第四章 ワイバーン討伐

第四章 ワイバーン討伐(1)

 一週間が経ったころ、俺は泊めてもらっている研究所の空き部屋で右足を固定しているサポーターを外した。貼り薬も外し腫れが完全に引いていることを確認すると数回足首を自分の意思で動かしてみる。問題なく動くし、痛みももうない。無事、足は元どおり治っていた。


 ゆっくり松葉杖なしに両足で立ち上がると服を着替える。服が一着だけじゃ話にならないだろうとサナにまたおごってもらいながらオールトの町で数着の服を購入。その一着を袖に通し、相変わらず俺が着ても何ひとつ違和感がないシャツとズボンに感銘する。


 部屋を出ると研究所内にある食堂へと向かう。すると既にミウナキとサナが席に座っていたので俺もそのテーブルに駆け寄った。


「おはようユウト、足はもう大丈夫なのね?」

「ああ、おかげさまで」

「それはよかった。それじゃあ食事を済ませましょ」


 サナたちと一緒に一度席を立つ。システムはフードコートのようなもので好きな物を注文できる。なかにはこの世界独特の食べ物もたくさんメニューに含まれていたが俺はよく見慣れた朝食セット(パン、スープ、目玉焼き、サラダ、簡単な肉)を今日は頼み、朝食とした。


 ちなみにこの肉がミノタウロスのもので卵はグリフォンの卵だと知ったのは後日のこと。あと、人羊種にとってクソデモナス科のミノタウロスは思いっきり近縁種だが、そもそも人羊種は人間のなかで唯一の完全な植物食動物なので問題ないというのも同時に知った。


 朝食を食べ終わると一旦休憩室へ三人いっしょに足を運ぶ。休憩室に設置された無料のお茶を飲みながらソファに座り込んだ。


「その足も理由としてあったけど、ずっと研究所内でいてもらってごめんね。今日は空いているから、ちょっと街へ出かけようと思うんだけど、どう?」


 ここの一週間、サナは研究で忙しかったらしく、俺は研究所を見て回っていた。


「謝る必要はないさ。研究所の見学だけで十分おもしろかったよ、特に俺にはな。まあ、でも街へ行くんだったら行くのもいいよな」

「だったら、決まりね。ミウちゃんも行くよね」

「はい、じゃあ、同行させていただきます」


 まだ発達しきっていない手でコップをつかみお茶をすするミウナキ。同じように俺たちもお茶をすすり続ける。一息付いたので出かける準備に入ろうかという話になり、席を立ち上がったそのとき、ひとりの男がこの部屋に入ってきた。


 その男は人竜種。一見翼を持っていない人鳥種ともいえる姿だが、恐竜上目、竜盤目に属するトロオドンという羽毛恐竜の近縁種であるらしい。人鳥種は青みがかったグレーが一般的であるに対し、人竜種は緑に近い青の羽毛を持っている。ともに羽毛の数は少なめだが。


 その人竜種は三本の細い指を持つ手のひらをサナのほうに向けた。


「サナ様。私は地方庁のものです。このあたりには生息しないはずの動物が確認されました。目撃情報から割りだすとおそらくワイバーン類。放っておくと危険と判断されたゆえ討伐のために討伐隊を編成することになりました。それでサナ様にはその原因の調査を含め、同行していただきたいのですが、問題ないでしょうか?」


「ワイバーン? なるほど……、今からですか?」

「はい」


 急に来た男の話に特別動じずに対応をするサナ。その後数回の会話がふたりの間でなされるとサナは申し訳なさそうにこちらを向いてくる。


「というわけで……出かけるのはなしになりそう。ごめん……」

「ああ、よくわからんけどいいよ、それぐらい。本当にアテにされているんだな」


 しかし、なんかつまらないな……なによりワイバーン討伐……おもしろそう。


「なあ、サナ。俺をそれに連れてってくれよ。足は治ったし、迷惑は書けないからさ」

「え? ユウトが来るの? 討伐に?」


「やっぱ、ダメか?」


 まあ、そりゃそうか。いちおう、危険な行為だし止められるんだろう。


「いいですよ、別に」


 だが、予想外の返事が地方庁のものからきた。サナが驚いたようにその人竜の人を見るが、おどけたように「ハハッ」と笑う。


「討伐隊の邪魔にならない……サナ様とはぐれないようにと約束していただけるなら問題ないです。サナ様の友人かそれ以上の方とお見受けしますしね。なあに、そこまで危険ではありませんよ、さくっと倒せますので」


 フラグ立ってないか? それ、フラグ立っていないか?


「まあ、ミウちゃんは連れていくことになるし、同じよね」


 ……本当に参加できちゃったよ。

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