第三章 中核都市オールト(6)
クジラが無事、都市オールトに着陸。ついに町に足を下ろす。空港の建物を出るとそこには、本当に完璧な町が広がっていた。
こうやって実際足で立ってみるとその街の発展具合、活気具合がよくわかる。冗談抜きで大都市だ。
人々が歩く場所、歩道が道の端に配備されておりアスファルトが敷かれている。だが、逆に車道ともいえる広く幅を取られた中央線は土。その部分をいくつもの馬車が通り過ぎる。俺のいた世界の自動車ほどの量じゃないが、それでもかなりの交通量。はっきりいって俺のいた世界の歴史ではこんな光景はなかったのでは、と思う。
「ユウト、こっちだよ」
サナが手招きをしながら俺を導いてくれる。空港のすぐ横でまた建物に入り、ガオウがまた受付でチケットを買うとそのチケットを受付に渡しながら、さらに奥へ入っていく。
その場所に待っていたのは鉄のレールだった。右から左に向かって直線的に引かれている。手前は地面より高くなったコンクリートの床……つまりホーム。そう、鉄道だ。
まさか、鉄道まであるとはな……いや待て。電気はないはずだよな……ってっことは蒸気機関車? なんて思い考えていると向こうから鉄道の車両がやってきた。 ただ、その車両を牽引しているのは蒸気機関車とかではなかった。一言にいえば巨大な馬。高さ二メートルは軽く越す……いや、それどころか三メートルいくのではなかろうか……。頭までみれば三メートル超えているのは間違いない。馬にしては限りなく規格外だ。
「こいつなんだよ? 明らかに馬のサイズじゃないだろ」
「鉄道で車両を牽引するのはほとんどダインホース。馬とは別種。奇蹄目、ウマ亜目、ウマ科ではあるけど、ダインホースはスレイプニル属に属する巨大馬。パワーが桁外れなのよ」
その説明どおり、まるでその桁外れなパワーを見せつけるように三つの車両を牽引し、スピードを落としながらホームに入ってくる。動力が動物だが文字どおり列車になっている。
やがて完全に停止すると駅員たちが動き始め素早く車両のドアを開けていく。その中に俺たち含めたたくさんの客がどんどん乗車していく。中は通勤電車みたいな形ではなく、特急のように椅子がびっしり並んでいる。
おそらく、大量の人を詰め込んだりしたら馬が牽引できなくなるから。それなりに乗車数は絞るようになっているが、それでも一度にたくさんの人を運べる交通手段であることに変わりはない。
時間が経過するとともに再び車両のドアが駅員により閉められる。そして、そのダインホースとやらが動きだしたのだろう、ゆっくりと窓から見える景色が動いていく。最初は随分重そうにゆっくり走っているなと思ったが、すぐにスピードが乗ってきた。忽ちスピードは時速二十キロぐらい超えてきた。馬車として考えれば規格外な速さのはずだ。
まだ精密な線路を引くだけの技術はないのだろうか、鉄道特有といえるガタンゴトンと車内に響く振動がかなり大きい。だが、逆にその揺れがいい雰囲気を出していた。ダインホースの地面をかける音と合わさりながら景色がどんどん移り変わっていく。
いくつかの駅に止まりながら椅子に座り時を待つ。するとある駅で停止するころサナが立ち上がる。降りるのだとわかり、サナに続き俺も席を立った。
「ガオウさん、じゃあ」
席を立つサナが手を振るとガオウは座ったまま軽く手を挙げるまま座り続ける。
「ガオウさんはいかないの?」
「猟師関係の仕事があるから別行動よ。さあ、行こう」
そういうとひとり降りていくサナに続き列車を降りると今度は改札みたいな所を通り抜けた。
その先にあったのはかなり大きな建物だった。コンクリート製の建物でガラス窓の面積もかなりある。だが、それよりも周りに広がるただ広い庭に思わず息を飲む。綺麗に整えられた芝生の地面が広がり大きな建物以外にもいくつか小さな建物も顕在する。
「ここはなんの場所なんだ?」
「研究施設」
「け、研究?」
一瞬驚いたがサナが学者であったことを思いだし、落ち着きを取り戻していく。
「でも、俺みたいなのが入っていいのか?」
「あたしの研究室に入れることはできないけど、ゲストが入れる場所やあたしが寝泊りする所ぐらいなら入ることできるから」
そういって建物に入っていくサナ。入口で何やら手続きをしているらしく、しばらくすると『ゲスト』の文字が入った手のひらサイズのプレートが出される。後ろがピンになっており俺が着ている服の胸元にサナがつけてくれると「よし」と言いさらに奥へと連れていかれた。
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