第五章 半破空間エッジワース(6)

「な……どういうことだ!?」


 後日、オールトの街に戻った俺は図書館があることをサナに教えてもらい、暇つぶしに行っていた。いちおう、情けないが今はサナから小遣いをもらうようにしている。


 そして、俺はある本に書いてあることにただ、驚愕していた。そのあまり、図書館であるにも関わらず少し声を出してしまい、慌てて口を閉じ、本に釘付けになる。その本はこの世界の神話。説明を見ると、この世界でもっとも広く伝わっている代表的な伝説で今なお、信じているものもいるのだとか。


 だが、そんなことじゃない。そんなことじゃないのだ。




『昔、それは数多の種の人が互いに赴くままに争いあっていたころの話。まだ、たいした言葉もない、文明も技術もない、野蛮な争いだ。

 だが、その醜く残酷な争いに怒りを顕にし下界に降りたった神がいた。それこそが』



「八尾神(やおがみ)……様!?」


 なんで、八尾神……なんて名前が? これは……これは……忘れるはずがない。俺が憎んでいたあれ、俺が嫌う奴の……俺の……苗字だ。珍しい、日本では俺の一族しかないひとつしかない苗字。いや……まさか……たまたま……だよな?



『それはおよそ、六百年前の出来事。そしてここから本当の人の歴史が始まった。

まず八尾神様は人に和を与えた。

 これにより、数多の種族が争わず、互いに協力して文明を築きあげていく土台が出来上がる。


 次に八尾神様は人に言葉を与えた。これにより、世界中のありとあらゆる人がひとつの言語によって意思疎通が行えるようになった。


 最後に八尾神様は人に知識を与えた。これにより、人が技術を持ち文明を築き始げるきっかけとなった。


 だが、八尾神様に与えられたもので人は大きく変わり始めた。人は知識を得たゆえに差別を知り、知識を得たことにより力を得ていった。そして、再び異種族間で戦争が始まる。


 それに八尾神様は怒りの裁きを行った。八尾神様は怒り溢れる存在へと変貌し争いを続けるかぎり人に鉄槌を下していく。それにより人は自らの愚かさを悟り、争いをやめることで本当の平和が訪れた。



 八尾神様は本当の最後に本当の和を人に気付かせた。』

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