第3話 こっちの俺
「うわぁぁってなんだよ」
アクリは俺のステータスを俺の指を勝手に使って操作している。
「いやいや。だってこれさ、ホラここ……。っていうか、先にこっちの説明だな。ここ見て」
アクリは俺にしっかり見てみろというように俺のステータスを少しばかり操作してから指差す。
アクリの指先には『LV・HP・MP・STR・ATK・DEX・AGL・MEN・GRD・MPR』というアルファベットが羅列されており、そのアルファベットの横に0と一種類ずつ数字がわり振られている。ちなみにLV・HP・MPは別の枠にあってそちら方にはゲージと数値が書いてある。
「LV・HP・MPは分かるよね……?」
「あぁ、うん。でもそれ以外はなんとなくしか分かんないから説明してもらえるとありがたいかな」
「オッケー。歩きながら説明するね」
「数字の説明が必要だね。0の方がステータスポイントがいくつ割り振られてるかってこと。もう一つの方が今の数値だよ。そして……まず
蹴りながら歩いていた小石がどっかへ行ってしまい別の石をアクリが蹴り始める。
「文字のごとく攻撃したときにどれだけダメージを与えられるかってこと。次は
アクリが理解してるかこっちに首を向ける。
「大丈夫。言ったろ?なんとなくは分かってるって。もう最期まで説明してもいいよ」
「それは流石に怜雄君の頭がパンクしないか心配だなぁ。言っとくけど君、この世界の小学校的なところで最初の1か月くらい使って覚えること5分くらいで覚えようとしてるんだからね」
「いやいや。俺の記憶力舐めないでよ。てか、俺高校生だからね! 小学1年の記憶力と一緒にしないでよ! 」
「この世界の小学校的なのはは10歳から通い始めるんだけどね」
「それでも、俺の方が年上だからっ!!」
若干相手をするのが疲れたのか小さくため息をついている。
「はーいじゃ、さきに進めまーす」
「完全に俺の相手すんの飽きたな、お前」
俺の言葉を完全に無視をしてアクリが解説を始めた。
「
アクリが本当に分かったのか? と言いたげな訝し気な顔で振り向く。
「大丈夫! STRから順に筋力、攻撃力、器用さ、敏捷性、精神力、防御力、魔法防御ね。どうよ?見た?この実力!!」
「あーすごいすごい」
「なんだよ、その『あーすごいすごい』って。絶対後ろに
その時先ほどから登っていた坂を登り終えた。
そこから小さな村、もしくは集落と呼ぶべきであろうところが見えてきた。
その瞬間アクリが走り出した。
俺はそれに仕方なくついて行く。この世界に来てから走るのは初めてなのだか、なんとなく体が軽い気がする。これは俺のAGLが高いのだろうか。
「どうしたんだよ、アクリ」
「あれは僕の故郷なんだ。あそこまで走っていくよ!」
「おいおい、冗談言うなよう! 結構遠いぞ! いくらこの世界ではAGLに管理されてるとは言え、無理なんじゃないか?」
笑顔では走るアクリの横に着いて俺は言った。
「君はもう既に向こうの世界じゃできないことができてるんだよ」
「は? 何言ってんの? それは俺は足が脆弱すぎて走れないと思ってるとか?んな、冗談あるわけないだろ」
「『脆弱』まで自分を落とす必要ある!? ……まったく。気づかないの? 僕らが走ってるスピードに」
アクリが呆れてしまう。この世界に来てから俺は何回アクリを呆れさせただろうか分からない。これから先も呆れさせてしまう気がするが、この世界について何も知らないということに免じて良しということにしよう。と、いうかしてもらおう。
「怜雄くん、今君の周りで流れている景色の速さは向こうの世界で走っているときの比ではないと思うよ」
アクリに言われて確かに俺が今まで走ってた時に受けていた風の感じや、流れている景色の速度が違うことに気が付いた。
そりゃ、ここまで気が付かなかった俺は確かに鈍感だ。本当に馬鹿としか言いようがない。
「気が付かなかった! 俺は───とんでもないスピードで走ってるんだな」
「じゃあ、はい。次。前見て」
俺は今の今までアクリの方ばかり向いていたことをアクリに指摘された。そして、前を見てみると、先ほどまで遠い遠いと思っていた集落が目の前にあった。
近くで見ると集落というには若干大きい。村というべきだろう。
「マジかよ……」
俺はこの世界のすべてがステータスの数値で支配されていることを知らされた上に、一つ大切なことをアクリに聞き忘れていること思い出した。
「なんでさっき俺のステータス見て『うわぁぁ』って言ったの?」
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