第2話「レニ」
「なんだこれおい、なんだこれおい」
あの日、YouTubeを見た俺はすぐマサに電話をしバーレスクに行くことに決めた。
俺は昔からいいと思ったら、すぐ試してみたくなる性分で、そういえば昔、Youtubeで水樹奈々を見て、やばい歌うま!って思ってそくLIVEのチケットを取ろうとしたことがあった。
そんな俺は、ショーが始まる前のポールダンスショーの時点で冒頭のセリフをひたすら言っていた。
「す、すげぇな……、どういう筋力だよ、このポールダンスってマジでやばいやつじゃないか」
目の前で行われてるポールダンスは、下着姿のダンサーが本当に腕だけとか、太ももだけで身体を支え、回転させ、開脚する。
もうエロがどうのとかって問題じゃねぇ、ただただ圧巻だ。
「マサ、思った以上にすごいな……。こりゃ確かに来るべきだわ」
がんがん鳴り響くバックミュージックの中、マサに素直な感想を伝えた。
「ここからだよ、まだショーが始まってもないんだからな」
マサはさすがに何度も来てるらしく、目の前のポールダンスにさしたる感動もないように見える……、これがまだ序の口だというのかマサよ……。
そしていよいよショーがはじまった。
言葉では、そして文章では語ることができない。
そんな素晴らしいショーであった。
あっという間の90分、エロあり、笑いあり、感動あり。
俺はもともとプロレスが好きであったけど、ショービジネスとしてプロレス以上の感動を与えてもらったのかもしれない。
しかし、俺の真の感動はショーにはなかった。
ショーの後に来るチップタイムで真の感動は起こる。バーレスクのショーの終盤ではダンサーにチップをあげるチップタイムが訪れる。チップは1枚100円のリオンという仮想通貨を買い、女の子の胸の谷間などに挟んだりする、まさに男の夢が体現できる時間なのである。
すべてのダンサーがすべての客にあいさつに行き、気に入った女の子にはチップをはさんでいく。気に入った子とは言ったものの正直全員かわいい。基本的には1枚100円のリオンを出会った女の子にすべてはさんでいった。
いくら100円とはいえ、どんどんお札が溶けていく……。
そして10人くらいの女の子の谷間にリオンを差し込んでいったころ、俺は出会った、その女の子に。
「初めまして、レニです」
レニと名乗る女の子は、ぷにっとしたほっぺと、
スタイルも、表現は悪いがなんというか男の好きそうな体型で、実に素敵な感じであった。
「うわっ、めっちゃ可愛いね。すごいタイプっす」
思わず正直な感想をレニちゃんに伝える。そして手持ちのリオンをすべて、レニーの豊かな胸の谷間にはさみこんだ。
「うわぁ、ありがとうございます、レニーすごいうれしぃ、好き」
好き……。
なんという破壊力のある一言だろう。
久しく聞いてないい気がする。
そんな好きなんて言葉を簡単にいうなんて絶対悪い女だ。いやそれはわかってる、わかってるけど、そんなんずるいわ。あからさまな営業トークではあるものの、にやつきが止まらない。
「レニちゃんと写真撮ってもらえよ」
となりでマサがそういうので、二人のツーショット写真を撮ってもらうことにした。そしてそれが今思えばまずかったのだ。
俺は想像もしてなかった、ツーショット写真の際、レニーちゃんは俺の顔にぴったし自分の顔をくっつけてきたのだ。
これはもう頬と頬でキスをしてるといっても過言ではない。
(いやいや、ナナともこんな写真撮ったことないんですけど……)
写真の後、俺のハートはドキドキしっぱなしだった。
こ、恋をしてしまったのかもしれない……。
一回り以上年下のショーダンサーに。
そう、初バーレスクにして俺は年甲斐もなく、すっかりこのレニちゃんの魅力、いや魔力にやられてしまったのである。
帰りの電車の中で俺はマサに感想を話していた、そして
「マサよ、次はいつ来るんだ?」
と聞いた。
あんだけ飲んだにもかかわらず、俺たちは電車内でも酒を飲んでいた。それだけだとマナー悪いやつのようだが、グリーン車を使ってるのさ。
「そうだな、なんだかんだ2ヶ月は先じゃねーかな。さすがに嫁に怒られるわ」
ちなみにマサの嫁は、バーレスクに通ってることを知っている。というより、基本的にマサが行くときは一緒にバーレスクに行くらしい。
2ヶ月かぁ……先だなぁ。
「レニちゃんが気にいったのか?別に独身なんだし、好きに通えばいいじゃないか」
マサは俺の気持ちを見抜いてるかのように、そういってきた。一人で通うのかあ、それってちょっともうやばいやつな気がするわ。
「気にいったのは確かだけど……、ナナに悪いってのもあるし。一人でっていうのはなあ」
いくら何でも、ナナにばれずにバーレスクに通うのは無理だろうし、何より気持ち的に寂しい気がする、というよりはかっこ悪い。
「……おいおい、いい加減にしてくれよ。俺はお前をナナから解放させてやりたくて、ここに連れてきたんだよ。まあしかも、言ったってレニちゃんだってプロのダンサーだし、ダンスを見に行くってことでいいだろ。ま、あれだよ奥さんがジャニーズ追っかけてるんと変わんねよ。そんな重く考えるなって」
そういってマサはググっと缶ビールを飲み干した。
そうかもしれないな、またショーを見に行きたいっていうのは確かだし、そんなにナナのことを気にする必要もないのかもな。少しづつナナにも興味を持たせて、マサみたいに一緒に見に行ってもいいかもしれない。
ま、それはなんか、一瞬でもレニちゃんに恋心を持ってしまった以上、少し心苦しいのだけれども。
そんな感じが俺の初バーレスクだった。
あくまでビジネスライクに俺とレニちゃんの出会いは始まったのである。
家についた。
レニちゃんはツイッターを頻繁にやってるらしく、ツイートに返信すればほぼ確実に返してくれるらしい。俺はさっそくレニちゃんのツイッターに今日の感想を書き込んだ。
『今日、初バーレスクでした。ショーとても楽しくって感動しました。特にレニちゃんがすごくかわいくて素敵なダンスでした。また会いに行きたいと思います』
すぐに返信が来る。
『うれしい。レニ、待ってますね』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます