第二章 悠斗の知らない動物たち(2)

 部屋に戻り俺は椅子に座りながら向かい側に座るサナとクマ人間、ガオウを見た。机に立てかけた松葉杖がズレ落ち、音を立てながら床に転がるが、そんな事はどうでもよかった。


「あれ……なに?」


 率直な疑問をぶつけるとサナは大きくため息をつきながら紙とペンを取りだし、漢字をかきながら説明しだした。


「なんも覚えていないのね。みんな人よ。人間はこの世界にあたしの人猿種、ガオウさんの人狼種の他に、人猫(ニンビョウ)種、人蝙(ニンヘン)種、人鳥(ニンチョウ)種、人竜(ジンリュウ)種、人羊(ニンヨウ)種、人魚(ニンギョ)種がいるでしょ」


 いや、でしょって言われても、人間はホモ属サピエンス種以外知りませんが。


 ご丁寧にひとつずつ漢字で書いて説明してくれるので、なんとなくどういう奴なのかはわかるが、根本がそもそもわからない。


「じゃ、ここどこ?」

「ここ? ここはオールト地方、グレハ村ね」


 だから、どこだよ、知らねえよ! 聞いたこともねえ。


「じゃあ、どの大陸になる? それとも島国か?」

「ツーノ大陸」


 ……心の底から聞いたことねえ。


「あれか! もしかして異世界か! 異世界だろ!」

「イセカイ!?」


「ああっと、ここ地球じゃないだろ!」

「地球だよ」

「あら?」


 核心に迫りかけてガッツリくじかれた。でも、異世界だろ。よく小説やら映画やらであるパターンだ。突然、知らない世界に渡るといかいうやつ、タンスの中が異世界と繋がっていた、なんてやつは俺でも知っている。理由はわからないが世界に飛ばされたのだ、きっと。


「地球っていってもあれだろ、俺の知っている地球とは違うんだろ! わかってるわかってる。さすがにわかった。パニック状態にはかわりないが、納得だよ」


「う~んとね、地球は太陽系第三惑星ね。ちょっと待って」

「んん!?」


 サナが急に席を立つと本棚から一冊の本を持ってくる。ペラペラめくり始めるとある図を見せてきた。その図は見たことがあった。というか、この前、中学の授業ではっきり習った。


「これが太陽ね。そして惑星が内から水金地火木土天海っていってね。三番目がこの地球。て、これは常識でしょ!? あなたの年じゃさすがに習っているわよね!? それも忘れ……」

「知ってます。凄い知っています。地球ですね、ハイ地球です」


「あ、そう。じゃあ、これが地球ね、これも覚えている、ここがツーノ大陸、オールト地方」


 次に出してきたのは地球儀。球体の模型に地形や海が書かれており、ある場所をサナが指差してくれる。そこがここの場所らしいが。


「ん? なにこの地形……、サナさん、世界地図あります?」

「世界地図ね、ちょっと待ってね」


 サナが別の本を取りだし、その世界地図のページを出してくれる。その地図を見て俺は完全にこんがらがった。大陸が見たことない形になっていたのだ。ギリギリ、アジア大陸やら北アメリカ大陸やらの原型っぽいものがなくもないが、ほとんど別物。俺の知っている地球とはまるで違う地球だった。


「やっぱり、……俺は……異世界に飛ばされたのか?」

「……ユウト、やっぱり、……頭打ったんじゃないの?」

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