『唯一人のレギオン』(仮)鐵騎士と焔女帝の異世界冒険譚

雪峰サクヤ

旅のはじまり

第1話 薄暗闇の中、次第に意識が覚醒していく。

 目も眩む程の光に飲み込まれたかと思うと、己が身体は落下して行く。

いや、本当に落下していたのかさえも曖昧だった。

突然の浮遊感に襲われたかと思うと、心と身体…… 意識が身体と切り離された様な、そんな喪失感に襲われた。

だが、その感覚も一瞬の内に霧散し、意識が闇の中へと埋没するような違和感に囚われる。


いったいどれ程の時間が経過したのか? 時間的な感覚もあやふや・・・・で不確かであった。

最初に感じた眩い光は既に無く、虚無とも言える漆黒の闇に意識が塗り潰された。


    ◇    ◇    ◇    ◇


 薄暗闇の中、次第に意識が覚醒してゆく。

相棒は何処? 気配を探ると、近くには居る様だ。

その存在を確認し、彼女は安堵を覚える。


「ここは? 何処かなぁ? 」

そう呟きながら視線を廻らせる。

「石造りの神殿のようだけど? 」 

彼女はゆっくりと立ち上がると、意識を集中し辺りを確認した。

仄かに明るいのだが、近くに居る筈の相棒さえも見通せぬ程の光量しかない。

その明かりの質は、LED等の電気的なエネルギーを使った物では無い。 先史時代的な物である、油を燃焼させたランタン等の物とも違う。 もっと身近な力エネルギーを使用した物のように感じられた。


(人の気配がする )

周りには複数の人が居る事が確認できるが、

(敵意は…… )

無いようにも感じる。

一定の距離を置いて、こちらの動向を窺う様な、そんな感じであった。


己が危機感知に緊急的な要素は見出せない。

彼女は、一触即発的な状況では無い事に安堵すると、数瞬前の出来事に怒りが湧く!

「それにしても! あんっの、バッカ野郎がぁ~っ!!!!! 」

床を踏み砕く勢いで、踵を床へと叩き付けた!


ガッキィーンッ!!


石造りの神殿に硬質な音が反響した!


「んぬっぉ? あれれっ?? 

こ、この床…… 砕けない!? 」

おやおやっ??


「ねぇねぇ! ここの床さぁ、妙~に硬いんだけど?? 」

何時の間に移動したのか、真横に立っている相棒へ視線を向ける。

彼女は、相棒へと今し方の疑問を投げ掛けた。


「うむっ、 解析をしたが普通ただの大理石だぞ……

但し、未知の…… か? 

波導マナと同質のモノが検出された事から、恐らくは何らかの強化…… 

或はシールドに似た物じゃないかと思うが? 

それにしてもだ!。

お前の馬鹿力で砕けぬ物が在った事には驚きが隠せないなぁ!? 」

後半の台詞は、ニヤニヤッとしているのでは無いか? と思われる口調で返された!


へと答えた者はと言うにはいささか無理がある容姿だ。

まるで、甲冑と言うか金属鎧? を纏っている? と言う姿である。

しかし、その声色は甲冑越しとは思えず。

透き通る様に優しげであり、落ち着きを持った、心地良い響きのものだった。

その声の感じからしてであろうと思われる。


「ふんっ! 馬鹿力とか言うなぁっ! 」

は頬を膨らませ睨むと、可愛らしく抗議をする。


ふと気付けば、薄暗かった筈の室内は徐々にだか明るさを増しており、周囲の状況も辛うじて目視が出来る迄の明るさとなっていた。


その遣り取りを、観察するかの様に遠巻きに観ていた者達の視線は、常に二人へと向けられていた。

視線を片時も逸す事は無く、まるで監視をしている様に感じられる。

其の者達の中には、お伽噺に登場するような王様・・らしき出で立ちの人物も居た。


あれは、騎士なのだろうか? 

全身を覆う金属板で構成された、板金鎧ばんきんよろいとも呼ばれるプレートアーマーを着込んだ者も数名伺える。

だが、一様に兜は小脇に抱え、その素顔を曝していた。

お姫様や王子様の様な服装の者に、魔法使いの様な衣装を着込む者も散見された。


「こ、これは…… 

もしや! 学芸会に迷い込んだ? 

……では無さそうだけどぉ 」

と、が呟く。


二人が落ち着いた? と判断したのか、王様・・らしき人物が声を掛けてきた。

『すまぬが、話をしても宜しいかな? 』

二人へと問いかける。

その声は、怯えるでも威圧するでもなく、ただ穏やかに問うてきた。


「ああっ、 構わないが。 この状況を、

順序立てて説明をして頂けると助かるのだが…… 」

人とは思えぬ姿のが穏やかに返答する。


『うむ。 そう努力はしよう。 

まず、この国へお出で頂き感謝する。 

神託に従い、お二人を迎えさせて頂きたく思うのだが 』

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