事が起こると警戒も散漫になるかと、かように愚考したのですが 』


『ふむ……。 では少し、ノリト殿と相談をいたそう。

アーサー・・・・としてでは、違う問題・・・・が起ころう。

我の隠し子とでもした方が面白いのでは無いか? 』

ゲオルグはフローラのことを心配した。

万が一…… 惹かれてしまっては、と。


『それぐらいインパクトがあっても良いかも知れませんな。

恐らく、後継者を亡き者にし国の弱体化…… 若しくは転覆が目的でしょう。

次はアルフォンス殿下を狙う算段かもしれません。

すぐにでもノリト殿へと依頼を致しましょう 』

方向性は決まった。

アイギスとゲオルグは午後の予定を変更するのだった。


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